PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 30
 32
の最後へ

剣の主 32

しかし、そんなタルテバの本心を知ってるのか知らないのかジェムはタルテバに卒業後に就く官位の保障を約束する。
「そうそう、タルテバ君。君の卒業後の初任の地位は、僕の御祖父様に話して保障するよ」
「あっありがとうございます!ジェムさん!(勿体無い振りやがって!!)」
「それと、君は戻りなさい。ここに長居するとサーラ姫たちに知られたらやばいからね」
「はい!では失礼します!」
卒業後の保障を得てタルテバは大喜びでサーラたちの陣地に戻った。
「全く身も心も薄汚い男だが、利用価値はあるな。後はサーラ姫だけど、お祖父様にに頼んでそろそろ自分が卑しい妾腹の姫だと言う事を弁えさせるか〜」
タルテバの本性を嘲笑いながら、サーラも嘲笑い何かを企んでいた。
「ジェム様、サーラ姫をどう料理するのですか?」
そこへ、ジェムの取り巻きの生徒がサーラをどう料理するか尋ねる。
「それは内緒だよ。それよりも油断はしないでね」
「はい!」 「お任せください!」
取り巻きの質問を秘密というジェムは取り巻きたちに持ち場に戻れと命ずる。
(それにしても、ルーナの聖剣の精霊は何でセイル君のような身分卑しく才も無い愚鈍な人間を使い手として選んだのだろうか…?王家の血を引く優秀なこの僕こそ聖剣の勇者に相応しいのに…全くナンセンスだよ)
そして、自分でなく内心小者と見下していたセイルを聖剣ルーナが選んだのかジェムは解らないでいた。
(まあ焦る事はないか…チャンスは幾らでもある。卒業したらまずは僕が、この国の頂点に立つに当たって最大の障害になりそうなサーラ姫を潰すとしようか。彼女は国民からの人気が高いからね)
そんな事を思いながらジェムはフフフ…と一人ほくそ笑んだ。
普通なら気持ち悪い仕草だが、この少女とも見紛う美少年がやると絵になる。

それにしてもこのヤヴズ・ジェムという少年、やり方は非常に卑劣ながら、その手口は実に鮮やかの一言に尽きる。
彼はいつもそうしてきた。
ある時は自分の評価を上げるため、またある時はライバルや邪魔者を排除するため、またある時は自分の立場を守るため、あるいは失態を隠すため…彼は考え得る限り実行可能なありとあらゆる手段を用い、他者を利用し、踏み台にし、裏切り、切り捨て、使い捨ててきた。
彼にとっては他人とは状況を構成する一要素に過ぎず、そこには一片の感情も入る余地は存在しない。
そして彼はその修羅の如き所業の結果として、周囲からの信頼と尊敬、そして人気を勝ち得ていた。
それが嘘で塗り固められた幻だとしても…。

ジェムはつぶやく。
「フッ…まったく、こう何もかも僕の思い通りになってしまうというのも逆につまらないなぁ…誰か僕をドキドキさせてくれる骨のある人間は居ないかなぁ…」
だが彼はまだ気付いていなかった。彼の予想を裏切る事態がもうすぐ側まで近付いている事を…。

それはジェムのみならず青チームの全員にとって、まったく青天の霹靂だった。
ガサガサ…っと草木の揺れる音がしたかと思った…次の瞬間!
「総員!突撃ぃーーーーーっ!!!!」
「「「「わあぁぁーーーーっ!!!!」」」」
青チームの誰もが我が目を疑った。まず目に飛び込んで来たのは真っ赤な旗だった。なんと赤チームの全員が突如として目の前に現れたのだ。
「な…何故だぁ!!?一体どういう事だ!?赤チームは黄色チームの陣地跡に向かっていたはずじゃなかったのかあぁぁ!?」
ジェムは悲鳴にも似た声で叫んだ。タルテバによってもたらされたのは偽情報だったのだ。
「クソォッ!!!謀ったなサーラあぁぁ!!!!」
ジェムは絶叫した。彼が取り乱す所を初めて目にしたという人間も多かった。だがもうそんな事を気にしている余裕は、この場の誰にも無かった。赤チームは全員が脇目も振らずに青旗を目指し、青チームは完全にパニック状態に陥っていた。
その中で咄嗟に我に返ったジェムは傍らの青旗を自ら手に取って高く掲げて叫んだ。
「諸君!狼狽えるな!旗さえ守り通せば良い!旗を死守しろぉ!!そして敵の旗を奪えぇ!!」
「「「お…おぉーっ!!!!」」」
その一声に青チームの面々も冷静さを取り戻し、体制を立て直して応戦する。…が如何せん数が数だ。青チームは三分の一、対する赤チームはほぼ無傷の全員。勝負は見えたかに思われた。
その時、ジェムは見た。混戦乱戦の中、木剣を振るって戦うセイルの姿を…。
彼は旗手ではなかったのか?では旗手は誰だ?
見ると旗手は特に強くもない名も無い生徒だ。そしてその少し後ろで戦いにも参加せず真っ青な顔をしてオドオドしている男が一人…タルテバだ。ジェムは端正な顔を悪鬼のように歪めて怒気を含んだ大声で叫んだ。
「タルテバアァァーッ!!!!赤チームの旗を奪えぇぇ!!!!」
「ひいぃぃっ!!?か…かしこまりましたジェム様ぁ!!!」
タルテバは瞬間ビクンッと身体を震わせたかと思うと旗手に飛びかかった。
「な…何すんだバカ!?お前味方だろ!?」
「う…うるひいぃぃ!!!ジェム様のご命令だぁ!!!俺は出世するんだぁ!!!見返してやるんだあぁ〜!!!!」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す