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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 5

「い…いや、当たり前だろう!?庶民ならともかく、婚礼まで貞操を守るのは騎士として当然の事だよ!…てゆうか、それ以前に女の子が男の子に対して“童貞ですか?”なんて訊くってゆうのがそもそもとんでもなくはしたない事であって…!」
僕は必死に説明した。半分は恥ずかしさをごまかすためだったんだけど…。
「何と!そうでしたか…。いや、500年前とは人々の価値観もだいぶ変わったようですね…。大変失礼いたしました。どうかご無礼をお許しください、セイル様…」
アルトリアはペコリと頭を下げた。
「いやぁ、気にしないで…。500年も眠ってたんだもん。君が今の事情を知らないのも当然だよ。まぁ、焦らずゆっくり覚えていけば良いさ…ハハハ」
「…はあ、ちなみに私も処女なのですが、男女の交わりに関しては多少の知識を持ち合わせておりまして、もしセイル様がお望みならば拙いながら夜のお相手も勤めさせていただく所存でおりましたが、そういう事なら仕方ありませんね…」
「えぇ!?い…今何と…!?」
僕、もしかして今すっごいチャンスを棒に振っちゃった…?

「なにはともあれ…それではセイル様、失礼いたします…」
アルトリアは布団をめくってベッドの中に入り込んで来た。
「あぁ!ちょっと待って!」
「いかがなさいました?」
「せめてその鎧、脱いでくれない…?」
「しかし、もし深夜に敵に襲われたりしたら…」
「あ、大丈夫。家、襲って来る敵とか居ないから…」
「…そうですか…それならば…」
そう言うとアルトリアはパチン、パチンと鎧の留め金を外した。
「…ゴクン」
僕は思わず口内に溢れる生唾を喉を鳴らして飲み込んだ。鎧を脱いだ事によってアルトリアの美しいボディラインが露わになったからだ。女の子に免疫の無い騎士見習いの学生には最高…もとい目の毒だ。
「ではセイル様、失礼いたします…」
「は…はい!失礼いたされます!」
彼女が布団に入って来た。僕の心臓は口を開けば飛び出してしまいそうな程にバックンバックン高鳴っている。
僕は慌てて彼女に背を向けた。一人用のベッドに無理矢理二人で寝ているので嫌でも体がくっつき合う。
「あ…!」
思わず声を上げてしまった。背中に何やらやわらかい物が当たったからだ。
てっきり背中合わせに寝るのだと思っていたら、アルトリアは僕の背中に抱きつくような姿勢で寝ている。これは正直たまらない…。
「申し訳ありませんセイル様…ベッドが狭いもので…」
そう言いながら胸のみならず全身を押し付けてくるアルトリア。こやつ…よもや誘っているのではあるまいな…。
(あぁ…でも女の子の体ってやわらかいなぁ…しかも何か良い香りがする…)
その夜僕はアルトリアの暖かな体温と麗しい香りのせいで結局一睡も出来なかった。
「むにゃ・・・セイル様ぁ・・・」
寝言でそう言った彼女の横顔は、窓から差し込んでくる月明かりに照らされ、神々しい程に美しかった。


翌日。
「アルトリア殿この馬鹿孫の事よろしくお頼みします」
お爺さまは、アルトリアの手を取ると、深々と頭を下げる。
「ハイ!ご安心下さいお爺様!」
アルトリアは当然のようにお爺さまのその言葉に快諾する。
寝不足の目を擦りながら、馬車に荷物を運び込んでいた僕は、そんな二人の会話に、段々と逃げ道を塞がれていっているのを感じた。
もっとも、最大の問題点は、僕がその事をさして不快に思っていない事だろう。
(まあ成る様に成るさ・・・ふぁ〜それにしても朝日が目に沁みるな・・・)
取り敢えず今の僕にとって、如何にして今夜アルトリアと寝室を別にするかが最大の課題だ。
「では、次に会う時までお体にお気をつけて下さいませ。お爺様」
「ふぉふぉふぉそうですな!是非ひ孫の顔を見るまで元気で居なくては」
僕は祖父の最後の冗談を聞かなかった事にして、さっさと王都行の馬車に乗り込んだ。
こうして僕の人生を一変させる切っ掛けに成った学生時代の最後の帰郷が終わったのだった。

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