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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 40

「……でも友達とはいえ男女の間柄…友情がやがて愛情へと…あ…ああ…あわわ…あわわわわわ…!」
「か…母様!落ち着いてください!」
わなわなと震えだすヤスミーンを必死になだめるセイル。ウマルはカッと目を見開いて言った。
「安心しなさい!アルトリアさんは確かに女性じゃが……彼女は女性しか愛せない人なのじゃ!」
「へ?…そ…そうなんですか…?」
それを聞いたヤスミーンは正気に戻った。
(ええぇぇぇ〜〜っ!!!?お…お爺様!何て事を…!?)
(いや、こうでも言うしか無いじゃろうが!)
そんなセイルとウマルのやり取りを余所にヤスミーンは言う。
「そう…そうだったのね……その人、身寄りが無いの?確かに可哀想な人ね…そうだわ♪そのアルトリアさん、お勤め先はセイルちゃんと同じ王都なのかしら?」
「え?えと…どうだったかなぁ…そうなんじゃないかなぁ…」
「もし良かったら家に居候させてあげるというのはどうかしら?家には空き部屋がいっぱいあるし…」
「えぇ!?ほ…本当ですか!?」
「もちろんよ。セイルちゃんのお友達ですもの♪あの人(オルハン)には私から話を付けておくわ」
「あ…ありがとうございます!きっと彼女も喜ぶと思います!」
セイルは嬉々としてヤスミーンに礼を言う。
聖剣を持っている限り、常に一緒に居られるが、家の中でもコソコソと隠れる事無く堂々とアルトリアと会えるというのは、やはり嬉しかった。
(良かったのう!セイル)
ウマルはセイルにウィンクする。
(ありがとうございます!お爺様)
結果オーライとは正にこの事である。

その後、食事を終えた自分の部屋に戻ったセイルはベッドに倒れるように身を委ねた。
「ふう〜疲れた…やっぱり、家は嫌だよ。でも、王国に仕官した以上は我侭いえないんだよな」
「セイル様、お疲れ様でした」
仕官が叶い実家で暮らす事になったセイルは陰鬱な気分でいっぱいであったが、そこへ、アルトリアが現れてセイルを笑顔で労ってくれた。
自分を優しく労わってくれるアルトリアにセイルは感謝する。
仮面家族での生活は嫌であるが、愛しいアルトリアが一緒ならば救いがあったからである。
「食事の時の様子を見てた?」
「はい、姿を消して…。セイル様も色々と苦労なさっておいでのようですね」
「ハハハ…恥ずかしながら、あれが僕の家族だよ」
「なるほど、病弱で息子べったりの母親に家庭を顧みない仕事人間の父親ですか。今どき掃いて捨てる程ある、絵に書いたような典型的な欠陥家庭ですね」
「はっきり言ってくれるねぇ、人ん家の事を…ていうかアルトリア、今の社会情勢には疎かったはずじゃあ…?」
「セイル様が学校で勉学に励んでおられた間、私もこの時代について色々勉強していたのです」
「そうだったんだ」
「というか私はレズですか…」
「仕方ないじゃないか。でもそのお陰でアルトリアも僕の家族や使用人達にコソコソせずに暮らせる事になりそうだよ」
「ウマル殿に感謝せねば…正直、身寄りの無い私の事を気遣ってくれた時には不覚にもジーンと来てしまいましたよ」
「お爺様は剣の腕が立つだけじゃない、とっても優しい人なんだ。父様の前では口が裂けても言えないけど、僕はお爺様のような人になりたいんだ…」
「セイル様ならきっとなれますよ。お人良しな所とか、良く似ておられますから」
「あまり誉められてる気がしないよ…」
そう言って苦笑するセイルにアルトリアは不意に声のトーンを変えて言った。
「…ところでセイル様。昼間、私に“謝らねばならぬ事がある”と仰いましたが…あれは?」
「そ…そうだった!すっかり忘れてた…」
「ずっと気になっていたのですが、どうにも心当たりがありません」
「うん…実はね……」

セイルはアルトリアに、サーラとの一件を話した。

「…なるほど、そうだったのですか」
「ごめん!君がという相手が居ながら…僕は…サーラさんの想いを無碍(むげ)にする事が出来なくて……いや違う!僕は情欲に流されたんだ!自分を抑える事が出来なかったんだ!赦してくれ!アルトリア!」
セイルはアルトリアの前の床に両手を付いて詫びた。
「セイル様、頭をお上げください…」
アルトリアは静かにそう言うと、セイルの手を取って彼を立たせた。

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