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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 288


正直、ライラは聖剣欲しさに適当な事を言っているのでは?…という疑惑がセイルの中に無いと言えば嘘になる。
でも、今の彼には彼女を信じて健気に師事するしか無かった。

…そして、その期待は裏切られる事は無かった。
ライラが教え始めるとセイルは彼女の言った通り“突きメイン・スピード重視”で本当にメキメキ強くなっていったのであった。
それはセイル自身が実感として感じる程の成長ぶりであった。

特訓2日目…
「…はぁっ!!やあぁっ!!」

 キィンッ! キイィンッ!!

「…良いぞ!セイル君!そうだ!踏み込んで来い!!」
「たあぁぁーっ!!!」
セイルはライラの胸元に向けて真っ直ぐに剣を突き出す。

 キイィィンッ!!!

だが、彼の剣はまたもライラに弾かれた。
今回は何とか手放しこそしなかったものの、喉元にはライラの剣先が突き付けられている。
「ま…参りました、先生…」
「…うむ」
ライラは頷いて剣を引いた。
「…また負けた…」
「でも成長してるよ、君。自信持ちなって〜♪…だいたい私の記憶にある君は、相手の攻撃を跳ね返したら一歩後ろに下がる子だった。せっかく相手の攻撃を防いで生まれた反撃の機会をみすみす相手に渡してしまって…で、最後に試合場の端に追い詰められて負け…。でも今の君は違う。何て言うか、積極的になったよ。…ま、そういう風に教えたんだけどね。とにかく君は着実に成長してるよ」
「…でも現実問題、まだ先生から一本も取れてないんですが…」
「なあに、まだ一日ある。これからさ〜♪」

そんな二人を遠巻きに眺めながら、アルトリアは何やら考えていた。
(セイル様は本気で変わろうとしている…ならば私もセイル様の剣として出来る限りの事をしよう…)

その夜…
「セイル様、聖剣を少しお貸し願えますか?」
「?…良いよ。何すんの?」
「聖剣は両手持ち剣…今のあなたのスタイルでは扱いづらいでしょう…」
「あぁ〜、確かに…でもしょうがないよ。元々こうだったんだから…」
「…いえ、何とか出来るのですよ」
そう言うとアルトリアは聖剣を鞘に収めたまま床に置き、その上に両手をかざして何やら呪文のような物を唱え始めた。
「…レー・ワカ…レー・ワカ…ティ・ターカ…ムーケイセ…聖剣よ、主に応じ、その姿を変えよ…っ!!」
「な…っ!!?」
次の瞬間、聖剣の置かれた床の周りに光り輝く魔法陣が浮かび上がり、聖剣自体もまた眩い光を放ち始めた。
「ア…アルトリア!!これは…!?」
「話し掛けないでください!!ここから集中しないといけないんです!!」
「すいません!!」

…数分後、部屋中を満たしていた光が収まった。
「い…一体何だった……あぁぁっ!!!?」
セイルは仰天した。
聖剣が…片手剣になっていたのだ。
元は、両手で持つための長い柄に、割と幅の広い刃を持つ、全体的に重たげな印象の剣だったが…。
いま目の前にあるのは、細身で柄の部分も短く、オマケに護拳まで付いている、見事な片手剣であった。
アルトリアはというと、長距離走完走した後のようにグッタリしている。
「はぁ…はぁ…これ、けっこう疲れるんですよね…」
「凄いよアルトリア!!!!」
「はぁ…はぁ…これで、勝率が多少は上がると…思います…後はセイル様の…努力次第です…」
「ありがとうアルトリア!僕は絶対にライラ先生に勝ってみせるよ。それと、何で先生が力に溺れているのか…ぼくは原因を突き止めてみせるよ!」
自分の為に聖剣ルーナを片手剣にしてくれたアルトリアの想いを受け止めたセイルはライラに勝つ事を誓う。
そして、あの優しかったライラが力と狂気に魅入られてるのかセイルは究明することを決意する。
感動するアルトリアは何故か根拠は無かったのに今のセイルならば、ライラに勝てると確信する。
「セイル様、その意気です!(隻腕になった時は絶望的だったが、今は心が死んでない寧ろ力強く生き生きとしている。これならば、あのライラに勝てるかもしれん!)」
「ありがとうアルトリア。君のおかげで勇気が沸いて来たよ。明日こそ君に報いるためにもライラ先生に見事一本とって見せるよ!」
「御武運をお祈りしてます…すいません、力を少し使いすぎたので寝かせてもらいます…スースースー」
「本当にありがとう。こんな情けない僕のために尽くしてくれて…僕がもっとしっかりしてたら、こんな苦労することなかったのに…(もっと君の言うことを素直に聞くべきでった…ジェムの悪政は僕にも非がある)」
聖剣ルーナを片手剣にするために魔力を相当使い果たし、ぐったりと泥のように眠ったアルトリアをセイルは謝罪する。
また、ジェムの暗殺をアルトリアが進言したとき、それを退けさせた自分の甘さや愚かさを呪うセイルは自分を責める。
こんなドジで愚図で臆病でヘタレな自分を何時も支えてくれるアルトリアに自分は迷惑ばかりかけてることをセイルは恥じるだけであった。

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