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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 334

「やかましいぃ!!!ワシゃあヤヴズ家が嫌いなんじゃい!!あの忌々しいヤヴズ・ジェムを筆頭に、ヤヴズ・レム、ヤヴズ・オム(既に死んだ事を知らない)、ヤヴズ・ザム…それにイルシャ・ジャミーラ、イルシャ・ファード、今に見ておれ!!ヤヴズと名の付く者、それにヤヴズに連なる者共を残さず血祭りに上げてやる!!」
「それですよ!!あなたは昔からそうだった!いつも重要な決定を感情に任せて決めてしまう!あなたは一族を率いる当主としての自覚があるのですか!?あなたのお陰で私も座して事の成り行きを見守っている訳にはいかなくなりましたよ!私は息子ドルフ共々ヤヴズ・ジェム側で参戦します!!」
「な…なにぃっ!!?ワシら本家と敵対する気か!?そんなにワシが嫌いかぁ!!」
「だから何であなたはそう意識が低いのですか!?好き嫌いの問題ではありませんよ!ヤヴズ一族全員がサーラ王女に付いたら、サーラ王女が敗れた時に一族が根絶やしになってしまうではありませんか!それを避けるため、我らのように敵方に付く者達も必要なのですよ!」
「へぇ〜!マシャラフ、お前なかなか考えてるではないかぁ!」
「感心しないでください!!」
「まあまあ、そう怒るな。あんまり興奮すると血圧が上がるぞ?」
「一体誰のせいこうなったと思っているんです!?」
「まあ落ち着け、マシャラフ。お前が一族の事を考えている事は良く理解した。しかし兄弟同士が敵味方に別れて戦うとは…悲しき運命(さだめ)よのぉ…」
「兄上……」
その運命を招いたのは一体誰のせいだ…とマシャラフは頭を抱える。

実はイシュマエル家は戦乱期の度に、この手法で生き延びて来た。
最初はイルシャ・ルーナが前王朝ジャーヒリーヤ王国に反旗を翻し、ついにはイルシャ王国を建国した際…。
二度目は建国から約200年を経て訪れた“イルシャ大乱”の際…。
(※これは王家の権威が衰退し、国内が乱れ、混乱の中で各地に群雄が出現した事による。
結局、約100年間に渡る戦乱の末、最終的にかつての王家を担ぎ上げた貴族連合軍によって再びイルシャ王国は統一された。
ちなみに建国からこの内乱期までを“前イルシャ時代”、内乱終結から現在までを“後イルシャ時代”という。)

…兄に最後の別れを告げて通信を切ったマシャラフは、今度はナハルシャット州に繋ぎ、息子ドルフを呼び出した。
「これは父上…お久しぶりです。お元気そうで何よりでございます」
「そう見えるか?実際は元気とは言い難い心境なのだがな…」
マシャラフはジェム側に立って参戦する旨をドルフに伝えた。
「何と…!そうですか…では我々は本家と戦うのですね?」
「そうだ。全てはイシュマエルの名を潰えさせぬためだ」
マシャラフは言う。
「ドルフ、私はこれより兄上の本拠…即ちイシュマエル本家の領地であるハクルに兵を進める。お前は新王都ジャディード=マディーナへ向かい、ジェムの配下に加われ」
「父上…かしこまりました!」
ドルフは内心では再びジェムの旗の下で戦うのは面白くなかった。
だが魔信によって投影された映像越しの父の表情からは決意の色が伺われた。
これは父の意思…即ち家の意思だ。
彼は既に個人の感情で動く人間ではなかった。

彼は侍従兼副官のアフサンを呼んで言った。
「アフサン!戦争だ!ただちに出陣の準備にかかれ!」
「!!……ははぁっ!!若様ぁ!」
アフサンの背を見ながらドルフは思う。
(…そう言えばジャディード=マディーナにはあいつがいるはずだったな…クルアーン・セイル…)
ドルフの脳裏にふと懐かしい顔が思い浮かぶ。
思えば騎士学校時代には酷い事をした…。
そう言えばその後一度王宮で会った時に約束をしたな…“何を置いても味方になる”と…。
彼はセイルが既にジェムの元にいない事を知らない…。


‐旧王都イルシャ=マディーナ‐
その頃、セイルはと言うと…
「シャフリヤール殿下、シャーザマーン殿下、お初にお目にかかります。クルアーン・セイルと申します」
「フン…」
「おぉ…話には聞いていたよ。君がシャハーン妃の息子だね。なるほど、確かに顔立ちがシャハーン殿に似ている…」
セイルは第二王子シャフリヤールと第五王子シャーザマーンの元に挨拶に来ていた。
二人は同母兄弟だ。
引き合わせたのは第七王女アーシアである。
理由は…生き別れの兄弟に感動のご対面をさせてやりたかった…だけではない、当然。
セイルを“反サーラ陣営”に取り込むため、身内同士の結び付きを強めておこうという腹である。
彼女は例によって少し緊張気味のセイルの肩に手を置いて言った。
「セイルよ、“殿下”などと他人行儀な事を申すな。そなたの兄上達なのだぞ?遠慮せず兄上とお呼びするが良い。兄上達もよろしいですよね」
「もちろんだとも。さぁ、こちらへ来てもっと顔を良く見せておくれ…」
「ハッ…本当に本物かのう〜?怪しいモンぞよ〜…」
素直にセイルとの邂逅を喜ぶシャーザマーンに対し、シャフリヤールはかなりセイルを怪しんでいた。

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