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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 277

「噂…?」
「ああ、戦いで死んだっていう話も聞けば、国外へ逃げ延びて復讐の機会をうかがってるっていう話も聞くし、まだ抵抗を続けてるって話もあるなぁ…」
「なるほど…で、どれが一番信憑性高いと思う?」
「んなもん判らねえよ」
「そうかぁ…どうしようか?妹よ…」
そう言って姉は妹の方を見る。
「……」
妹は壁に張られた張り紙を見て固まっていた。
店主が説明する。
「…ああ、その辺に張ってあるのは手配書だよ。泥棒とか人殺しとか…色々だな。一番新しいのはそれだ。近衛騎士クルアーン・セイルとその従者の女剣士アルトリア…容疑はヤヴズ・ジェム暗殺を企てた疑い。報酬は、生きて捕らえりゃ金貨千枚、死んでりゃ半分の五百枚だとよ」
「…ほ…ほう…それは…もし捕まえたら大金持ちだな…」
「…だな。しかし金貨千枚だなんて…普通どんなに多くても金貨百枚が良い所だぜ。コイツラ他の連中とは完全に別格だよ。こりゃあ国中の賞金稼ぎ共が動くぞ」
「「……」」
姉妹は何も言わずに顔を見合わせるのだった。
「お嬢ちゃんたち、悪いんだけど空いてる席に座ってくれない。他の客やこれから来る客の邪魔になるんでね!」
「申し訳ない…席に座ろうか妹よ」
「………(コクン!)」
店主に注意され姉妹は空いてる席に座るが、何故か妹の方の雰囲気は一層深刻となっていた。

「はい、頼まれた水とこれはサービス!」
「これはかたじけない妹よ。お前も礼を言いなさい」
「………(コクン!)」
水だけでなくパンとスープをサービスする店主に姉妹は礼を言う。
「・・・もぐもぐ・・・もぐもぐ・・・店主すまないが、今夜泊まる宿と旅の足に必要なラクダはないか。ちゃんと宿代や足代は払うから」
パンを頬張りながら姉は今夜の宿と馬車代わりのラクダを用意出来ないか金貨を見せて店主に尋ねる。


酒場の二階は木賃宿だったので今夜はそこで一夜を明かす事にした。
「ふぅ…」
「はぁ…」
部屋に入った二人の娘は一息ついてフードを取った。
フードの下から現れた顔は…もう気付いているかも知れないが…そう、セイルとアルトリアである。
「…もうこんな小さな村にまで私達の情報が行き渡っているとは…やはり変装しておいて正解でしたね。私達を狙う者があるとすれば男女二人組に注意しているはず、女二人組なら少しは注意を反らせるでしょうね。少しは…」
「ああ、その通りだね…てゆーかお前、何で僕がお前の妹なんだよ?」
「そりゃあ咄嗟に思い付いたんだからしょうがないでしょう。とりあえず今夜はゆっくり体を休めて、サーラ殿に関する情報は明日以降にしましょう」
「そうしよう…何か僕、すぐ寝たい」
セイルはゴロンとベッドに横たわった。
「…っ!」
だがアルトリアは何か不穏な気配に気付いた。
彼女はサッと窓辺に駆け寄ると、身を隠しながら下を見た。
「まずいな…」
5、6人の兵士達が下の酒場へと入っていく。
定期巡回か…そうでなければ…。
「セイル様、残念ですが休んでいる暇は無いようです。今すぐ逃げますよ」
「くうぅ〜…逃避行はツラいなぁ…」
セイルはグーッと伸びをしてから飛び起きると、パパッと荷物をまとめて、最後に剣を下げた。
「…で?どこから逃げる?」
「下から来ます。窓から逃げましょう」
「飛び降りるのかよ…」
「いえ、屋根伝いに逃げます!」

バァーンッ!!!!
「クルアーン・セイル!!アルトリア!!叛逆罪で…逮…捕……あれ?」
部屋に踏み込んだ兵士達は中がモヌケの空なので拍子抜けした。
「おい店主!誰もいないじゃないか!」
「そんな馬鹿な!確かにこの部屋に入って行ったんだ!」
「隊長!窓が開いています!」
「おのれ!逃げたか…」
その時、外から下で待機させていた兵士の声がした。
「いたぁー!!!屋根の上だぁー!!!」

「くそ!!あっさり見つかった!」
「セイル様、飛びますよ…ハッ!!」
アルトリアは少し助走を付けると、ヒラリと隣の建物の屋根に飛び移った。

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