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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 292

「はああぁぁぁっ!!!」
ズバアァッ
「ぐあぁぁっ!!?」
「…ふんっ!!」
ドスッ
「あぎゃあぁぁっ!!!?」
次々と襲い来る敵を斬っては捨て突いては捨て…。
だがやはり多勢に無勢…しばらく経つとセイルとアルトリアに疲れが見え始めた。
「はぁ…はぁ…くっそぉ!キリがないよ!」
「確かに…数が多すぎますね…」
既に二人合わせて五十人は斬ったろうか…だが目の前にはまだ敵が雲霞の如く立ちふさがっている。
セイルは思った。
(やはり僕達二人だけでは…やはり多少の時間は費やしても最寄りの町まで行って、そこの駐留軍に任せるべきだったか…このままじゃあ…)
セイルの頭を死が過ぎった…。

その時、隊長の傍で震えていた裸の女の一人が何を思ったかバッと駆け出した。
戦いの混乱に紛れて逃げようとでもしたのだろう。
だがそれは無駄な抵抗だった。
すぐに隊長に腕を掴まれ捕まってしまった。
「イヤアァ〜ッ!!?」
「テメェこのアマぁ!!逃げようったってそうはいくか!!死ねやあぁっ!!!」
ズバアァッ
「ギャアァァッ!!?」
隊長は即座に女を斬り殺すと、他の女達に向き直って剣を突き付けた。
「テメェら!!少しでも妙な動きしてみやがれ!?コイツと同じ運命が待ってるぜ!!」
「「「キャアァァーッ!!!?」」」
泣き叫ぶ女達。
「見せしめだぁ!!」
隊長はついでとばかりに二、三人の女を一気に斬り捨てた。
「イギャアァァッ!!?」
「ギアァァァッ!!?」
「…ギャハハハハハァッ!!!!どうだあぁっ!!?」
女達の返り血を浴びて狂ったように笑う隊長…彼の股間の逸物は激しく怒張していた。
「…おい…お前…!」
そこへ、低く押し殺した声がした。
セイルだ。
「あぁん?何だガキぃ…?」
「…女性を…斬ったな……まるで戯れのように…人を斬り捨てたなぁっ!!?」
「へへ…ああ、斬った…それがどうしたぁ?」
「…許さない…絶対に……殺すっ!!!!」
「セイル様…!」
その時、アルトリアは見た。
いや、その場にいた全員が目を見張った。
セイルの構えた聖剣の刀身が光り輝き始めたのだ。
いや、良く見れば小さな小さな光の粒が空中から、あるいは地中から生まれ出でて聖剣に集まっているのだ。
どこか青みを帯びたその光は、水を連想させた。
「こ…これは…っ!?」
セイル自身、その現象に驚く。
アルトリアは言った。
「セイル様!いま聖剣は大気中や土中の水分を集めているのです!」
「す…水分!? 水か!?」
「そうです!ルーナの聖剣は海神より授かりし“水の聖剣”…水を自在に操り敵を屠る…それこそがこの剣の真の力なのです!」
「水を操る…だって!? 一体どうすれば良いんだ!?」
「目を閉じてください!そして心の耳を澄ますのです!聖剣があなたを導いてくれましょう!」
「ま…またそんな抽象的な事を…くっ!」
セイルは目をつぶり、心を落ち着かせるべく深く深呼吸した。
それを見た兵士達。
「な…何だコイツ…!?」
「いわゆる大技を繰り出す前の精神統一ってヤツか?」
「んなもん待ってやる義理なんて無え!殺っちまえぇーっ!!」
「「「うおぉぉっ!!!!」」」
剣を振り上げて一斉にセイルに斬りかかった。
だが次の瞬間、セイルはカッと目を見開くと、勢い良く聖剣を横に凪ぎ払った。
「はああぁぁぁっ!!!!」
するとどうだろう。
剣の軌跡から鋭利な透明の刃(やいば)…水の刃が出現し、兵士達の身体を斬り裂いた。
「「「…ッ!!!?」」」
悲鳴を上げる間も無く絶命する兵士達。
三百余の兵は一瞬にして物言わぬ肉塊と化した。
一人、洞窟の一番奥にいた隊長だけが水の刃を逃れて生き残った。
「…あ…あぁ…な…何じゃこりゃあぁぁっ!!!?」
隊長は絶叫する。
セイルはゆっくりと歩み寄った。
「ひいいぃぃぃっ!!!?ば…化け物ぉ!!!…来るな!!!来るなあぁぁ!!!」
腰を抜かして尻餅を付きながら後ずさる隊長。
ガタガタと震える手で剣をセイルに向ける。
「……」
セイルは何も言わずにその剣を聖剣で弾き飛ばした。
「イヒイィィッ!!!?」
隊長は子供のように泣きじゃくりながらセイルの前にひれ伏して哀願し始めた。
「た…頼むうぅ!!!助けてくれえぇ!!!俺には故郷に妻と七歳になる息子がいるんだよおぉ!!!俺達だって何も好きで盗賊に成り下がった訳じゃない…生きたかったんだ!!!帰りたかったんだあぁぁっ!!!!」
「…参ったな…」
セイルはポツリとつぶやく。
アルトリアが歩み寄って来て尋ねた。
「セイル様、いかがいたしますか?もうこの男一人を生かそうが殺そうが影響は無いと思いますが…」
「あぁ…駄目だ…何か、この男の話を聞いてたら、殺すのが可哀想になってきちゃったよ…」
そう言ってセイルは剣を鞘に収めた。
「あ…あぁ…っ!!あ…ありがとうございます!!!ありがとうございます!!!」
隊長は額を地に擦り付けるように頭を下げながらセイルに何度も何度も礼を言った。
セイルはそれに対して何も答えず、苦々しげな表情で女達の方を見て言った。
「すいません、皆さん。僕は彼を殺せませんので…あとは皆さんの方で ど う ぞ ご 自 由 に 」
「…え…?」
隊長の表情が一瞬で凍り付く。
「「「……」」」
女達はそこらに転がる死体から武器を取ると、隊長を取り囲む。
「……」
隊長は地獄の扉が開かれた事を悟った…。

…その後“耳を閉ざしたくなるような凄惨な悲鳴”が小一時間にも渡って洞窟内に響き渡り続けたが詳細な描写は省く。
セイルとアルトリアの連絡を受けた近くの町の守備隊が洞窟に駆け付けたのは二時間後の事だった…。

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