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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 296

「そ…そんな事はありませんよ…」
やさぐれたセイルの反応にイーシャも困ってしまう。
そんな彼女の後ろから助け船を出すようにアルトリアの声がした。
「…セイル様、サーラ殿がユーナック殿の事についてお話ししたいそうですよ。腐るのは話を聞いてからでも遅くはないのでは…?」
「はあ…?何だよ、話って…。言い訳や慰めの類なら聞きたくないよ。余計みじめになるだけだし…」
 ピキッ
アルトリアの額に青筋が走った。
「良いから来るんですよ!!」
「うわっ!?ちょっ…お前!襟首引っ張んなよぉ!」
アルトリアは無理矢理セイルをベッドから引っ張り出すと、そのままサーラの執務室へと引きずって行った…。

「……」
「おはよう、セイル君…いえ、もう“こんにちは”かしら…?」
そこには、もちろんサーラがいた。
…と同時に、セイルが今もっとも会いたくない人物、ユーナックもいた。
何が楽しいのか、ニコニコと微笑みながら立っている。
セイルはジト〜ッとした視線で二人を交互に見た。
「…話って何ですか…?」
「えぇと…ユーナック、彼に説明してあげて」
「解ったよ、サーラ」
サーラに促され、ユーナックはセイルに向き直って言った。
「クルアーン・セイル、君には言っておかなきゃね…私とサーラの事…」
「は…はい…」
「実はね…」
ユーナックは一呼吸置いて、そして一気に言いきった。
「…私とサーラは愛し合ってるんだ!結婚の約束もしてる!」
「くわわわわわわわわ…っ!!!!」
おかしくなりかけるセイル。
サーラが叫んだ。
「ユーナック!!悪ふざけも大概にして!」
「わ…悪ふざけ…?」
「ハァ〜…ごめんね、セイル君。今ここでハッキリさせておくわ。私と彼は何でも無い。…私は彼を異性として見なしてないし、彼も私を異性として見てないのよ」
「…そうなの?」
その問いにユーナック自身が答える。
「ん〜、何ていうかね…サーラは私向けじゃないし、私もサーラ向けじゃない…って感じかなぁ…」
「意味が解りません…」
アルトリアが補足する。
「つまりですね…ユーナック殿は男性でありながら女性の心を持っておられるお方なのですよ」
「…え?……ええぇぇぇぇっ!!!?」
一瞬意味が理解出来なかったセイルだったが、次の瞬間仰天した。
ユーナックはウィンクして言う。
「そゆこと♪確かに私とサーラはお互いに心を許し合った仲だけど、それ以上の関係には成りようが無いってワケ♪」
「は…はあ…」
セイルは目を白黒させながらユーナックを見て思った。
(こ…こんなにイケメンでカッコイイのに…中身は……なんか勿体無いような…)
素直な感想であった。
ユーナックはセイルを見て笑みを浮かべて言う。
「…むしろ私的にはセイルの方が好みかも…ウフ♪…あ!今更だけど“セイル”って呼んで良いよね?私の事もユーナックで良いからさ♪」
(聞き捨てならない言葉もあったが)気さくで人懐っこく笑うユーナック…確かにサーラが彼に心を許したのも頷ける。
異性として意識しなくて良い。
かといって同性でもない。
女同士だとまた色々ある。
こういう人だからこそ、他人に対して滅多に心を開かないサーラも全てを打ち明ける事が出来たのではないか。
(悔しいけどユーナックさんには適わない…彼はサーラさんが誰にも触れさせなかった心の中の宝石箱を開く事が出来たんだからね)
セイルは内心でユーナックに負けを認めた。
だがそこにはもう嫉妬や敗北感のような負の感情は無かった。
今は素直に彼を受け入れられる。
きっとこの人が居てくれたからこそ、サーラは辛い時期を乗り切る事が出来たのだ。

サーラはセイルに言った。
「ところでセイル君、アルトリアさんから聞いたんだけど…」
「?…何を?」
「その…右腕の事…」
「あ…!」
城に入ってからセイルはずっと、人前ではマントを羽織って右半身を覆っていた。
別に隠す気は無かったのだが、だからと言って話す気にもなれず、理由を訊かれる事を避けるように何となくそうしていた…。
「アルトリア…話しちゃったのか…」
「申し訳ありません、セイル様…ですがサーラ殿にはセイル様が隻腕となった事実を知る権利と義務があると思いました。それにいつまでも隠し通せる事でもありませんしね…。セイル様に黙ってお話しした事に関してはお詫びいたしますが…」
「…いや、怒ってないよ。むしろ“ありがとう”だ。いずれ話さなきゃいけなかった。きっかけを作ってくれて感謝してる」
そう言って笑うセイルにサーラは言った。
「セイル君…見せてくれない?」
「…え?腕の無くなった所を?…いやぁ、あまり見て気持ちの良い物じゃあ…」
「いいえ、私は見なきゃいけないわ。アルトリアさんも言ってたじゃない。私は見て向き合わなきゃいけないの!あなたが私のために受けた傷とね!」
謎の意気込みにセイルは思う。
(サーラさん、変な方向に頑固になった…?)
アルトリアも思う。
(私は知っておいて欲しいと言っただけで見ろとまでは言っていないのだが…)
「さあ!セイル君!早く!」
「わ…わかったよ、サーラさん……覚悟してね?」
セイルは左手でマントを捲り、服をはだけて自分の身体を見せた。
同年代の少年にしてはやや小柄で細身ながら、脱ぐと以外と筋肉の付いた引き締まった体付き…だが、本来であれば右腕のあるべき場所には何も無い…何とも痛々しい姿だった。
「セイル君…!」
サーラの両目から涙が溢れた。
「サ…サーラさん!泣かないで!確かに腕を失った直後は僕もショックだったけど、すぐに気持ちの整理は付いた!今はもう何とも思ってないから…ね!?」

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