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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 321

「その結果がアレか…」
そう言って眉をひそめるアルトリア。
確かに彼らは腰から剣を下げ、騎士の服装をしてはいるものの、その色使いやデザインは、酷くケバケバしいというか、とにかくド派手なのだ。
何というか…自己主張全開。
ヤヴズ・ゲムを思い起こさせるのも当然だ。
同じなのだ。
今まで慎ましく(?)生きてきた人間が、急に分不相応な地位を与えられて偉くなって…。
まさに我が世の春といった所だろうか。
きっと神にでもなったかのような気分なのだろう。
「まったく…あれらはさしずめサーラ殿の博愛平等主義が生み出した弊害の象徴といった所でしょうね」
「む…昔ながらの騎士としてあんな連中を放っておく訳にはいかないよ!」
セイルは意を決して彼らの前に歩み出た。
「き…君達!!やめないか!!」
「あぁ〜ん!?何モンだべぇ!?」
「騎士だかぁ!?」
「ヘッ!騎士なんて怖くねえどぉ!!オラ達も同じ騎士なんだがんなぁ!!」
農民騎士(仮)達はセイルを取り囲む。
セイルは勇気を振り絞って彼らに言った。
「み…皆さん迷惑してるじゃないですか!ひ…人を威圧するような振る舞いは止めた方が良いと思います…騎士というのは、そういうものではないかと…」
「セイル様、弱いです。あと敬語になってます…」
冷静にツッコむアルトリア。
「…ハッ!し…しまった、つい…」
「ハッ…何だべぇ、コイツ…」
「おぉ!それよりこんネエちゃん、どえれぇべっぴんでねぇがぁ〜」
「お姉ちゃん、こっだらヘタレでねくてオラ達と一緒にイイ事しねぇがぁ〜?」
「んだんだ、楽しいべよ〜」
男の一人がアルトリアの肩をグイッと掴んだ。
セイルは叫ぶ。
「ア…アルトリアに手を出すなだべ!!!…ってアレ?」
「「「……」」」
その瞬間、空気が変わった。
農民騎士達の表情が凍り付いたのだ。
「…オイ…おめぇいま何づっだ…?」
「す…すいません、何か喋り方うつっちゃったみたいで…あっ!ち…違いますよ!?別に馬鹿にしたとかじゃありませんよ!?」
「…うっせえええぇぇぇっ!!!!おめぇもおらだづをたわげにすっどがあぁぁっ!!!!」
「だ…だから違うってぇ…っ!!!」
怒りに顔を真っ赤にした農民騎士の一人が剣を抜いた。
それに続くように他の連中も次々と剣を抜く。
「…クソッ!!聞く耳無しか!!」
セイルもやむなく聖剣を鞘から抜き放つと彼らに向けて構えた。
「まったく…これだからコンプレックスのある人間は面倒臭くていけません」
アルトリアも魔法で剣を出現させた。
対峙する両者。
まさに一触即発…いや、もう手遅れだ。
平和な(戦争中だが)街の通りに、あわや血の雨が降るかと思われた…その時である。
「そこの少年騎士!助太刀いたす!」
…セイル達の後方から何者かの声。
振り向くと一人の若い女性騎士が今しも剣を抜き放った所であった。
「あ…あなたは…っ!?」
「妾(わらわ)の事など気にするな…それよりも貴様らぁ!」
女性騎士はセイルの横に立つと農民騎士達に向かって告げる。
「な…何だべぇ!!?」
「…誰彼かまわず剣を向けるのは其方(そなた)らの自由だが、一応相手が誰かを考えた方が身のためだと思うぞ?…この少年が、たった一人で敵の包囲を突破して入城して来た、あのクルアーン・セイルであるというのを承知の上での事であろうな!?」
「「「ク…クク…クルアーン・セイル!!?」」」
農民騎士達の驚きようといったら無かった。
「ア…アホぬかすでねぇ!!こんなヘタレの優男がぁ…!?」
「熊みてぇな大男でねぇのけぇ!!?」
「おめぇ!!嘘こぐでねぇ!!」
「…嘘かどうか、試してみるか…?」
そう言って凄む女性騎士…。
「うぐぅ……きょ…今日ん所はこんぐれぇで勘弁してやっべぇ!!おい、おめぇら引き上げっべ!!」
「そうすべ!そうすべ!」
農民騎士達は退散した。
その背を見ながら女性騎士は剣を鞘に収めて笑って言う。
「フッ…あの程度の輩、少し脅しを掛けてやればこの通りだ…。セイルよ、そなたの誇り高き剣をあのような下賤の者共の血で汚す事など無いぞ」
一方、当のセイルはというと、彼女の凛とした美しい容貌に思わず見とれていた。
「……」
「…セイル?どうした?妾の顔に何ぞ付いておるか?」
「…あっ!い…いえ、ごめんなさい!…それより助けてくれてありがとうございます。…というか、どうして僕の名前を…?あなたは…?」
「おぉ、そうであった。まだ名を名乗っておらなんだな。妾はイ…」
「殿下ぁーっ!!」
「おケガはございませんかぁ〜!?」
女性騎士が名を告げようとした所、また新たに4〜5人の女性騎士がこちらに向かって走って来た。
「何だ、今さら来るとは…遅いぞ!ルバイアート」
「はぁ…はぁ…で、殿下が我々に何も告げずに出て行ってしまわれたのではありませんか!供も連れずに街中をお一人で歩くなど…ご自分のご身分を考えてくださいませ!」
ルバイアートと呼ばれた隊長格の女性騎士は、セイル達を助けた女性騎士を窘めるように言う。
「ハハハ…辺境の蛮族共や砂漠の盗賊共と幾度となく刃を交えて来た妾が、今さら城下の一人歩き如きで何を大袈裟な…」
「そ…それでも殿下の御身をお守りいたすのが我ら近衛騎士の役目でございます!」
「分かった分かった。悪かったよ…」
その会話でセイルとアルトリアも悟った。
セイルは女性騎士に尋ねる。
「あ…あの…ひょっとして、あなた、王族の方ですか…?」
彼女は笑って答えた。
「ひょっとせずとも王族だ。妾の名はイルシャ・アーシア。イルシャ王国第七王女…そなたの姉だ。セイル」

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