PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 26
 28
の最後へ

剣の主 28

「いてて…セイルぅ、もう少し手加減しろよ〜」
「ご…ごめん、ラード。つい本気になっちゃって…」
セイルにひっ叩かれた隊長は、それでも頭をさすりながら笑っている。これが実戦なら死んでいた所だが…。
すると次の瞬間、彼の体は一瞬まばゆい光を放って消えた。転移魔術で騎士学校に転送されたのだ。“死亡”したからである。
「た、隊長がやられたぁ!」
「どうする!?」
「じゃあ一旦退くか」
「そうしよそうしよ」
指揮を取る人間がいなくなってしまった緑チームの奇襲部隊は引き上げていった。
「「「やったあぁぁーっ!!!!」」」
赤チームの面々から歓声が上がる。
「セイル君、良くやってくれたわ」
「いやぁ〜、それ程の事では…」
サーラに誉められ、セイルは照れ臭そうにポリポリと頭を掻きながら言った。
「謙遜するなセイル、お陰で出だしは幸先が良いぞ」
「ああ、このままの勢いでいくぞ!!」
予想外の活躍をして照れるセイルをクラスメートたちから賞賛する。

(ケッ面白くねえ!!どいつもこいつも、セイル、セイルってうざえ!!)
(本当ですね〜雑魚セイルの分際で生意気ですよ!)
しかし、クラスメイトたちの賞賛とは異なり陣地の角でセイルの活躍を妬むのがいた。
それはセイルを陥れようとしたドルフとタルテバの二人組みであった。

二人もサーラ率いる赤チームのメンバーだ。
退学処分こそ免れたものの、彼らはあの追試験騒動以来すっかり学内での立場を失い(元からあまり好かれていなかった事もあって)今や誰からも相手にされなくなっていた。
そしてその胸の内で益々セイルやサーラらに対する憎悪と嫉妬をムラムラと肥大化させていたのである。
そんな人間達を同じチームにするなどとは、チーム編成を行った教師達に明らかに悪意があったとしか思えない。
あるいは、第三者の介入があったか……。


赤チーム攻略に失敗した緑チームの奇襲隊は森の中に設けられた自分達の陣地に戻って来た。
リーダーが彼らを迎えて言う。
「ご苦労さん。その様子じゃ赤チームの旗は奪えなかったようだな」
「ああ、パサンはいなかったがセイルがいた。こっちの損害はラード他3人だ」
「そうか…まあ良い。あいつらの仇は取る。本陣に最低限の人員だけを残し、全員出撃準備だ!赤チームを叩き潰す!」
「血迷ったか!?赤チームを攻めてる間に他チームに本陣を攻められたら終わりじゃないか!」
「その心配は不要だ」
リーダーはニッと笑って言った。
「実はな、さっき青と白と黄と緑の間で『赤を潰すまでは相互不可侵』という合意がなされた。何せ赤チームはサーラ姫、パサン、ドルフ、セイルと強豪揃い…ま、ドルフは事実上戦力外だがな。あいつはサーラ姫の下でチームに貢献する気は無いよ。…いずれにせよ赤チームは他の全チームにとって脅威なんだ。それを除くまでは我々は仲間だ。これから全チーム総力を挙げて赤チームの本陣を攻める」
「なるほど、凄い作戦じゃないか!それを最初に提唱したのは一体どのチームなんだ?」
「青チームだ」
「青チーム…ジェムの率いるチームだな。さすがジェム、考える事が違うぜ」
「ああ、しかもそれを実現させる実行力があいつにはある。天性のリーダーの器なのかも知れん」
「カリスマってやつだな。その敵になっちまった赤チームは哀れなもんだぜ…はははは!」
「ああ、まさに獅子に狙われた兎だ…わははは!」

…だが、彼らは気付いていなかった。獅子が本当に狙っているのが誰なのかを…。


緑チームは僅かな人数を本陣に残し、全軍を挙げて赤チーム攻略に出撃した。
その途中で黄色チームと遭遇する。彼らもまた総力戦の構えだ。
もちろん戦闘にはならない。赤チームを倒すまでは味方なのだ。
緑のリーダーは黄色のリーダーに言う。
「きっと今ごろ青と白の部隊も赤の本陣に向かって移動してる頃だろうな。ふふふ…ヤツラの慌てふためく顔が目に浮かぶぜ。ま、サーラ様の事を思うと少し胸が痛むがな…これも戦争だ。わはははは」
「いや、それがどうも白チームは部隊を出さないらしい」
「は!?どうして!?」
「それが…白のリーダー曰わく、皆で共謀して一チームを叩くような卑怯な真似はしたくないと…」
「マズいぞ!いま緑、青、黄の本陣はほぼカラだ!それが白チームの狙いじゃないのか!?」
「いや、白チームのリーダーのアル・ディーンは本当にそういう卑怯な真似を嫌う男だ。留守中に攻められる心配は無いと思う…」
「そうか…まあ白が抜けたのは痛いが戦力的には充分だろう。しかし赤チーム攻略に参加しないという事は自動的に次の標的決定だぜ。卑怯な事しないっていう意志は評価するが、はっきり言って自殺行為だな」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す