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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 323

「そ…それはちょっと極論じゃないですか…」
セイルは一応反論するが、その語調は弱い。
彼も不安なのだ。
確かに国を新たに生まれ変わらせるためには、古い体制をぶち壊す事が必要かも知れない。
だがぶち壊した後…本当に旧体制に取って代わるに値する新体制を打ち立てられるだろうか…。
最悪の場合、無駄に国内を混乱させるだけで終わる可能性もある。
そんな事はバムとブムのクーデターだけで充分だ。
更にアーシアは言う。
「…それに各地方を治める太守達から領地の統治権を取り上げるとか…」
「それは中央集権化の過程で仕方の無い事ですよ…」
世襲の太守に代わり、中央から州知事を任期付きで派遣して統治させる…これがサーラの目指す中央集権体制だ。
「何故そのような強大な政府が必要なのだ?」
「それは…西大陸諸国の脅威から我が国を守るためです!!」
やっと力説できたセイル。
「西大陸と戦う前に特権を奪われた貴族と失業した士族が反乱を起こすだろうな」
「……」
だがすぐに反論の余地も無く口を封じられる。
「…セイル、よ〜く考えてみろ。サーラは…あれは、ダメだ。ダメなのだ、あれは…」
「あ…姉上こそ!そんな事を言って、本当の所はご自分が女王になりたいというのが本心なのではありませんか!?」
「…はあ?妾は女王になんぞなりたいとは思っておらんぞ。面倒臭いではないか」
「…あ、そうですか…」
「妾は正直、戦場に立って剣さえ振るえれば誰が王でも良いのだ。…ここはやはり第二王子であるシャフリヤール兄上に王位に就いてもらうのが無難であろう。あれは自分の事しか考えられぬボンクラだが、玉座に据えて置くにはあれぐらいの阿呆がちょうど良い」
「はあ…」
なんと、アーシアは(あまり積極的ではないようだが)確かにシャフリヤールを支持していたのだった。
してみると、両者が裏で繋がっているのでは…というサーラの憶測も、あながち勝手な思い込みだけでもなかったという事か…。
「セイルよ、今一度よ〜く考えてみよ。この国にとって誰が王になるのが最も望ましいかをな…。まぁ、あまり答えを急かすのも良くないな。考える時間も必要であろう。今すぐ答えを出す必要は無いぞ。今日の夜ぐらいまでに決めてくれれば良い…」
「早っ!」


その頃、珍しい人物がサーラの執務室を訪れていた。
第二王子シャフリヤールその人である。
「…サーラよ、我が妹よ、そなたはこれまで本当に良うやってくれた。あの逆臣ヤヴズ・ジェムに対抗する勢力を築き上げ、戦ってくれた…いや実に天晴れ(あっぱれ)な働きであった。王族として、兄として、そして“次代の王”として余は非常に嬉しく思うぞよ。是非とも礼を言わせておくれ…」
シャフリヤールは男性にしては背が低く、丸々と肥え太った男だった。
年齢的には“青年”と言って良い歳のはずだが、口元と顎にクルンと丸まった小さな髭を生やしており、兄であるアルシャッドよりも年上に見える。
なお「礼を言わせてくれ」と言う割には、椅子にどっかり腰を下ろし、足を組んでふんぞり返っており、態度はデカい。
「い…いえ、兄様、どういたしまして…」
応えながらも、どことなく引きつっているサーラ。
彼女の傍に立つユーナックも二人に交互に目をやり、困惑したような表情を浮かべている。
シャフリヤールは言った。
「父上の喪が明けたら、余は即位しようと思うておるぞよ」
「そ…即位…っ!?」
やはり来た…そのワードにサーラは露骨に反応した。
「そ…即位と言うと…やはり…その…国王…に即位なさるのですか?」
「当たり前ではないか。他に何に即位するというのだ?」
「…で…ですよねぇ…ええ、そうですよね…」
「我が妹ながらおかしな事を言う」
「に…兄様!失礼ながら申し上げます」
「なあに?」
サーラはシャフリヤールを真っ直ぐに見据えて言った。
「我が国は今、国家存亡の危機にあります!この国難を乗りきるには、並大抵の王ではいけないと思うのです!」
「それはそうだのう…」
この理論にはシャフリヤールも納得した様子で頷く。
サーラは熱っぽく兄王子に訴えた。
「そのためには、王家と民とが心を一つにしていかなければなりません!…で、そのためには…やはり…民から人気のある者が王になった方が良いのではないかと私は思うのです!兄様はアルシャッド兄様が亡くなられて即位を義務と感じておられるかも知れませんが、もはや王位継承順位などにこだわる必要など無いのですよ!今は民に求められる者こそが王になるべきなのですから!」
「し…しかしサーラよ、そなたの理論でいったら、やはり余は王にならねばならぬぞよ。だって余、かなり民から人気あると思うし…」
「何でそんなポジティブシンキングなの!?」
「…というか、ぶっちゃけ余としても義務とか抜きに王になりたいぞよ」
「や…やはり王位への野心を抱いておいでだったのですね…!?」
サーラはシャフリヤールの野心を確信した…いや、野心と言うのはおかしい。
なぜなら彼は王位継承順位に従って順当に即位するだけなのだから。
野心を抱いているのはむしろサーラである。
そこへノックの音がして、サーラ付き女官のイーシャがお茶セット一式を持って現れた。
「お待たせいたしました。お茶が入りましてございます…」
「…おっ!」
イーシャを見たシャフリヤールが反応する。
「…そなた、なかなか美しいではないか。余の妾(めかけ)にならぬか?」
「「「えぇぇっ!!?」」」
突然の申し出に当のイーシャはもちろん、サーラとユーナックも困惑する。
「今“火曜日妻”と“金曜日妻”が空いておるゆえ、好きな方を選ぶが良いぞよ♪」

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