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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 310

彼女達は、何の罪も犯していない…。
ただ家族がジェムに逆らったというだけ…。
いや、それだってジェムの事…言い掛かりに近い物も多分に含まれているのだろう。
だが…と考える。
彼女達は自分が殺らなくとも、いずれジェムの配下…シャリーヤや白衛兵達の手によって殺される…。
それを考えれば、自分の取るべき行動は、決まっている…。
「……」
アリーは新式銃の前に立ち、右手でグリップを握り締め、左手をハンドルに掛けた。
「おっほぉ…♪」
ジェムは嬉しそうに肩をすくめる。
(このキチ●イめ!!!!)
アリーは心の中でジェムを罵ると目を閉じた。
(アイーシャさん…君を守るそのためならば、僕は悪にだってなってやる!!)
次の瞬間、アリーはカッと目を見開いて叫んだ。
「回転式連射銃、発射ぁっ!!!!」

 ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ…

「ギャアアアァァァァァッ!!!!」
「ア゛ア゛ア゛アアアァァァァァァァァッ!!!?」
「イギャアアアァァァァッ!!!?」
一定のリズムの単調な射撃音と、耳を塞ぎたくなるような凄惨な悲鳴の奇妙なコラボレーションが辺りに響き渡った。
女子供達は、ある者は必死に逃げ回り、またある者は地に伏せ、ある者は諦めたように呆然と立ち尽くし、或いは座り込み、撃たれるのを待ち、ある者は泣き叫び、またある者は狂ったように笑いだした。
「お願いぃぃっ!!!!せめて…せめてこの子だけは助けてえぇぇっ!!!!」
ある一人の母親は泣き叫びながら我が子の命乞いをする。
「うああああぁぁぁぁっ!!!!」
アリーは絶叫して母子を撃ち抜いた。
母子はたちまち蜂の巣になり、抱き合ったままの状態で倒れ伏した。
人々が次々と物言わぬ肉塊へと変わっていく…。
「あ…あぁ…あぁぁ…っ!!!!」
その光景をジェムは驚愕に目を見開いて見入っていた。
「……」
滅多に感情を表に出さないシャリーヤでさえ完全に固まっている。
良く見るとジェムの瞳は少年のように光り輝いている。
次の瞬間、彼は何を思ったかアリーに飛びかかり、彼を突き飛ばして新式銃を奪った。
「ぼ…僕も殺りたい!!アリー!!僕と代われぇ!!!僕にも殺らせろぉ!!!」
「うわっ!?」
アリーは地面に倒れた。
ジェムは生き残っている女子供達に新式銃を向けてニタァ…と笑った。
次の瞬間…
「イヒイイイィィィィィ――――ッ!!!!!」
ジェムは奇声を発して銃を撃ち始めた。
もう既にアリーによって半分以上が撃ち殺されている。
ジェムは生き残った者も屍も構わず撃ちまくった。
「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャーッ!!!!!死ねぇ!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねえぇぇーっ!!!!?」
彼は完全に目がイっていた。
口からは涎を垂らし、その股間は激しく勃起し、精液と小便を漏らしていた。
「「「……」」」
皆は言葉も無く、ただただ黙ってそれを見ている事しか出来なかった…。

…そしてとうとう全弾を撃ち尽くしたジェムは脱力してその場に崩れ落ちた。
「あぁぁ〜…」
「ジェ…ジェム様!?しっかりなさいませ!」
我に返ったシャリーヤが慌ててその体を支える。
的にされた者達の中で生きている者はもう居ない。
ジェムはアリーに言った。
「アリ…いや、ハイヤーム…これは素晴らしい武器…良くやった…褒美に金貨を取らす…これからも僕のためにどんどん新しい発明をしろ…良いな?」
「……」
だが当のアリーはボンヤリと血の海に沈む物言わぬ肉塊と化した人々を見つめていた。

…その後、どうやって研究室まで戻って来たのか、アリーには記憶が無い。
「アリーさん?今までどこに行ってらしたんで…って、どうなさったの!?お顔が真っ青よ!?」
出迎えたアイーシャはアリーの憔悴ぶりに驚いた。
「ア…アイーシャさ…ん……」
アリーは彼女の胸の中に倒れ込むように気を失った。
「アリーさん!?し…しっかりなさって!…誰かぁ!お医者様を…!」

…それからアリーは丸一日以上眠り続けた。
このところ新式銃の研究が大詰めに差し掛かり、あまり寝ていなかった事もあった。
翌日の夕刻、ようやく彼は目覚めた…。
「……うぅ〜ん…?」
「…あ!アリーさん、目が覚めたのね。良かったぁ…」
ベッドの傍に腰掛けていたアイーシャは彼の顔を覗き込み安堵の表情を浮かべる。
「…アイーシャさん…僕は…?」
「昨日いきなり倒れて…それから丸一日も眠ってらしたのよ?お医者様によると過労でしょうって…」
「……」
アリーは思った。
過労?…いや、確かにそれもあるが、直接の原因はそんな物じゃない。
この様子ではアイーシャは何も聞かされていないようだ。
いや、知らなくて良い…と彼は思う。
そんな重い物を彼女が背負う必要は無い。
罪は全て自分一人が負う…。
(僕は…罪無き人々をこの手に掛けた…でもそれによってこの女(ひと)を守れたんだ…アイーシャさん…これからも、僕は君を守るためなら、どんな汚い事だって……)
「…アリーさん?」
何も言わず自分の顔をジッと見詰めたままのアリーにアイーシャは首を傾げる。
「アイーシャさん…!」
「あ……!」
アリーはアイーシャを自分の元へと引き寄せ、そのまま唇を奪った…。
「…ン…ンン…ッ!?…………ア…アリーさん、今はまだ無理しちゃいけないわ…というか、一体どうなさったの?こんな強引に求めて来るなんて…何だかあなたらしくない…」
「“らしくない”か…アイーシャさん、君が知っている僕なんて、僕のほんの表層の一部にしか過ぎないのかも知れないよ…」
「…どういう意味?」
「ごめん、変な事を言ったね…忘れて…今はただ君が欲しい…」
そう言うとアリーはアイーシャをベッドに引き込んだ。

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