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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 29

「まったくだ。まあ、ああいう柔軟性の無いヤツは生き残れずに消えていく定めだよ…」
…と言い終わらない内に黄色チームのリーダー以下20名は眩い光に包まれて消えてしまった。
「「「な…っ!!!?」」」
緑チームは全員が我が目を疑った。
魔鳥の声が響き渡る。
『黄色チーム、敗北!』
緑チームはパニック状態に陥った。
「い…一体どういう事だ!?」
「きっと旗を奪われたんだ!」
「やっぱり白チームが…!」
「いや、赤チームの別働隊に見つかったのかも…!」
リーダーは叫んだ。
「どっちだって良い!とりあえず本陣に引き返すぞ!旗が心配だ!」
赤の陣地に向けて移動していた緑チームは大慌てで反転して、自陣へと急いだ。
しかしその途中…
『緑チーム、敗北!』
「そ…そんなぁ…っ!!」
結局、緑チームの面々は自分達を倒した相手が誰なのかすら分からないまま退場していった…。


一方…
「ジェム様、ただいま戻りました…」
「ご苦労だった、シャリーヤ。で、成果は…?」
…ここ青チームの陣地では、ちょうど10名前後から成る部隊が“目的”を達成して帰還した所だった。
部隊を率いていたのはシャリーヤと呼ばれた、どことなくミステリアスな雰囲気を持つ美少女だ。
彼女はジェムの片腕とでも言うべき存在だった。
誰からも好かれているジェムのファンの女子は多いが、彼女アブシル・シャリーヤの場合は“臣下”としてジェムに忠誠を誓っていた。
何の事は無い。彼女の実家アブシル家がジェムの実家ヤヴズ家の臣下なのだ。
ただ、このシャリーヤに関して言えば個人的にもジェムに心酔し、心からの忠誠を誓っていた。

「どうぞ…」
ジェムの前に片膝を付いて頭を垂れ、何やら差し出すシャリーヤ。
その手には黄と緑の二本の旗がしっかりと握られていた。
「良くやってくれたね、シャリーヤ。これでチーム数も減って大分すっきりしたよ」
満足げにうなずくジェム。
もうお分かりであろう。
黄色と緑の本陣を騙し討ちしたのはこの男である。
もともと彼は赤チーム以外のチームは眼中に無かった。
対赤チーム同盟案を持ち出したのは最初から“余計”なチームを排除するためだった。
「…しかし白チームが残ったのは予想外だったな…白のリーダーは何と言う男だったかな?」
「アル・ディーンという中級貴族の子息でございます…」
「アル・ディーンか…確かアル家は代々辺境の領地を治めて来た太守だったな。なかなか見込みのありそうなヤツだ。覚えておこう…」
こうしてジェムの要注意人物リスト(セイルやサーラも名を連ねている)に新たな名が加わったのであった。

その頃、白チームの本陣では…
「そうか…まさか罠だったとは…やはり加担せずに正解だった。それにしてもヤヴズ・ジェム…卑劣な手を使うものだ…」
…斥候からの報告を受けながら静かで穏やかな…しかし怒りと軽蔑の響きを帯びた口調で語る男がいた。
背丈は他の生徒達よりも頭一つ以上大きいが、体格も良いので背高ノッポというイメージは無い。
服の上からでも判る筋肉質で大柄な少年だが、その顔を良く見ると円(つぶ)らで優しそうな瞳をしている…彼こそ白チームのリーダー、アル・ディーンであった。
「どうします?ディーンさん、赤と同盟を組んで青を攻めますか?」
参謀役と思しき少女がディーンに歩み寄り提案する。
「…いや、ファティマ。我々は動かん。もう少し様子を見る。黙したまま事態を見守り続け、ここぞという時に一気に攻める。それまではテコでも動かん」
「ハァ…そう言うと思ってましたよ」
ファティマと呼ばれた少女は溜め息混じりに肩をすくめた。
だがその表情は嫌ではなさそうで、ディーンの事を信頼しているようだった。
ジェムとシャリーヤが君臣だとすれば、こちらは長年連れ添った夫婦のような雰囲気を醸し出している。
事実、この二人は幼少の頃からの付き合いなのだが、それはまた別の機会に詳述するとして、とにもかくにも白チームは引き続き沈黙を守る選択をしたのだった。


その頃、我らがセイルの所属する赤チームでは…
「たっだいまぁ〜!」
パサンら斥候に出ていたメンバーが帰還を果たした所だった。
「皆さん、ご苦労様でした」
「はい、サーラ様!このフェラーハ・パサン、あなた様のためにやり遂げて参りました!」
労をねぎらうサーラにパサンは胸を張って一枚の紙片を差し出した。
他チームの陣容が示された地図が描かれている。
パサンは言った。
「…とはいえ、せっかく全チームの詳細調べて回ったのに、いきなり黄色と緑が脱落ッスからねぇ…骨折り損も良いとこッスよ…」
「いいえ、無駄ではありません。既に脱落したチームの情報からも、得る物は少なからずあります。これは私達にとって本当に貴重な情報です。皆さんは本当に良くやってくれました。感謝していますよ」
そう言ってニッコリと微笑むサーラにパサン達斥候部隊の面々は気恥ずかしそうに照れ笑いした。

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