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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 287

「へえ〜、君は人のためなら勇気を出せるのに、自分の事は優柔不断で気弱なヘタレだった…そんな君がこの提案をアッサリ呑むとは驚いたよ。まあ〜私は君の命と聖剣がいただければ文句ないよ。何しろ聖剣の持ち主は絶大な権力を得られると言われてるからね〜。あのゼノン帝国の始祖ディオン大帝しかり、我が国の始祖イルシャ・ルーナ女王しかり、歴史上聖剣を得た者は常に絶大な力を与えられてきた。はっはっはっはっ!」
「ラッライラ先生(力って何だ…人を狂わせるだけじゃないか…)」
豪快に笑い出すライラの姿に彼女は力を溺れ振り回され自分を見失うんじゃないかとセイルは考える。


ちなみに聖剣を手に入れた者には絶大な権力が与えられるなんて事は、もちろん無い。
過去の聖剣の勇者達がたまたま皇帝や女王になった事から、そういう誤った俗説が生まれたのだ。
そもそも聖霊が勇者と認めた者でなければ聖剣を手に入れても抜く事さえ出来ないのだから話にならない。

アルトリアはセイルに言った。
「セイル様!気は確かですか!?そんな約束をしてしまっては…!」
「…アルトリア!」
セイルはアルトリアの顔の前に左手を突き出して彼女を制した。
「…君の言いたい事は解る…でも良いんだ!それぐらい過酷な状況に自分を追い込まなければ、僕は本当に変わる事は出来ない!」
「セイル様…(…何か以前にもこんな事があったような無かったような…ほんと、どうしてこの人は自分を追い込みたがるんだ!?マゾか!?マゾなのか!?)」


そして、翌日からセイルの“修行”が幕を開けた…。
「…では始めようか、セイル君。練習用の木剣なんて気の利いた物は無いので真剣でいくよ。油断したらケガどころじゃあ済まないからね」
「望む所です!」
「とりあえず今の君の力が知りたい。掛かって来なさい」
「え…」
いきなり掛かって来いと言われてセイルは戸惑う。
片手で戦う方法が解らないから教えて貰おうと思っているのに…。
そんなセイルにライラはニヤァ…と笑って言った。
「ほらぁ…どうした?君の大好きなお祖父さんを殺したのは私だよ?」
「…っ!!?」
次の瞬間、セイルの目付きが変わった。
「…うわああぁぁぁっ!!!!」
絶叫しながら左手で聖剣を抜き、全力でライラに斬りかかる。

 キイィンッ!!!

ライラの剣が聖剣を受け流した。
ちなみに彼女もセイルに合わせて片手持ちだ。
「…はぁっ!!たぁっ!!やあぁーっ!!!」

キィンッ!キィンッ!キイィンッ!!

「…ほっ…はっ…ふんっ…なぁ〜るほど…これが今の君の全力かぁ…」
怒りに燃えたセイルは物凄い勢いで次々と“突き”や“払い”を繰り出すが、ライラはその全てを軽く受け流していく…。
「…よし、解った!もう良いよ」
 キイィーンッ!!!
「あ…」
終いにセイルは剣を弾き飛ばされてしまった。
剣はクルクルと回転しながら空を舞い、遥か後方の地面に突き刺さった。
「……」
セイルは言葉も無い。
圧倒的な実力差を見せ付けられたのだ。
しかも向こうも片手なのにも関わらず…である。
(…どうしよう…僕、三日後にお祖父様の後を追う線が濃厚になって来たかも…)
そんなセイルの心を知ってか知らずか、ライラは冷静にセイルの今の力を分析する。
「ふむ…やはり片手なので力に劣るか…おまけに利き手じゃない方の手だから勝手が上手くいかない…」
ライラは暫くブツブツ言っていたが、やがて顔を上げて言った。
「…よし、決めた。セイル君、君の新しい戦闘スタイルは“突き技メインでスピード重視”だ!」
「は、はあ…」
「…なに?ひょっとしてもう自信無くしてんの?君…」
「そ…そんな事無いです!…えぇっと…“攻めは控えてガードを固める”でしたっけ?」
「そりゃあ君の生き方だ。人の話を聞け。…今の君は片手で力が無い上に、利き手じゃないので小手先の技などが使えない…つまり鍔競り合い状態からチョチョイと相手の剣を絡め取るとか…そういう細かいのは無理な訳…ゆえに繰り出せる技は“突き”や“払い”など基本的な物になってしまう」
「も…元々そういう細々(こまごま)したのは得意ではありませんでしたが……でも、そうですね…今の僕はそこまで制約されてしまってるんですよね…」
「…てゆうか鍔競り合いになった時点でもうダメ。特に相手が両手持ちだった場合だけど、力の無い君では耐えきれない。剣と剣が触れ合う事すら極力避けた方が良いね。ぶつかり合ったら君の方が弾き飛ばされちゃうよ。さっきみたいに…」
「…何て事だ…僕は本当に何も出来ないんですね…文字通り“無力”って訳か…」
「だ・か・ら!…突き中心で素早く動けって言ったでしょう。突くなら剣と剣がぶつかり合う事も少ない。敵が動く前に相手の懐に飛び込み、突く!…これしか今の君に勝機は無い」
「か…簡単に言ってくれますけど…それって僕の今までの戦闘スタイルと真逆じゃあ…?」
「だから、それをこれから教えてあげるんじゃないか。大丈夫!君なら三日でマスター出来るよ!実技落第生だった君を無事に中等科に進学させてあげた私を信用しなさいって♪」
「わ…解りました!先生を信じます!」

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