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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 34


「…なんか、終わってみるとアッと言う間だったよね…」
「確かになぁ…」
「しかしこの見飽きた教室も今日で見納めとなると何か感慨深い物があるなぁ…」
授与式終了後、セイル、アリー、パサンの三人は誰もいない教室で最後の別れを惜しんでいた。
パサンは頭の後ろで手を組みながら言う。
「しかし良かったじゃねぇか、セイル。卒業後の配属先が王都の警備隊だなんてよぉ。アリーも王都の王立学士院に進学だし、この三人で王都を離れるのは俺だけだぜ…ハァ」
溜め息を吐くパサンにセイルは言う。
「確かにパサンの剣の実力なら王室親衛隊に抜擢されたっておかしくないのにね…」
「ああ、でも俺は平民だし何のコネも無ぇからなぁ…まぁ、北方鎮台(北部方面軍)に送られなかっただけマシだよ。北の国境じゃあ蛮族との小競り合いが絶えなくて戦死も珍しくねぇって話だからなぁ…」
それに対してアリーは言った。
「そうだそうだ。イスカンダリアは大きな街だし、良い所じゃないか。そんなに悲観するなよ」
パサンの配属先は王都イルシャマディーナから遠く離れた所にある港町イスカンダリアという都市の守備隊だった。
イスカンダリアは王家の直轄市で“東大陸の玄関口”とも呼ばれる大港湾都市でもあり、一応イルシャ国内では王都に次ぐ第二の都市なのである。
それでも慣れ親しんだ土地を離れるというのはなかなかツラいものがある。その点セイルは幸運と言えた。
いや、幸運というのは違うかも知れない。彼の勤務地が王都になったのは決して偶然などではなく、彼の父クルアーン・オルハンが各方面に働きかけをしてくれたからに他ならなかった。
まだ見ぬ新天地に思いを馳せパサンは頭を上手く切り替える。
「まっ新天地で一旗あげるのも悪くねえな!」
「僕らはやっとスタートラインに立ったばかりだからね」
「そうだな。セイルの言うとおりだ」
スタートラインに入ったと感じるセイルにアリーも納得する。

「それに、あそこは西方大陸の人間が多いから、金髪の可愛い西方人の可愛い娘ちゃんと…グッグフフフ〜」
「はっはっは、パサンらしいや〜」「変な女に身を持ち崩すなよ」
元気を取り戻し調子に乗るパサンにセイルとアリーは呆れる。
何時のアリーなら、パサンに必ず説教を言うのだが、
今日は卒業式なので呆れる程度で済ましたのである。

三人がそんな風に和気あいあいと話していると、教室の扉が開かれ、意外な人物が姿を現した。
「こんな所にいたのね…もう、探しましたよ」
「サーラさん…!」
「サーラ様ぁ♪♪」
そこに居たのはサーラだった。パサンのモチベーションは一気に上がった。
「あぁ〜…セイル、僕とパサンは突如として大切な用件を思い出したよ。行くぞパサン」
アリーは気を利かせてパサンの首根っこを掴み、教室を後にする。
「えぇ!?お前何言って…あ!離せよコラ!」
「空気読めアホ!じゃ、お二人ともごゆっくり…頑張れよセイル」
アリーは最後にボソッとつぶやくように言うとピシャリと戸を閉めた。
「頑張れって言われてもなぁ…」
「ウフフ…面白い人達♪」
二人きりにされて戸惑うセイル。一方サーラは楽しそうにクスクスと笑っている。
「え〜と…あ!そうだ。サーラさん、将軍職就任おめでとう!…確か鎮東将軍だったっけ?王族とはいえその若さで、しかも女性で将軍になった人は歴史上も少ないし、やっぱりサーラさんは凄いよ」
何とか間を持たせようと必死に話題を探していたセイルは思い出したように口を開いた。

サーラに与えられた“鎮東将軍”とは東方鎮台(イルシャ王国の東の国境を守る軍)の最高司令官であり、大変名誉ある地位である。
イルシャ王国の国防は、王都を中心として東西南北の国境にそれぞれ置かれた四つの鎮台府(地方軍司令部)に委任されている。
ただし、その最高司令官である“将軍”の地位は長い年月を経て形骸化し、単なる名誉称号になっており、実際に現地で軍の指揮に当たっているのは鎮台府の次官である。

「ありがとう、セイルくん。でも、君とも暫くは会えなくなるのね…とても悲しいわ…」
「確かにそうだねぇ、王族と一兵卒ではなかなか簡単には会えないかも…でも二人とも王都にいるんだから、いずれまた顔を合わせる機会だってあると思うよ?だからさ、そんなに気を落とさないで…ね?」

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