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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 30


「なぁ、タルテバぁ…」
「何すか?ドルフさん…」
陣地の片隅ではドルフとタルテバが小声で何やら話している。
「俺ら何でこのチームなんだよ?ぶっちゃけ全然楽しくねぇんだけど…」
「まあまあ、僕らは“重大な使命”を帯びてこの赤チームに身を置いてるんですから…それを忘れちゃあいけませんよ」
「でもよぉ、それで俺らが働いたって結局得すんのはジェ…」
「シッ!その名前を出しちゃダメです。確かに面白くはありませんが、あのセイルの野郎にも一泡吹かせてやれるんですよ?僕はヤツの狼狽する顔が見られると想像するだけで楽しみですけどねぇ…クックック」
(こいつ暗ぇ…あ〜あ、どうせならセイルやパサンと違うチームになって思いっきり剣で戦ってみたかったぜ)
そう思いながらドルフは木剣の柄をギュッと握り締める。
二人とも性根の曲がった性格ながら、ドルフの方がカラッとした気性のようだ…。

「では、黄色チームと緑チームは旗を何者かに奪われ自滅したのですか?」
ドルフとタルテバが良からぬ事を企んでるのを気づいてないサーラは斥候から帰ったパサンたちの報告を聞いていた。
「そうなんですよ。黄色と緑の連中の狼狽振りや旗が無いのを見る限り、誰かに旗は盗まれたようです」
「では、最悪の事態に備えて旗の周辺に何名か見張りをつけた方が良いわね」
「サーラ姫、それが賢明ですね」
パサンの報告にサーラは旗に見張りを付けた方が良いと考えアリーも同意する。
「僕もそれが良いと思います。でも、勝負に勝つ為だからって、旗を盗むなんて卑怯です!!」
セイルも見張りを付けるのに納得するが、旗を盗んで労せず勝ちを得るやり方を怒りを感じていた。
基本的にセイルは温和で気弱なへたれ男であるが、祖父ウマルの影響の為か、人を騙したり嘘を非常に嫌っていた。
(セイル様、その御心は立派です。でも、聖剣の勇者として数々の困難と戦うには脆いですね)
森の中でセイルたちの様子をみているアルトリアは主セイルの正義感を立派だと思う反面、彼の生真面目さの危うさを感じていた。

サーラは少し考えてから口を開いた。
「…皆さん、実は私に一つ提案があるのですが…」
「何ですか?」
「はい、この陣地を捨てて別な地点に移動しようと思うんです」
「「「えぇ…っ!!?」」」
突然の発案に皆は面食らった。しかし陣地を移動させてはいけないという決まりは無く、また特に珍しい事でもなかった。
「サーラ様の行く所へなら、どこへだって付いて行きますよ〜!!」
真っ先に手を上げたパサン(大した考え無し)を制してアリーが尋ねる。
「し…しかし、移動と言っても一体どこへ行くんですか?」
この場所は確かに目立つが、守り易く攻め難い地形でもある。そんな都合の良い場所はこのフィールド広しと言えどもなかなか無い…。サーラは言った。
「案ずる事はありません。緑と黄色が陣地として使用していた場所が空いたでしょう。そのどちらかを私達の新たな陣地として使わせてもらいます」
「なるほど…その手がありましたね」
感心したセイルはポンと手を打った。
だが話を聞いていたアルトリアは思う。
(馬鹿な…確かに敵の目に付き易いというのは大きな難点かも知れないが、その点を補って余りある程にこの場所は守りに適した要所だ。そこを捨てて陣を移すとは…しかも既に敗れたチームの使用していた場所へだと?そこの地勢は既に青チームによって完全に把握されているはず…しかも移動中に襲撃される危険性を考えれば余りにも冒すリスクに大して利点が少なすぎる…そんな事をするぐらいなら当初の方針通りこの場に踏みとどまって守りを固めていた方が遥かに良い…)
そこまで考えてアルトリアはフッと溜め息を吐いた。
(サーラ姫…聡明な人物と思っていたが、どうやら私の眼鏡違いだったか…)
あるいは…とも思う。狙いが別の点にあるのだとすれば…。確かに戦術面では大変な危険が伴うが、やってみる価値はある…いや、やらねばならない事だ。
そして赤チームは移動を始めた。

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