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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 279

少々危険な場所ではあるが、サーラに関する情報を得て今の事態を打開をはかるにはこれしかなかった。
それにセイルが宿で休んでいるのは非常に好都合であった。
もし、連れて行けば変にびびって悪党どもに漬け込まれたり情報屋に足元をみられるのでアルトリアはセイルを宿に残したのである。

「ふう〜やっぱりセイルさまを連れてこなくて正解だ…正直言って、あんな脆弱で情けない方の剣でいる自信がない…」
宿を出て、セイルのお守りを必要してないことに解放感に包まれるアルトリアは最近のセイルに苛立ちを感じていた。
今回の逃亡でもウマルやウズマの手助けでなんとか成功できたが、何時までたっても成長しないセイルのへたれさにアルトリアは苛立ちを感じていた。
「これでは八つ当たりだな…さてと、まずはこの大きな酒場へ情報収集でもするか…(セイルさまのメンタルは普通の人間。勇者として大成するには時間がかかるんだ。投げては駄目だ…)」
しかし、思い通りにならない状況をセイルのせいにするのは間違いだと悟るアルトリアはじっくりセイルを勇者として育てていくことを決意すると。
情報収集のために目の前にある大きな酒場に入った。

「いらっしゃ〜い!」
酒場の中は賑わっていた。
肌も露わなセクシーな衣装に身を包んだ給仕達がせわしなく動き回っている。
アルトリアは真っ直ぐにカウンター席を目指した。
「おぉ、イイ女だなぁ〜。俺らと一緒に呑もうぜぇ〜」
ガラの良くない連中のテーブルの横を通り過ぎようとした時だ。
一人の男がアルトリアの手をガシッと掴んだ。
「…おい、離せ」
「つれねえ事言うなよぉ〜」
男達は席を立ってアルトリアを取り囲む。
「……悪いが邪魔だ。どいてくれないか」
「へへへ…固え事言うなよ〜」
「俺らと良い事しようぜぇ!」
「よっしゃあ!ひんむいちまえぇ〜!」
男達はアルトリアを取り押さえ、彼女の服に手をかけた。
次の瞬間…
 ボキッ
「いぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
一人の男が絶叫して床に転がった。
見ると彼の指は全て有り得ない方向に曲がっている。
「テ…テメェ!!やりやがったなぁ!?」
「んのアマぁ!!調子に乗るんじゃねえぇぇ!!」
男達は懐から短剣を取り出すと、一斉にアルトリアに襲いかかった。
「……」
アルトリアも剣を抜き応戦する。
彼女が舞うように剣を振るうと、たちまちの内に男達の首が床に転がった。
「「「キャアアァァァァッ!!!!」」」
女達の悲鳴が響いた。
「ふぅ…」
アルトリアは物憂げに溜め息を吐くと剣を収めてカウンター席に腰掛けた。
「お…驚きましたぁ…お強いんですねぇ…」
バーテンが恐る恐るといった様子で声を掛ける。
「…だがアルムルク・ライラには及ばなかった…」
「はあ…?」
「…いや、こちらの話だ。気にしないでくれ。それより店内を騒がせてしまって済まなかったな」
「お気になさらず。最近この街でも治安が悪化して殺し合いなんて日常茶飯事ですから…」
「そうか」
「ご注文は?」
「酒ではないのだ。情報が欲しい」
「どのような…?」
「……」
アルトリアは周りをサッと見回して声を潜めて言った。
「…サーラ王女の現状について、出来るだけ詳しく知りたい」

その頃、セイルは部屋で休んでいた。
「はぁ…こんな調子で本当にサーラさんの元まで無事に行けるんだろうか…」
ベッドに寝ころんで天井を見上げ、一人ポツリとつぶやいてから、思い直して首を振る。
「いけない、いけない!弱気になっちゃダメだ。どんな事があろうと前に進むって決めたじゃないか!」
自分で両頬をピシャリと叩く。
その時、腕に受けた傷がズキリと痛んだ。
(…う!?な…何だ?かすり傷だったはずなのに…まだ完全に治ってないのかな…また母様がくれた膏薬を塗るか…)
セイルは薬の入った袋の口を開けた。
一緒に入っている短刀と手鏡が見える。
セイルは鏡を見て、ふと思った。
(…ミレルはどうしてこの鏡を僕に託したんだろう…)
自分の一番大切な物だからセイルに持っていてもらいたかった…?
だがこの魔法の鏡の中に収められているのは、ミレルの産みの母であるシャハーン王妃が娘であるミレルに当てたメッセージだ。
それをセイルが貰っても正直、扱いに困る…。
セイルは以前、ほんの僅かに見たシャハーンの姿を思い出した。
美しい女性だった。

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