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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 332

レムは言った。
「つ…つまり!肉体なんて所詮は物理的な殻にすぎない!重要なのは精神なんだ!ここはマラクン殿に任せようじゃないか!…良く考えてみろ!このままではジェム様はいずれ…!」
「くっ…!」
シャリーヤは何も言えなくなる。
「…解ってくれるな?」
「…うぅ…」
何も言わない…否、言えないシャリーヤにレムは見切りを付け、マラクンに向き直って告げた。
「…そういう訳だ…やってくれ!マラクン殿!」
「…承知した…」
マラクンは静かに肯くと、ジェムに歩み寄った。
「ううぅぅ〜っ!!!な…何だ貴様はぁ!!?な…何をする気だ!!?や…やめろぉ!!!やめろおぉ!!!」
「アザトホースよ…癒したまえ!!」
…と彼女が言うが早いか、その掌からアザトホースが現れ、たちまちジェムに取り付き、飲み込んでいく。
「うわああぁぁぁぁっ!!!?な…何だこれはぁ!!?た…助けてくれえぇ〜!!!」
「ジェム様…!!!」
ジェムに駆け寄ろうとするシャリーヤをレムが羽交い締めにして制止した。
「は…離せえぇ!!!!」
「落ち着けシャリーヤ殿!いま近寄ってはならん!巻き込まれるぞ!」
ジェムを完全に飲み込んだ黒いモノ…アザトホース(の一部)は、先程の疱瘡の男の時と同じようにグネグネと動き始めた。
「あぁぁ…っ!!!!お…おい!貴様ぁ!!止めろぉ!!!今すぐにっ!!!!」
レムの腕を振り解いたシャリーヤは剣を抜いてマラクンに詰め寄る。
「…だから…先ほど心配いらぬと申しただろう…そもそも、一度始まってしまったものは誰にも止められぬ…」
「あ…あれを見て心配するなと…っ!!?」
シャリーヤはマラクンに掴みかかり、アザトホースを剣で指し示して怒鳴りつけた。
「…くっ…い…今アザトホース様のお力によって、あの者(ジェム)の肉体は完全に分解・吸収されている…そして、いずれ間も無く、再構築が始まる…」
彼女の言った通り、アザトホースの動きは次第に収まり、やがて大まかな人の形を取り始めた。
そして…

 ズルルウゥ〜…ベッ!……ドサッ!!

「うぐぅ…っ!!?」
アザトホースの中からジェムが吐き出されてベッドの上に転がった。
「ジェム様…!!!」
シャリーヤはジェムに駆け寄る。
「…!?…!?…???」
ジェムは我が身に何が起きたのか解らず、自分の体をペタペタと触って確かめている。
「ジェム様!ご無事ですか!?どこかおかしな所はございませんか!?」
「…な…無い…ように思える。…だが、一体何だったんだ?今のは…?」
レムが尋ねた。
「あ…あの、ジェム様…頭痛は?」
「頭痛?……あっ!!治っている!?な…治っているぞ!!治った!!治った!治った!治ったぁ!!あんなに辛かった頭痛が治ったぁ!!」
「おぉ!!おめでとうございます!!」
ジェムは大喜びでマラクンに言った。
「私の苦痛を取り除いてくれたのはお前か?」
「…我ではございませぬ…全ては我らが神、アザトホース様の御力…」
「アザトホース?…知らん。まあ良い!お前には褒美として金貨一万枚を取らしてつかわす!どうだぁ!恐れ入ったか!喜べ!私を敬え!畏れ奉れ!ワハハハハハハッ!!」
…絶好調である。
「…有り難き幸せ…されど、我が望みは金銭ではございませぬ…」
「ん?何だ?では地位か?領地か?何でも好きな物を言うが良い!」
マラクンは言った。
「…我らが教団をイルシャ王国の国教にしていただきたく存じます…」
「国教ぉ…っ!!?」
レムは思わず叫んだ。
シャリーヤも言う。
「馬鹿な…そんな事、不可能に決まっています。あなたがジェム様の病を治した事は賞賛に値しますが…だからと言って“アザトホース教”などという名も無い宗派をいきなり国教にせよとは…」
だが、当のジェムが宣言した。
「…良いだろう!許可する!本日よりアザトホース教は我がイルシャ王国の国教だ!」
「「…っ!!?」」
またこの人は…調子が戻った途端にこれだ。
皆は心の底から思った。
マラクンは更に言う。
「…ちなみに、我が宗派はアザトホース様以外の神の信奉を許しておりませぬ…国教としていただくからには他の宗派を国内から一掃していただきたく存じます…」
「何と狭量な!!」
レムは叫んだ。
他宗教を認めないなんて…そんなの差別されて当然だ。
だが既に乗り気のジェムの耳には一切届かない。
「ほうほう!そうなのかぁ〜!ならば全臣民にアザトホース教への改宗を義務付け、拒む者は死刑としよう!他宗の神殿は全て閉鎖し、神官達は還俗させる!…シャリーヤ!書記を読んで来い!すぐに法令として全国に発布する!」
「…かしこまりました」
シャリーヤは頭を下げて部屋を後にした。
「おい!」
レムはその背中に向かって言う。
「シャリーヤ殿!あなたもか!」
「レム殿…私の意思は常にジェム様と共にあります」
結局、彼女にとって大切なのは主たるジェムの意思であり、それ以外はどうでも良かった。
だがレムはそうはいかなかった。
オムが殺されてからジェム政権の内政面も担うようになっていた彼はジェムに必死に訴えた。
「ジェム様!どうかお考え直しください!我が国は初代イルシャ・ルーナ女王の御世から特定の宗派を国教と定めず、臣民にも信奉する神を強制しない事を国是として来ました!イルシャ王家や我がヤヴズ家(王家の流れを汲む)は月の神カマル、イシュマエル家は太陽神シャムスといった具合に、各氏族ごとに信奉する神々がおります!あなたはそれらの神々の存在を否定なさるおつもりですか!?そんな事をしたら今にも増して離反者が増え、サーラ王女の勢力は益々強大になりますよ!」
「…いや、それは無い!!お前も見ただろう!?アザトホース神の力を!皆にもそれを教えてやれば良いのだ!そうすればこの神がどれほど素晴らしいかを理解するはずだ!」

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