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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 52

シャリーヤの肩に手を置いてジェムは言った。
酷く自分本位で傲慢なそれが彼なりの労いの言葉だった。
シャリーヤは言う。
「ジェム様…このシャリーヤ、自らの親をこの手で殺め、もう後戻りは出来ません。こうなったからには今後は汚れ役に徹し、影となってあなた様が遥かな高みに登るお手伝いをさせてくださいませ」
それに対してジェムは微笑むように目を細めて言った。
「そうだ。それで良い、シャリーヤ。その代わり君には常に僕の最も側に居る権利を与えよう。この僕の一番近くで、常に一番初めに勝利と栄光を味あわせてあげよう。なぜなら君は僕の影なんだからね…」
何という傲慢な言葉だろうか…しかし、この少年にはそれだけの言葉を吐いても思わず許してしまえるような故知れぬ凄みが備わっていた。
それは彼自身が自分はそれだけの人物だと信じて疑っていないためだったのかも知れない…。

その事が彼自身にとって、また彼の周囲の人間達、さらには国全体にどのような影響を与えるのか…それは後々語るとして、ここで物語の視点を我らがセイルに戻そう。

あの日…すなわちセイルが初出仕し、そこで嫉妬と憎悪の塊のような先輩アブ・キルと出会い、謎の穴掘り作業を強要された日から、既に一週間が経とうとしていた。
「はぁ…」
この日もセイルは衛士府の中庭で穴を掘る作業に従事していた。
あれから毎日、始業から終業までずっとだ。
そんなに掘っていたら中庭が穴だらけになってしまうのではないかとお思いだろう。
だがその心配は無かった。
何故なら一つの穴を掘り終えたら、次はその穴を埋める作業に移るからだ。
初日、終業間近になってようやくアブ・キルの命令通り穴を掘り終えたセイルに、アブ・キルは平然と言い放った。
「埋めろ」
「…………は?」
セイルは耳を疑った。
何かに必要だと思ったからこそ必死の思いで穴を掘ったのだ。
だがせっかく掘ったその穴を今度は埋めろと言う…。
これは一体どういう事か?
セイルは訳が解らなかった。
手を止めたセイルにカチンときたアブ・キルは『埋めろ!』と怒鳴りだす。
「埋めろ!手を休めるんじゃない!早くしろ!」
「わっわかりました。はっはぁ〜」
ため息をつきながら、セイルは掘った穴を埋める作業に入った。

そんな、二人のやり取りを魔法で姿を消したアルトリアはパンを齧りながら、少し離れた所で見物していた。
直ぐにでもセイルを助けて、アブ・キルを成敗したかったのだが、セイルに止められ仕方なく見物をしていたのであるが、不器用というか馬鹿正直に自分を追い詰めるセイルに呆れていた。
(モグモグ、そんな屑の言う事を無視すれば良いのに、はあ〜セイル様の不器用さには困った物だな)

それから、間も無く一週間が経つ…
 ザクッ ザクッ
「はぁ…はぁ…」
…今日もセイルは穴を掘っていた。
アブ・キルは穴の近くに寝そべり、ベラベラと喋っている。
「…それでよ、結局その女とは最初に出会った夜にベッドインしたって訳よ。だがアソコの締まり具合はその前の日にヤった女の方が良かったな。尻の軽い女はやっぱりアソコもユルい。最高なのはやっぱ処女だね。痛いぐらいギュウギュウ締め付けて来やがんの。ああ、ちなみに俺が今までに喰った処女は百人ちょっとだったかな。みんな今頃どうしてるかな〜。まあ俺は基本的にヤリ捨てだけどさ…ほら、初めての相手は記憶に残るって言うじゃん?良い相手見付けて幸せになってくれてりゃ良いけど…もし俺の事忘れられずに引きずっちゃってる女の子とかいたらどうするよ?俺は一応今の時点で体の関係持ってる女っていうのが、もう冗談抜きで三桁ぐらい居る訳ね。もうマジでいっぱいいっぱいな訳ですよ。それに加えてその子達の面倒まで見るっつったら…マジ腎虚の危機っしょ。ま、これからも処女狩りは止めませんけどね〜♪…ってオイ!俺の話聞いてんのかよ!?あぁん!?」
「…はぁ…はぁ…聞いてます…」
機関銃のように間髪入れずにまくし立てていたかと思いきや急にキレ出すアブ・キルに、セイルは蚊の鳴くような声で答える。
この一週間、彼はずっとアブ・キル監視の下、穴掘りと穴埋めに従事させられていた。
最初、セイルは掘った穴を埋めなければならない理由が解らず、気になって仕方が無かった。
いくら理由を尋ねてもアブ・キルは教えてくれなかった。
セイルは納得いかなかった。
だが、そのうち気にならなくなった。
というか、考えないようになった。
毎日々々掘って埋めて掘って埋めてを延々と繰り返す単純作業は、彼から物を考えるという思考それ自体を奪っていった。
実はそれこそがアブ・キルの狙いだったのだが、もはやセイルにはそんな事を考える思考力すら残っていない。
仮に思考力が残っていてアブ・キルの企みに気付いたとしても、それに対して抵抗する気力が残っていない。
それすら奪われた。
(さすがにヤバいかなぁ…)
アルトリアはセイルの様子を見ていて思う。
手を出さないとの約束だったが、セイルが本当に危なくなったら、アルトリアは主人との約束を破ってでも助けに入るつもりだった。

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