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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 275

とんでもない事を平然と言い出すジェム。
支配欲と狂気の併せ技だ。
シャリーヤは言った。
「それは素晴らしいお考えですジェム様。いっそ手足を切り落としてダルマにして生けるオナホとして王宮で飼ってはいかがでしょう?舌を切って喋れなくし、耳には薬品を流し込んで聞こえないようにするのです。目ぐらいは見る自由を残しておいてやって…」
こっちも相当イっちゃってるようである。
「シャ…シャリーヤ!!!」
ジェムは目を丸くして驚く。
「…はい?」
「素晴らしい案だ!!!セイルを捕らえたらさっそく実行しよう!!!」
「ありがとうございます」
まあシャリーヤの場合、セイルへの敵愾心も根底にはあるだろうが…。
二人の会話を聞いていた兵士達はセイルに心から同情すると共に“まあ見付かる訳も無いか”と思う。
既に日は完全に落ち、辺りは暗闇に包まれている。
オマケに今夜は月が雲に隠れていて、まさに一寸先は闇だ。
シャリーヤは思う。
(クルアーン・セイル…幸運なヤツ…せめて月でも出ていれば…)
その時、彼女の想いが天に通じた訳でもないのだろうが、僅かに見えた雲間から一条の月光がサーッと差し込んだ。
「んんっ!!?」
ジェムは目を見張った。
果たして、そこには一艘の小舟が浮かんでいた。
小舟には二人の人影が見えた。
顔までハッキリと見えた。
こちらを見て目を丸くして驚いている。
ジェムは叫んだ。
「セイル!!!!見つけたぞおおぉぉぉっ!!!!」

「クッソォ!!!!何って事だ!!!」
「逃げましょう!!!セイル様!!!」
セイルとアルトリアの驚いた事と言ったら無かった。
実は彼ら、三隻の軍船の灯りを港の灯と勘違いして近付いて来たのである。
かなり近付いた所で船影から軍船だと気付いて慌てて離れようとした時、運の悪い事に月が出て二人の舟を照らし出したのだった。

シャリーヤは高揚しながら思った。
(クルアーン・セイル!!何て不運なヤツ!!天に見放されたとしか言いようが無い!!)
「捕らえよぉーっ!!!!」
「止まれぇ!!!止まらないと撃つぞぉ!!!」
兵士達は弩砲で小舟を狙うが、もちろん撃てない。
アルトリアは巧みに帆を操り軍船から離れていく。
「何をしている!!?追え!!追えー!!!」
ジェムが躍起になって叫ぶ。
舷側の櫂が一斉に動き出した。
だが最初はなかなか速度が出ない。
その間に小舟はどんどん距離を開けていく。
だが軍船の方も徐々に速度が上がる。
ついに中型の二隻がセイル達を追い抜いた。
後ろからは大型が迫る。
ジェムは叫んだ。
「もっと船同士を寄せろ!!!ヤツの進路を塞げぇ!!!」
水軍士官が応える。
「む…無理です!!!衝突してしまいますぅ!!!」
「出来ぬとは言わせんぞ!!!やるんだ!!!やらねばこの船団の全員を縛り首にしてやる!!!」
「わ…解りましたぁ!!!!」
士官は真っ青になりながら操舵手に指示を出した。
そして…

 ズドオオォォォ〜〜ンッ!!!!

セイル達の行く手を阻もうとした二隻の中型軍船は接近し過ぎて衝突してしまった。
「し…沈むぞぉ!!!」
「総員退避ぃー!!!」
人々は次々に海に身を投げる。
その間にも二隻の船は見る間に波間に沈んで行った。
水軍士官はジェムに進言する。
「閣下ぁ!!これより本船はクルアーン・セイル追跡を断念し、味方の救助活動に入りたいと思います!!」
「ならん!!!セイルを追えー!!!!」
「で…出来ません!!!水軍軍人として味方を見捨てる訳にはいきません!!!」
「ぐぬぬぬ…シャリーヤ!!!」
「かしこまりました、ジェム様…」
シャリーヤはスラリと剣を抜くと、その士官を斬り捨てた。
「ぐあぁぁ…っ!!!?」
「フンッ!馬鹿め…見たか!!!僕に逆らう者はこうだぞ!!!さぁ!セイルを追えー!!!」
「「「……」」」
ところが、どうした事だろうか、誰もジェムの言う事を聞く者はいない。
「お…おい!!!お前達!!!何をしている!!?早くセイルを追わんかぁー!!!」
「「「……」」」
「おい!!!聞いてるのか貴様ら!!?この僕を一体誰だと思ってるんだ!!?」
「「「……」」」
「くっ……」
船員達は何も言わず、ただジッとジェムを睨み付けている。
その異常な空気に、さすがのジェムも気付いた。
「お…おのれぇ…貴様ら…」
船長がジェムに歩み寄り、静かに言った。
「…ヤヴズ・ジェム大執政閣下、陸ではどうか知りませんが、船の上には船の上の法があります。溺れている者は例え敵であれ助ける…というのもその一つです。ついでに言うと陸の法や権力が船の上でも通用するとは思わないでください。あなたがその事を理解してくださるのなら、我々もあなたの顔は立てましょう。…さぁ、どうします?」
「……わ…解った…クルアーン・セイル追跡は一旦中止し、救助活動に当たれ…」
「「「ゥオオオォォォォーッ!!!!」」」
すると船員達はまるで今までが嘘のように水を得た魚のように活き活きと救助活動に当たり始めた。
「…クッソォ…覚えてろ…改革してやる…絶っ対改革してやる…」
ジェムは涙目で顔を真っ赤にしてプルプル震えながらポツリと呟いた。

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