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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 324

「え…えぇっとぉ…」
困ったイーシャはサーラの方を見た。
だがサーラも何と言って良いのか解らない…。
そこへユーナックが助け舟を出した。
「ま…まあまあシャフリヤール殿下、そのお話はまた次の機会にいたしましょう…」
「…およ?そう言えばそなた、見ればなかなか良い男ではないか…どうじゃ?余に仕えぬか?」
「こ…困ります!私はサーラ殿下の騎士にございますれば…」
「じ…実は余、ちょっとそっちの気もあるぞよ…♪」
「…えっ!?そ…それは本当ですか殿下…!?」
「に…兄様!!いい加減にしてください!!」
勝手に自分に仕える者達を次々に引き抜こうとするシャフリヤールについにサーラもキレた。
「人の臣下を取ろうとしないでください!!しかも本人の目の前で!」
「えぇ〜…だって余、他人の臣下で気に入ったのがいたら、ついつい時と場所もわきまえずに勧誘したくなっちゃう性分だからしょうがないぞよ〜…」
「あんた最低!!」
シャフリヤールは宣言する。
「余は次代のイルシャ国王ぞよ!誰にも文句は言わせぬぞよ!」
そんな兄王子をサーラは少し見下したように言う。
「…次代の王位をお望みとの事ですが兄様、一体あなたは何をもって国王に即位なさるおつもりですか?…つまり、あなたには何か後ろ盾となる勢力がおありなのですか?例えば“大衆の支持”とか…そういう物が、あなたにはおありなのですか?…まさか、伝統的な権威だけを頼りに王位に就きたいなどとの甘いお考えではありませんよね?」
「…え?余、ちゃんと後ろ盾あるぞよ?」
「…えっ!?」
予想外の答えにサーラはギョッとする。
だが彼女を本当に驚かせたのはその次の言葉だった。
「…イシュマエル家が余を後押ししてくれるぞよ。実は余、クーデター以降ずっとイシュマエル家に身を寄せておってのう…その際にイシュマエル家当主のアクバル殿と密約を交わしたのじゃ。イシュマエル家は余の国王即位を支持してくれるとな…」
「……っ!!!?」
サーラは絶句した。
まさかシャフリヤールのバックにイシュマエルが付いていたとは…。
王家をも凌ぐ勢力を誇るイシュマエル家…王位を狙うという事は、そのイシュマエルを敵に回すという事なのだ。
「ちなみにこれがその証ぞよ」
そう言うとシャフリヤールは自らの腰帯に差していたジャンビーヤ(短刀)を鞘ごと抜いてサーラに見せた。
見事な装飾を施された金細工の短刀で、良く見ると柄の部分にイシュマエル家の紋章が入っている。
「そ…そんな……」
「サーラよ、我が妹よ…」
シャフリヤールは今度は逆にサーラを見下すように言った。
「…そなたはこの余を差し置いて王となる野心を抱いておったようだが…まぁ、そういう事ぞよ。残念じゃったのう〜♪」
「…そんな…そんな…嘘よ…」
「サ…サーラ…!」
フラリと倒れかけるサーラを慌てて支えるユーナック。
シャフリヤールは続けた。
「…本来なら王位の簒奪(さんだつ)を謀った叛逆罪として首をハネてやる所じゃが、これまでの功績と相殺して無罪にしてやるゆえ有り難く思うが良いぞよ。だがもう国内には居られぬ物と思え。まぁ〜、そなたは器量だけは良いからのう、どこぞの藩王にでもくれてやるぞよ。可愛い妹のために良き嫁ぎ先まで用意してやるなんて、我ながら優しい兄ぞよ〜♪」
そう言うとサーラを屈服させたシャフリヤールは上機嫌で部屋を後にした…。

「「「……」」」
後に残ったのは、漂う絶望感と気まずい沈黙…。
「…こんな…形で…」
やがて口を開いたのはサーラだった。
「…こんな形で…私の夢は潰えてしまうの?…私の夢…イルシャ王国を西大陸諸国にも負けない近代国家に生まれ変わらせるという私の夢が…」
「…サーラ!」
「サーラ様…!」
ユーナックとイーシャがサーラに寄り添う。
「あぁ…あなた達…聞いたでしょう?もう私に付いていても良い目は無いわ…シャフリヤール兄様に乗り換えたければ、そうなさい…私は引き留めないわ…」
「何言ってるの!私はサーラの騎士だよ!良い目が見れるとか見れないとか、そういう問題じゃないよ!」
「も…もちろん私もサーラ様に付いて参ります!」
「…あなた達…」
改めて絆を確認し合った主従…ふとサーラの目から熱い物が頬を伝い落ちる。
「…二人とも、ありがとう…そうよね…こんな事ぐらいで諦めたりしちゃ駄目よね…!」
「そうだよ!」
「あ…でもぉ…」
イーシャが言った。
「何!?水差さないでよ!今いいとこなんだから!」
すかさずツッコむユーナック。
「す…すいません!…でも現実問題、あのイシュマエルを敵に回して勝ち目あるんですか…?」
「うっ…それは…そのぉ…」
口ごもるユーナック。
そこにサーラが言った。
「…一つだけ、手があるわ」
「「本当に!?」」
ハモる二人。
「何なんですか!?」
「教えてサーラ!私達に出来る事なら何でもするから!」
「ありがとう…でもこれはある意味、危険な賭よ…それに私達以外の人達にも協力してもらう必要があるわ…」
「誰…?」
「とりあえずは……セイル君とアルトリアさんね」
…かくして玉座を巡って、シャフリヤール側に遅ればせながら、サーラ側も水面下で動き始めたのだった…。

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