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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 328

ハジャはジェムに挨拶した。
「お初にお目にかかります、ヤヴズ・ジェム大執政閣下。私、ナスレッディン・ハジャと申します」
「あぁ…話は聞いているぞ…早く何とかしろ…」
弱々しく言うジェム。
ちなみに今は鎮痛剤が作用していて頭痛もそれ程ではない。
「ではさっそく診てみましょう」
ハジャはジェムの頭部に手をかざして内部の様子を調べ始めた。
腫瘍は確かにそこに存在していた。
彼は思う。
(うっ…これは酷いな…まさかこれ程の物とは…一体どれだけの精神的重圧に晒され続ければこんなに大きな腫瘍が出来るんだ…)
そしてハジャは言った。
「…解りました。すぐに手術が必要です」
「手術…!!?」
ジェムの顔色がサッと変わる。
「あ…頭だぞ!?一体どうやって手術するというのだ!?」
ジェムの問いにハジャは信じられない事を言った。
「頭蓋に穴を開け、そこから腫瘍を掻き出すのです」
「!!!?…ず…頭蓋に…穴を…っ!!!?」
ジェムは仰天した。
「はい。非常に難しい手術ですが、私は過去に10回やって8回成功させております」
「の…残りの2回は失敗したという事か!!!」
「まぁ話をお聞きください。その2回は、頭蓋を切り開いてはみたものの、患部が脳の奥だったために手の施しようが無く、仕方無く治療を諦めてまた元に戻しただけ…つまり成功ではありませんが殺してもいません」
「信じられん!!!!」
ジェムは断言した。
「頭蓋に穴を開けるだと!!?意味が解らん!!!理解出来ん!!!」
「ジェ…ジェム様…!」
レムが弱々しく言う。
「こ…ここは彼を信用して手術を行いましょう…でなければジェム様ご自身のお命が…」
「冗談ではない!!!!絶っっっ対やらんぞ!!!!そんな訳の解らん事を…!!!!断固拒否する!!!!」
「……」
レムは思った。
(ダメだ…思考が“完全防御モード”に切り替わっている…こうなるともう何を言っても受け付けないぞ…)
だいたいハジャの言い方もマズかった。
このテの相手にはもう少し慎重に行くべきだったのだ。
だが彼は生憎と内科外科方面に特化した医者であり、メンタル方面には疎かった。
「私を信用していただけぬというのならば結構、帰らせていただきます。さいなら」
踵を返して立ち去ろうとするハジャ。
「な…なにぃ…っ!!!?」
ジェムは焦った。
信用は出来ないが自分の苦痛を取り除ける(恐らくイルシャで唯一の)医師…去られたらそれはそれで困るのだ。
まったく面倒臭い男である。
だが、ここで彼は、ふと、ある考えに思い至った。
「…そうだ!!!!その男はサーラの手の者だ!!!!」
「「「…はあっ!!!?」」」
この突然の思考の飛躍には、当のハジャはおろか、その場にいた全員がたまげた。
「思い出したのだ!!!!確か昔、サーラの臣下に似たような顔の男がいたような気がする!!!!いや絶対そうだ!!!!間違い無い!!!!」
ジェムは叫ぶ。
「貴っ様ぁ!!!!医者のフリをしてこの僕を暗殺する気だったな!!!?上手く化けたつもりだろうが残念だったなぁ!!!!この僕の目はごまかせないぞぉ!!!?ヒヒッ…ヒヒヒッ…ヒヒヒヒヒヒ…ッ!!!!…おい、シャリーヤあぁっ!!!!コイツを殺せえぇっ!!!!」
「え…っ!!?」
いつもなら忠実にジェムの命令を実行するシャリーヤだが、今回ばかりは躊躇った。
もっとも彼女の場合、ハジャへの同情というよりは、彼が主ジェムの苦痛を取り除ける唯一の医者であるという理由が殆どである。
「シャリーヤあぁっ!!!!何をしている!!!?早く殺せえぇっ!!!!この俺の言う事が聞けないのかぁ!!!?まさか貴様も反逆者の仲間かぁ!!!!うがあああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「…そ…そのような事は…っ!!」
シャリーヤは剣を抜いてハジャに向けた。
「…そういう訳ですハジャ殿、お覚悟ください…」
「そ…そんな馬鹿な…っ!!?私が一体何をしたとぉ…っ!!?」
「お…お待ちください!!!!」
レムが叫んだ。
「ジェム様!!!ハジャはあなたの敵ではございません!!!どうか冷静に!!!ハジャを殺せばあなたも助からぬのですよ!!?そもそもあなたは今、誰が敵で誰が敵でないのかが判らなくなっておられるのです!!!目をしっかりと見開いてお見極めください!!!!」
「うるさあぁぁぁいっ!!!!誰も信用出来るかあぁぁっ!!!!それ以上ハジャを庇い立てすると貴様も敵と見なすぞぉっ!!!!」
「…っ!!!?」
その言葉にレムは引き下がった。
レムは一瞬チラッとハジャの方を見だが、慌てて目を逸らした。
シャリーヤが剣を振り上げる。
「ハジャ殿…こういう事になるとは…残念です…」
「ま…待ってくれ!!殺さないでくれぇ!!わ…私には今まだ診ている患者達がぁ…っ!!」
「…っ」
だが次の瞬間シャリーヤの剣が一閃した。
「ぐあぁ…っ!!!?」
短い悲鳴と共にハジャは床に倒れ伏した。
「…く…狂ってる……あんたら、全員…狂って…る………」
ハジャは絶命した。
その死体をジェムは見下ろして笑い始める。
「…フッ…フフフ…フフフハハハハハハッ…アーッハッハッハッハッハッハァ…ッ!!!!見たかぁ!!!!俺に逆らうヤツは死あるのみだぁ!!!!ザマァ見ろおぉ!!!!」
レムは狂ったように笑い叫ぶジェムを前に、はらはらと涙を落としながら思った。
(誰か…誰か…この人を…救ってくれ……)

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