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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 303

「そ…その別働隊の指揮官は、どこぞの輩なのでございますか…?」
部下の一人が溢れ出す殺意を押し殺しきれぬといった声で尋ねる。
「ヤヴズ・ザム…大執政の親類だな」
「「「……っ」」」
予想通りの答えに部下達から嘆息と舌打ちが漏れる。
政治的優位に物を言わせて手柄を横取りする…武門としてあってはならない横暴だ。
「それで…将軍はこの屈辱的な命令に従うおつもりですか…?」
「うむ、従おうと思う」
ファフラビはいともあっさりと答える。
「な…っ!!?」
「気は確かですか!!?」
「誇りは無いのですかぁっ!!!?」
「…まあ落ち着け。この書状によると大執政は“もしこの提案を受け入れてくれるならば、今より良い領地に転封させてやる”との仰せだ。…私は悪い話ではないと思うな。少なくとも田舎の反逆者を討伐したという戦果と引き換えに、今や飛ぶ鳥落とす勢いの大執政サマのお怒りを買うよりはな…」
「「「……」」」
皆は黙った。
名誉と引き換えに増禄してくれるというのならば事情は変わって来る。
結局ファフラビと彼の部下達は、名を捨て実を取る方を選んだ。
もともと王家に仕える一臣下であったヤヴズ家は地方を治める太守達と違い“家臣団”を持っていなかった…ゆえにジェムは自らの権力の地盤固めのために、自分の親族を片っ端から国の重席に就けていった訳だが、当然彼らは何の実績も無く、ゆえに“箔付け”をする必要があったのである。
今回の一見理不尽な命令もその一環だった。
だが結果としてファフラビと彼の臣下達も増禄によって今より豊かになるからWINWINなのである。

これによって最も被害を被ったのは、敗れたナスィーム州だった。
ファフラビから譲られる形で州都を占領したヤヴズ・ザム将軍は、ファフラビのように寛大ではなかった。
彼はまず太守の息子を始め、ナスィーム太守の一族と主だった家臣達を一族郎党、若い女達を残して幼子に至るまで全て処刑した。
死体は埋葬も許さず、城外に野ざらしにして烏や禿鷹や野犬に喰わせた。
女達はというと、自分がたっぷり楽しんだ後で彼の配下の兵士達に与えて慰み物にさせた。
まさに外道の所行である。
そのような男が大将であるから、彼の配下の兵士達の軍紀もまた地を這うが如き低さだった。
ヤヴズ・ザムの兵士達は昼間から酒を飲んで暴れ、我が物顔で街を練り歩き、市民達を威圧した。
略奪・暴行・強姦・殺人…彼らは凡そ思い付く乱暴狼藉の限りを尽くした。
そもそも彼らは戦ってもいないのに…。
…いや、そこの所だけは彼らも良く解っていた。
自分達は棚ボタ…。
占領軍ヅラする資格など本来なら無い…。
その引け目が逆に彼らを強がらせ、より尊大な行動を取らせた。
もう救いようの無い状態であった…。

一方、ザムに一番手柄を譲り二番手に甘んじたファフラビは街の惨状など何処吹く風であった。
もはや彼と彼の部下達の頭には、やがて与えられる新たな領地の事しか無かった。
そのためにもジェムの親戚であるザムとの関係は良好に保っておきたい所だ。
つまらぬ人道主義など発揮して余計な口出しをして、万が一にも増禄の約束を取り消されでもしたりしたら事ではないか。

さて、パサン達は…
「はぁ〜…」
「どうしたパサン?溜め息なんか吐いて」
「だってよぉ、面白くねえだろ。命懸けで戦って敵を打ち破った俺らを差し置いて、後からのこのこ来た連中が一番おいしいとこ持っていっちまいやがったんだからよぉ」
「確かにな…」
兵士達がグチっていると、そこにサラームが現れる。
「おぉ、お前達、ここにいたか」
「「「小隊長殿!!」」」
背筋を伸ばす兵士達にサラームは笑って言った。
「喜べ。さっきイスカンダリア総督閣下から魔信(魔導通信)が入ってな、我らを義勇軍ではなく正規軍として認めると言って来た」
「「「……」」」
兵士達は互いに顔を見合わせる。
「どうした?嬉しくないのか?」
「…いやぁ、ちょっと素直には喜べないっす」
「それって俺達の働きが評価された訳じゃなくて、あの総督サマが反乱軍より国軍の方が優勢だって判断したからでしょう…?」
もしも反乱軍優位な情勢だったら、イスカンダリア総督マリクシャーは平然と彼らを切り捨てていただろう…。
サラームは言う。
「…まあまあ、お前達。総督は今回従軍した者達には特別の恩典を与えると約束してくれたぞ」
「特別の恩典…?」
「一体何ですか?」
サラームはコホンとせき払いして言った。
「…従軍した全員に一階級昇進と賞与(ボーナス)を出すそうだ」
「「「…ぃよっしゃあぁぁっ!!!!」」」

…その晩、パサンと仲間連中は連れ立って夜の街へと繰り出した。
久し振りに良い気分になった彼らは酒場で祝杯を交わし、その後ほろ酔いで娼館を訪れた。
だが、そこで事件は起こった。

…パンッ、パンッ、パンッ、パンッ…

「あっ…あぁん!お…お客さぁん!激しいわぁ!あっ!あっ!…イっちゃう!私イっちゃうのぉ〜!」
「はぁ…はぁ…!俺も…そろそろイキそ…!」
パサンが娼婦を激しく責め立てながら喘がせていると…

 ドタンッ バタンッ
『…ギャーッ…』

…隣室から壁越しに音物が聞こえてきたのだった。
何やら激しく暴れているような音と、女の悲鳴…ただならぬ気配だ。
「「……」」
不穏な空気にパサンと娼婦も黙って顔を見合わせる。

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