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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 47

彼らはワムの息子達、双子の兄弟で名をバムとブムと言う。
バムが兄でブムが弟だ。
二人は父ワムのクローンなのではないかと言いたくなる程そっくりで、丸々と肥え太っている(三人並ぶと面白い)。
だがジェムはこの従兄弟の事があまり好きではなかった。
「ふひひ…ジェム〜、残念だったんだな〜♪恨むなら早死にした君のお父上を恨むんだな〜」
「でも僕らはヘム伯父さんに感謝しなきゃなんだな〜♪だってヘム伯父さんがお祖父様より先に亡くなってくれたお陰で僕らは…」
「「未来の宰・相♪」」
ジェムは殺意を覚えた…が堪えた。
だいたい双子でどうやって宰相を務める気なのだろうか…いや、おそらくノリで言っているだけなので、その時の事は考えていないに違い無い。
あるいはこの寸分違わぬ二つの肉の塊も将来、宰相の地位を巡って争うのだろうか?
その光景はちょっと見てみたい気もするが、そうもいかない。
叔父ワムの宰相在任中に祖父セムが亡くなれば、宰相(ワジール)の地位どころかヤヴズ家の当主の座までワム一家に移ってしまう可能性がある。
この醜く肥え太った双子の従兄達への殺意を必死に抑えながら、ジェムは静かに中庭を去った。
(何とかお祖父様を説得して考えを改めてもらわねば…。こんな醜悪な豚共にヤヴズ家の家督を奪われたら末代までの恥だからな!)
「およよ!ブム!ジェムの奴、どっか行ったぞ?」
「兄さん。あいつも自分の立場を解ったんだよ!ぶひひひ、あいつは御祖父様の寵愛を傘に今まで、僕等を馬鹿にしてたらかね!」
「でも、これからはそれも無いからな!ぶひひひひ〜」
従弟ジェムがいなくなったのに気づいたバムとブムはジェムが尻尾巻いて逃げたと解釈して高笑いする。
しかし、それは大きな間違いなのと同時に、バムとブムと彼等の父親ワムは身をもってジェムの恐ろしさを知る事になるのである。

叔父ワムがバム&ブム兄弟を伴って帰った直後、ジェムはさっそく祖父セムを説き伏せにかかった。
「お祖父様、次期宰相の人選、是非ともご再考いただきたく思います」
「何じゃ?ジェム、まさかお前までもが“臣下は王が選ぶもの”などと言うのではあるまいな?」
「そのような事を言いたいのではありません。しかしワム叔父上を宰相にする事には反対と申し上げたい。正直、甥である私の目から見ても叔父上は宰相の器とは思えません…」
「ならば我がヤヴズ一族の中で他に宰相に適任の者がいると言うのか?」
「…おります」
「誰じゃね?まさか自分がそうだとでも言うのではあるまいな?」
「傲慢を承知で…その通りです」
やはりか…とセムは溜め息混じりに言った。
「ジェム、それは無理という物じゃ。お前が亡き我が息子ヘムに似て、幼い頃より利発で聡明な子である事はワシも知っておる。じゃが如何せん歳が若すぎる。いくら頭のキレる者であるとはいえ10代の若造が宰相で皆が従うと思うか?」
「従わせてみせます!宰相に年齢の制限などありませんでしょう?それにヤヴズ家の嫡子はこの私です。叔父上ではない。一族の序列からいっても、この私こそ王佐(ワジール)の称号を継ぐに相応しいと思います。これは傲慢でしょうか?」
「落ち着きなさい、ジェムよ…」
セムはジェムの肩に手を置いて諭すように言った。
「ワムはお前が宰相に相応しい歳となるまでの、いわば“繋ぎ”じゃよ。ワシだって叶う物ならすぐにでもお前を宰相にしてやりたいさ。だいたいワムはお前のように頭が良くない。ワムが宰相となった時、敵対勢力に足元を救われる心配の無いよう、ワシは務めの最後に主だった政敵共を少々強引な手を使ってまで一掃せねばならなかった。お前ならば安心して任せられたものを…。まあ、ワムには“ジェムが宰相の務めに値する年齢となった暁には即行その任をジェムに譲り渡せ”と申し伝えてある。もちろん遺言書にも明記した。じゃからジェム、今は安心して将来のために己を磨いておけ」
「お祖父様…あなたは私が宰相に相応しい年齢となった時、叔父上があなたの言葉に従って宰相職を私に譲渡するとお思いですか?」
「もちろん!ワシは身内“だけ”は信用しておるんじゃからな」
「そうですか…解りました。私も出過ぎた事を申しました。お許しください」
「良いのじゃよ。一族の者が共に力を合わせてヤヴズ家がますます繁栄していく事がワシの望みなのじゃからのう」
孫が自分の説得に応じてくれたと思ったセムはほくほく顔。
だがジェムは内心では思っていた。
(ハァ…お祖父様も耄碌(もうろく)した物だ。ご自分の死後、叔父上が約束を守る保証など何処にも無いというのに…。確かに今は承諾したかも知れない。だが人間という物は時が経つにつれ必ず欲が出て来る。それは身内とて例外ではないのに…権謀術数を用いて政敵を次々と葬り、一時代を築いた大宰相のお考えとも思えんな…まあ良い。これで決心が付いた)
ちなみにセム、ジェム、ワムの誰一人として、宰相職をヤヴズ家で独占する事に対しては特に疑問も抱いてはいなかった。

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