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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 312


一方、親戚達がそんな密談を交わしている事など知らぬジェムは…
「…決めたぞ!」
「何を決められたのでございますか?ジェム様…」
シャリーヤが問う。
「あの新式銃の名称だ。“旋回式斉射銃”ではいちいち言いにくいからな…」
「“回転式連射銃”ではありませんか?」
「それだ。…で、それなんだがな…“アリー砲”と名付けようと思う」
「…それは素晴らしいネーミングです。アリー殿が発明なさったのでアリー砲という訳ですね。語呂も良いと思います」
…もしこの場にアリーがいたらきっと全力で拒否しただろう。
というか彼は王宮では“ハイヤーム”で通しているので、事情を知らぬ殆どの者達は何故“アリー砲”なのか解らないはずだ。
下手をすれば“ハイヤーム=アリー”と気付かれる恐れすらある。
ジェムは言った。
「…あのアリー砲があれば強大なイシュマエル軍とて敵ではない。ましてやサーラ軍など…フフフ…これで僕に逆らえる者はこの国…いや、この世界にいなくなる。…奪われたセイルをこの手に取り戻す日も近いぞ」
「何と…」
「…どうした?シャリーヤ…狐につままれたような顔をして…」
「……あ…いえ、失礼いたしました。…その…恐れながら…まだ諦めておられなかったのですね…セイル殿の事…」
「当たり前じゃないか!!僕は必ずセイルを救い出してみせるぞ!!あいつはサーラの魔法に掛かって、あの邪悪な魔女の術中に陥ってしまったんだ!!セイルは心の優しいヤツだったからな!!おのれ!!!僕の愛しいセイルを誘惑した魔女め!!!セイルは僕と一緒に居るのが一番幸せなんだ!!!絶対に赦さない!!!必ずセイルを取り返してやるからなぁっ!!!!」
「……」
あぁ…(ジェムの中では)そういう事になったんだ…とシャリーヤは思った。
最近セイルの事を口にしなくなったから、もう忘れたのかと思っていたのだが…。
どっこい、彼は脳内で自分に都合の良い自己正当化ストーリーを構築し、その虚構を自分でも信じ込んでいたのだった。
しばらく口にしなかったのは、さすがの彼もこのストーリーを脳内で“真実”に昇華させるまでに時間を必要としたからだろうか…。
いずれにせよ真性(プロ)の成せる業(ワザ)であった…。


「……」
翌朝、アリーは目覚めた。
アイーシャの姿を探して辺りを見回してみるが、どこにも見当たらない。
ベッドを出てササッと身なりを整え、隣接する研究室の方も覗いてみたが、やはり居ない。
「…アイーシャさん、どこに行っちゃったんだろう…?」
妙に思ったアリーは王宮内で彼女が居そうな場所を探し回ってみたが、結局どこにも居なかった。
城の女官や兵士達に聞いてみると、今朝早くにアイーシャが何やら荷物を持って城門から出て行くのを見たという者が何人もいた。
「か…彼女は一体どこへ行くと言っていた!?」
「は…はあ、城下の市場へ買い物に行くと仰ってましたが…」
「そ…そうか…」
それを聞いたアリーは自室に戻ったが、妙な胸騒ぎは収まらなかった。
「アイーシャさん…今まで僕に黙って出掛けるなんて無かったのに……ん?」
ふと彼は机の上に置かれていた二つ折りの紙片を見つけた。
「こんなのあったかな…」
彼は手にとって開いて見た。
そこには衝撃的な事実が書かれていた。

アリーさん
ここ最近あなたの様子が少し変だったので、失礼とは思いましたが、原因を知っていそうな方に尋ねてみました。
その方から事情は全て聞きました。
今まで私のために束縛されていたんですね。
私は何も知りませんでした。
本当にごめんなさい。
あなたを縛る枷になるぐらいなら私は消えます。
私の事などは忘れて、どうかアリーさんは幸せになってください。     アイーシャ

「…そ…そんな…そんなぁっ!!!嘘でしょうっ!!?アイーシャさんっ!!!」
アリーはアイーシャの置き手紙を握り締めて部屋を飛び出した。
「アイーシャさん!!!アイーシャさあぁぁーんっ!!!」
彼女の名を泣き叫びながら回廊を疾走するアリー。
その前にシャリーヤが現れた。
「おや、これはハイヤーム博士、一体いかがなされましたか?よもやアイーシャ殿が責任を感じて蒸発でもなさいましたか?」
「な…何でそれを!?……あぁぁっ!!?ひょっとして彼女に喋ったのはアンタだな!!?」
「はい、そうです」
あっさり肯定するシャリーヤ。
「ばかあっ!!!何で喋っちゃったのぉ!!?」
「…アイーシャ殿が真実を知る事を望まれたので、お話いたしましたが…何か?」
「真実を知った彼女がどういう気持ちになるかとか考えなかったのかよぉ!!?」
「…お言葉ですがハイヤーム博士…いえ、アリー殿。真実を隠し、嘘で塗り固めて繕った平穏な日々は、あなたにとって幸せな物でしたか?そしてそれはアイーシャ殿にとっても本当に幸せと言えるのでしょうか…?」
「今そんな事どうでもいいよぉ!!!彼女、責任感じて居なくなっちゃったんだぞぉ!!?」
「その点に関しては確かに浅慮でした。お詫び申し上げます」
そう言うとシャリーヤはアリーに向かって軽く頭を下げた。
「…うっ…うぅ…」
アリーはその場にくずおれ、そのままさめざめと泣いた…。


さてその頃、イルシャ・サーラ王女率いる反乱軍の立て籠もる旧王都イルシャ=マディーナでは…
「う…うぅ〜ん…」
朝、セイルは何やら得も言われぬ快感によって目が覚めた。
誰かが彼の朝勃ちしたモノを握って揉みしだいているのだ。
「…アルトリアかぁ…?」

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