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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 41

「ア…アルトリア…怒ってないの?」
「…正直、女としては面白くありませんね…」
「すいませんでした!!」
「…しかし常日頃から申し上げているように私はあなた様の剣(つるぎ)…そしてあなた様は私の主(あるじ)であらせられます。主が剣に気兼ねをする道理はありません。それに…おかしいかも知れませんが、私はセイル様がサーラ殿を抱かれた事を聞いて、少し安心しているのですよ…」
「あ…安心って、どういう事だい!?」
セイルは訳が解らないといった顔で訊き返した。アルトリアは答える。
「もしもセイル様がサーラ殿の求めに応じなかったら…それは即ちサーラ殿の想いを拒絶するという事…そんな無慈悲な選択はあなた様には似合いません。情欲に流されるも結構、それでこそ私の知っているヘタレのセイル様です」
「ヘタレなんすか…」
「とはいえ…」
「…?」
「…それは“剣”としての私の見解。先程も申しましたが“女”としての私は今回の件について非常に面白くないと感じています」
「やっぱ怒ってんじゃん!ホントごめん!頼むから許してえぇ!」
「いいえ、許しませんよ…」
…と言うが早いかアルトリアはセイルの唇を奪った。
「んん…っ!」
そしてそのままセイルの、男にしては華奢な身体を抱き締めるようにしてベッドの上に押し倒した。
「わぁっ!?…ア…アルトリアぁ…」
セイルの上に覆い被さったアルトリアは怪しく…もとい妖しく微笑みながら言う。
「ウフフフ…セイル様、今夜はあの方の事を忘れるぐらい激しくしてさし上げますから、お覚悟ください♪」
「……は…はいぃ…」
セイルは誤ってライオンに見つかってしまった子ウサギのような目をしてカタカタと小刻みに震えながら答えた。
その晩、セイルはアルトリアによる“かつて無いほど情熱的かつ濃厚な奉仕”によって向こう三日間ほどアレが勃たなくなったという…。


それから数週間後…セイルの初出仕の日がやって来た。
「…では父様、母様、行って来ます!」
王都衛士の制服に身を包み、腰からルーナの聖剣を下げたセイルは玄関にて両親に挨拶する。
「うむ、このクルアーン・オルハンの息子として恥ずかしく無い働きをしろよ」
「グスン…立派よ、セイルちゃん……だけどもし途中で辛くなったら仕事なんて放り出して帰って来ても良いんだからね?」
「言い訳無いだろ!!」
「…はい」
オルハンに怒鳴られてシュンとしてしまうヤスミーン。
「あはは…」
セイルは苦笑いするしか無かった。
ちなみにウマルは既に帰省している。

「では改めて…行って参ります!」
セイルは元気良く挨拶して家を出た。

朝日がまぶしい。
庭の木々の葉には朝露が光り輝いている。
セイルは朝の清々しい空気を胸いっぱいに吸い込んで歩き出した。
心なしか足取りも軽やかだ。
当然だ。
今日から彼にとって新しい日々が始まるのだから。

セイルの勤め先は王都イルシャ・マディナの防衛と治安維持を担う“衛士隊”である。
もっとも、この平和な時代に王都を攻める外敵など居るはずも無く、したがって彼らの主任務は専ら王都市内の警邏(見回り)と事件が起きた際の検問で、まあ現代で言う警察のような組織だ。
ただし王宮の警備だけは国王直属の部隊で衛士隊よりグレードの高い“近衛隊”が行う。
セイルの祖父ウマルが所属していた“王室親衛隊”はこちらの管轄である。

「報告します!本日付けで王都衛士隊第3中隊に配属になりました、クルアーン・セイルです!着任の許可をお願いいたします!」
衛士府(衛士隊の本部)の自分の配属先に着いたセイルはさっそく直属の上官である中隊長に挨拶する。
「んぁ?…あぁ、クルアーン・セイル君ね。よろしい、着任を許可する…」
中隊長はやる気なく返事した。
「ん〜…まぁ、最初は分からない事だらけだと思うけど、おいおい覚えていってくれれば良いから…お〜い!アブ・シルく〜ん、アブ・キルく〜ん」
「はい、中隊長」
「何すかぁ?」
中隊長に呼ばれて来たのは二人の先輩衛士だった。
アブ・シルと呼ばれたのは特に何の変哲も無い真面目そうな男…一方アブ・キルと呼ばれた男は衛士の制服を着崩し、受け答えもだらしのない不真面目そうな男だった。
中隊長は二人に言った。
「悪いけど君ら、新人くん達が仕事に慣れるまで面倒見てやってよ。出来るよね?」
「はい、そういう事でしたら」
「へ〜い、分かりやしたぁ…おい、お前!名前は?」
突然アブ・キルに名を訊かれたセイルは慌てて答える。
「は…はい!クルアーン・セイルと申します!」
「クルアーン?クルアーンってもしかして、あのクルアーン・オルハンの親戚か?」
「あ…一応、息子です…」
「息子ぉ…!?」
アブ・キルは顔をしかめて、チッ…と小さく舌打ちした。
あ、これはヤバいな…とセイルは思う。
自分に対して向けられた敵意や悪意には割と敏感なセイルであった。
アブ・キルはセイルを値踏みするような目付きで頭の上から足の先まで舐めるように見回して嫌味ったらしく言う。
「ふぅ〜ん…君がクルアーン家の御曹子なんだぁ…」
そして彼は何か思い付いたように同僚であるアブ・シルに言った。

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