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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 322



‐王宮の一角・アーシアの部屋‐
「……」
あれから、セイルとアルトリアは何故かアーシアに招かれ、彼女の部屋に来ていた。
椅子に腰掛けたセイルはキョロキョロと周りを見回している。
室内は重厚感のあるインテリアで統一されており、部屋の隅には兜と甲冑が飾られ、壁には様々な種類の剣、盾、槍といった武器が掛けられている(いずれも豪華な装飾が施されており、実用品というよりは美術品に近い)。
壁には世界地図も掛けられていた。
サーラに見せてもらった最新の地図ではなく、昔ながらのイルシャ王国を中心とした古い地図である。
(サーラさんの部屋とは何か雰囲気違うなぁ…)
セイルは思った。
ちなみに両者の部屋の唯一の共通点は、女性らしい要素が皆無という点である。
「フフ…欲しい武具があれば一つぐらいくれてやっても良いぞ」
セイルが壁の武器ばかり見ているので欲しがっていると勘違いしたアーシアは笑って言う。
「い…いえ、結構です!ありがとうございます…」
「ふむ…遠慮深いのだな。それともサーラに義理立てしているのか…?」
そう言ってセイルを見て目を細めるアーシア。
それは可愛い弟を見る姉の目だった。
一方、美人に真っ正面からジッと見つめられたセイルは思わず顔を赤らめる。
仕方が無い、姉弟とはいえ実感が無いのだ。
そんな主を見てアルトリアは思う。
(…相変わらず純なお方…)
主人公特権で周りに美人が多いにも関わらず美人耐性の無いセイル。
何でも良いから話題を振ろうと口を開いた。
「と…ところでアーシア殿下は僕が王族だという事をご存知だったのですね。サーラさ…いえ、サーラ殿下に聞いたのですか?」
「セイル!そのような他人行儀な呼び方はよせ。我らは肉親だ。遠慮などせず“姉上”と呼べ」
「あ…姉上」
「うむ♪それで良いのだ」
アーシアは満足げに頷いて言った。
「…別にサーラが誰彼かまわず言い触らしていたという訳ではないのだがな…こういう事は人から人へ自然に伝わっていくものだ…ま、もう王宮の者は全員知っておる」
「自然の伝達速度、早っ!!」

この第7王女アーシアについて少し補足しておこう。
彼女はある意味サーラと似た所があった。
王女の身でありながら剣を嗜み、騎士としての道を歩んでいるという点だ。
いや、彼女の場合、剣というより“戦い”を好む所がある。
今までイルシャ王国が平和だったため本格的な戦争の経験こそ無いものの、軍を率いて盗賊や蛮族の討伐作戦に参加した事はあった。
それも後方の安全地帯から命令するだけではなく、自らも前線に立って敵と直に刃を交える程の豪胆さ。
剣の腕前自体もかなりの物であった。
兵の指揮もそれなりに上手く、将軍としての才もそこそこ。
加えて美人である。
…以上の点から巷では“姫将軍”などと持て囃され、結構な人気があった。
ただ彼女の場合、サーラのように民衆寄りの立場を取っている訳ではない。
あくまで王族として…民を“支配する側”の人間として振る舞っていたので、下層民からの人気はサーラに及ばず。
その代わり平民、士族、貴族…全ての階層から一定の人気があった。
サーラが脅威に感じているのはこの点である。

アーシアは言う。
「それよりセイル、そなたの身分は今、サーラに仕える“騎士”であったな…」
「はい、殿…いや、あ…姉上…(やっぱ呼び慣れないなぁ…)」
アーシアは腰を下ろしている長椅子からセイルの方に身を乗り出し、彼の顔を覗き込むようにして尋ねた。
「…そなた、本当にそれで良いと思っておるのか…?」
「…はい?…仰る意味が解らないのですが…」
「単刀直入に言おう。セイル、妾に付け!今さら王族にはしてやれぬが、将軍の地位ぐらいくれてやるぞ」
「ええぇぇぇっ!!!?」
まさかの突然のヘッドハンティングにセイルは驚いて椅子から滑り落ちそうになる。
アルトリアが言った。
「セイル様、これは俗に言う“引き抜き”というヤツではありませんか」
「う…うん、正直信じられないよ」
「人生の分岐点ですね。どちらを選ぶかでその後の人生は大きく左右されますよ。…乗るか反るか!まさに究極の選択!正解は二つに一つ!フィフティ・フィフティ!」
「煽るな!胃が痛くなってくるだろ!」

アーシアは夫婦漫才を始めた二人から目を離すと、窓の方を見て呟くように言った。
「…サーラは…あれは恐らく玉座を狙っておるのであろう…」
「そ…そんな事は一言も言ってませんでしたよ!サーラさんは…」
「言っておらんでも態度が語っておる」
「……」
セイルは何も言えなくなった。
サーラはこの国の在り方を根本から変えたいらしい。
そんな大胆な改革を実行したいのであれば…それは事実上、王にでもならなければ不可能だ(もっとも、お飾りの王を立てておいて、自分は摂政なり宰相なりの立場で改革を行う事も、不可能ではないだろうが効率は悪い)。

アーシアは眉間にシワを寄せて言った。
「妾は…あれ(サーラ)が王位に就く事は…正直あまり歓迎せぬ」
セイルは訊いた。
「ど…どうしてですか?」
「あれの言う、ネションベンとかいう…」
「ネイション・ステイト(国民国家)ですね」
「…そう、それが妾には理解出来ぬのだ。聞けば貴族を国政から追放し、代わりに奴隷や平民を役人にするというではないか。国祖イルシャ・ルーナ女王陛下から500年間、我がイルシャ王国繁栄の礎となって来た秩序を、あれは破壊しようとしているのだ」

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