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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 278

「さぁ!セイル様もお早く!」
「お早く!…って簡単に言うなよ!!屋根と屋根の間、ちょっとした距離じゃねえか!!」
セイルが躊躇っていると、兵士達も窓から出て来た。
「逃がさんぞ!!クルアーン・セイル!!」
「えぇい…ままよ!!うわあぁぁ〜っ!!!!」
セイルは助走を付けて、跳んだ。
だが…
(あ…やばい…ギリギリとどかないわコレ…)
彼は空中で悟った。
(あぁ…二階から落ちたら…骨…折るだろうなぁ…)
その後ジェムの元に連れて行かれて…たぶん、死刑か、それ以上に辛い刑罰が待っているだろう。
(それは嫌だ!!!!)
セイルはカッと目を見開いた。
「うおおぉぉぉっ!!!!こんな所で終わってたまるかあぁぁ!!!!」
空中で必死にぐるぐる手を回すセイル。
そんな行為がどれだけの意味があるというのか…翼でもあるまいし…結局わずかな空気抵抗すら生まなかった。
だが…
「…っ!!!」
 ガシィッ!!!!
意外な効果…振り回した手の片方が偶然にも屋根の縁を掴んでセイルはぶら下がった。
「セイル様!!」
アルトリアがセイルに手を差し伸べる。
「…ああ!!」
 ガシィッ!!!
セイルは空いている方の手で彼女の手を握った。
「…ふんっ!!!!」
アルトリアはそのままセイルを屋根の上へと引き上げる。
「助かったよ!!」
「それよりセイル様、運が良いですよ!この建物は馬屋です!馬を奪って逃げましょう!」
「ぬ…盗むのか!?」
「舟だって盗んだんです!今さら何を躊躇いますか!後で謝って返せば良いですよ!」
「…そうだね!」

そうこうしている間に兵士達がこちらへ向かって走って来た。
「待てぇ〜!!!」
「逃がさんぞぉ!!!」
だが、彼らが馬屋の前に辿り着いた途端…
 バアァーンッ!!!!
「ヒヒイィ〜ンッ!!!!」
「「うああぁぁぁっ!!!?」」
「さらばだ!!!」
「すいませえぇぇん!!!」
二頭の馬が勢い良く飛び出し、一目散に走り去った…。
「くそぉ!!!逃げられたぁ!!!」

「チキショー!!出世するチャンスだったのに・・・」
「全くだ!二人を生かして捕らえたらジェムから金貨千枚づつ手に入るからな!殺しても金貨五百枚づつと最高の賞金首なのによぉ!!」
セイルとアルトリアを捕り逃して兵士たちは踏み悔しがる。
二人を捕まえたら一生遊んで暮らせる大金を得られたので兵士たちの怒りは凄まじかった。
しがない一兵卒から脱出出来るチャンスだったから無理もなかった。
兵士たちがセイルとアルトリアを捕まえられず地団駄を踏んでた頃、馬を奪い逃走したセイルとアルトリアはというと。

「おーい!!アルトリアー!!」
馬を駆りながらセイルは自らの斜め前を疾駆するアルトリアに呼び掛ける。
「何ですー!?セイル様ー!!」
「そろそろ馬を止めて休まないかー!?」
「そうしたいのは山々ですが追っ手が掛かったかも知れません!!念のため身を隠せる場所まで走りましょう!!」
今二人が走っている所はだだっ広い荒野である。
低い植物が疎らに生えているだけの平地で遠くまで良く見渡せる…逆に言えば遠くからでも見付かりやすい。
「身を隠せる場所ってどこだよー!?」
「それは…森林とか…洞窟とか…岩場とか?」
「それはあとどれくらい走れば着くんだ!?」
「分かりません!!」
「…嫌だー!!普段馬なんて乗ってないから尻が痛い!!休みたいー!!」
「情けない!!それでも騎士ですか!!」
ちなみに乗馬の技術は騎士学校で教わる。
文にあって武を忘れず…平和な時代が続いても騎士としての本質を忘れないためである。

そうして馬を駆ること約一時間…二人は隣町に着いてしまった。
城郭に囲まれたその町の名はトゥルバ…この辺り一帯の中核を担うちょっとした地方都市である。
木を隠すなら森の中…身を隠すなら人ごみに紛れるのが一番良い。
「この規模の町なら信頼に足る情報屋も居るはずです。サーラ殿の正確な情報も手に入るでしょう」
「う…うん……そう…だね……」
「いずれにせよ砂漠越えが必要になるでしょうから、ラクダと必要な装備も揃えなければ…」
「……」
「…セイル様?大丈夫ですか?」
「こ…腰がガクガク…お尻はヒリヒリ…足は言う事を聞かない…」
「…解りました。まずは宿屋の確保が先決のようですね。セイル様は部屋で待っていてください」
「…ごめん……助かる…」

その後、適当な宿に部屋を取りセイルを休ませたアルトリアは、セイルを残して一人で情報集めに行った。
旧都イルシャ・マディーナで言えばザラーム街のような地区だ。
ある程度以上の都市になれば必ずある。
役人の目が行き届かず、犯罪と金と情報が集まる場所である。

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