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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 304

「なんかヤバそうだな…ちょっと様子を見てくる!」
そう言うが早いか、パサンは娼婦から離れ、下着だけを身に付けて部屋を飛び出したのだった。
「ちょ…ちょっとぉ…!?…もう少しでイけそうだったのにぃ…!」
娼婦の膣からは精液が垂れていた。

「おらぁっ!!」
パサンは隣の部屋に突入した。
「あぁん!?何だテメェは!?」
「…あぁ!!た…助けてぇ!!」
部屋にいたのは…まあ娼館という施設の目的から考慮すれば当然の事ながら…一組の全裸の男と女だった。
だがそのシチュエーションが異常だ。
女の顔や身体のあちこちには殴られた跡があり腫れていた。
「…おい、テメェ…こりゃあ一体どういう事だ?…まさかプレイの一環だなんて言わせねえぞ…」
パサンは静かに、だが怒りを湛えた様子で男に問い掛ける。
「はあ?テメェにゃあ関係ねえだろう!俺はこの雌豚を金で買ったんだ!それをどうしようと俺の勝手だろうが!さっさと出て行きやがれ!」
パサンの目にふと床に脱ぎ散らかされた男の服が目に入る。
ヤヴズ・ザム軍の軍衣だ。
「ふざけんな!!テメェそれでも騎士かぁっ!!」
パサンは男をブン殴った。
「…ぅぐあぁぁっ!!?」
壁まで吹っ飛ぶ男。
「ち…ちくしょう…やりやがったなテメェ!!?」
男は這い上がり、脱ぎ捨ててあった自らの衣服の中から何やらキラリと光る物を取り出した。
短刀だった。
「ぶっ殺す!!!」
「おう!!やれるもんならやってみやがれぇ!!」

…さて、所変わってここはファフラビ軍の幕営地…。
ナスィーム州をヤヴズ・ゼム軍に明け渡した彼らは、州都郊外に陣を敷いて駐留していた。
「…えっ!?風呂に入る!?そんな事をしたら悪化してしまうではないか!?」
「いやいや、ご同役。要は湯冷めせねば良いのだ。熱〜い風呂に入って、そのまま部屋を温かくしてグッスリ眠る…これに限る」
天幕の中、ファフラビと側近達は顔を突き合わせて何やら意味不明な会話に興じていた。
「ハハハ…いや、しかし風邪の治療法一つ取ってみても家それぞれだな」
「左様でございますなぁ…」
「当家には先祖代々、万病に効くという丸薬の製法が伝えられていますが…」
「ほう、それは興味深い…」
「戦地で病に倒れる兵は多い。役に立つかも知れませんなぁ」
「ええ、私もそう思い、先祖の残した古文書に従って作ってみたのですが…」
「ですが…?」
「…先祖の残した秘薬の効能、我が身をもって試してみようと思い…でもちょっとその前に戯れで飼っていた猿に飲ませてみたのです」
「うむ、それでどうなった?」
「泡を吹いて白目を剥いてひっくり返りました」
「……」
「そ…それは…」
「どういう事だ?」
「人と猿では体の作りが違うという事でしょうか?」
「製法を間違えたのでは?」
「それより君は猿を飼っているのか」
「ええ、二代目になります」
「家には犬がいる」
「私は猫派だな」
「み…皆様!!」
若い騎士が声を上げた。
「少し話が脱線気味ではございませんか!?我々は今後の我が軍の方針についての話し合いを…!」
それをファフラビがたしなめる。
「まあまあ、そう熱くなるな。多少は雑談もしなければ、真面目な話ばかりでは息が…詰ま……ハ…ハ…クシュンッ!!!」
「おぉ、思い出しました。将軍のそのクシャミがキッカケで…」
「ああ、それで皆の家では風邪をひいた時どうするかという話題になったのだったなぁ…」
…呑気な連中である。
まあ反乱の鎮定も一段落し、帰れば新たな領地も待っているのだ。
浮かれて気が緩むのも仕方ないと言えば仕方ないが…。

そこへ、そんな浮ついた雰囲気を一気に吹っ飛ばす凶報が舞い込んで来る。
「た…大変でございますぅ!!!」
「どうした?」
「さ…先ほどナスィーム城下にて、我が軍の兵が…ヤヴズ・ゼム軍の兵を……こ…殺してしまいましたぁっ!!!!」
「「「なにいいぃぃぃっ!!!?」」」
その場にいた全員の顔から一瞬で血の気が失せる。
「な…なぜ殺ったぁっ!!!?」
「喧嘩です。仔細は不明ですが、短刀の奪い合いになり、揉み合っている内に相手に刺さってしまったそうで…。刺した当人も殺意は無かったと言っております」
「殺意の有無や、どちらに非があったかなど、もはや関係無い!」
ファフラビは言った。
「私の兵がヤヴズ・ザムの兵を殺したという事実があるだけだ!」
「いかがしましょう将軍?今ここでヤヴズ・ザムの機嫌を損ねるような事になれば…」
「うむ、下手をすると転封の件、取り消しにされるかも知れん。いや、最悪の場合、難癖を付けられて減禄やお取り潰しという可能性も…」
「そんな…っ!?」
「それではせっかくの勝利を譲ってやった意味も何もありません!」
「まったくだ。とにかく今ヤヴズ・ザムとの関係を悪くする訳には断じていかん。あくまで一兵卒同士の諍いで、我々には敵意など微塵も無いという事を誠心誠意アピールするのだ」
「…で、そのためにいかがいたしましょう?」
「簡単な事…その問題を起こした兵士の身柄に幾らかの“付け届け(賄賂)”を付けて差し出せばザムも悪い気はしない…は…ず……クシュンッ!!」
「将軍、やはりお風邪をひかれたようですな」

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