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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 274

そこに青い顔をしたシャリーヤがやって来た。
「ジェ…ジェム様…!」
「んん?…どうしたシャリーヤ?そんな真っ青な顔をして…」
「たった今、緊急の魔信(魔導通信)が入りました。どうか落ち着いてお聞きください…」
「?…一体何だと言うんだ?僕は大抵の事では驚かないぞ…」
シャリーヤは一呼吸してから告げた。
「…クルアーン・セイルが出奔しました」
「何だってえええぇぇぇっ!!!?」
ジェムは飛び上がらんばかりに仰天した。
「セ…セ…セイルが…しゅ…しゅ…出奔って…!!?な…何がどうしてそうなったぁ!!?」
「解りません。不明です」
「それで!?セイルは今どこに!!?」
「出立を阻止しようとした白衛隊を蹴散らし、小舟でジャズィーラ島を出たそうです。恐らく今頃は湖上かと…」
「…湖上!?この広いアズィーム湖のどこかに居るのだな!?…よし!アズィーム湖畔の各港に待機中の全艦隊へ命令を出せ!!セイルを捕らえよとな!!」
「了解しました」
「・・・・・・(セイルが出奔・・・何があったんだ。あのアブ・シルの一件か。いや、あの話から日がかなりたっている。それに僕を裏切れば残された家族たちがどうなるか解っている筈だ・・・そうなると、こんな事を考えるのはアルトリアだ!)あのアマ!調子に乗りやがって!」
シャリーヤが去りジェムはセイルが出奔した原因を色々と探り。
セイルがなぜ自分の手元から逃げたのはアルトリアがセイルを唆したとジェムは決め付け激昂する。

「こうしてはおれんな!僕自身もセイル捜索に出るぞ!おい!船を出せぇーっ!!」
ジェムは自ら大型軍船に乗り込み、中型軍船二隻を伴って湖上に出た。

ちなみにイルシャ水軍では標準的な中型軍船の定員が約50人前後、大型ともなると100人近くが余裕で乗り込める大きさと考えて良い。
通常航行時は帆で風を受けて進むが、戦闘時には両舷から無数に出た櫂(オール)によって進む。
これだと風任せよりも小回りが利くのだ。
ちなみに漕ぎ手を担うのは平民や奴隷階級の者達であり、それゆえかイルシャ水軍は陸の軍よりも考え方が先進的かつ現実的だ。
船上という一種の閉鎖空間で様々な階層の人間が協力して船を運航するためには、貴族の矜持や騎士の誇りばかりにこだわってはいられない。
下級士官の中には平民出身の者も一割程度いたし、軍船には陸の騎士は絶対に使わない飛び道具(弩砲…ボウガンを大きくしたような発射装置)も備え付けられていた。
また、陸の軍が地方太守達の連合軍的な要素が強いのに対し、水軍は基本的に全て王家の統帥下にある“王立水軍”であった。

三隻の軍船は港を出てジャズィーラ島を目指した。
「クソッ!セイルめ…どんな理由か知らんが、僕の許し無く僕の元を去るなんて絶対に許さん…必ず見付け出して捕らえてやる…」
ジェムは甲板に立ち、目を凝らして湖面を睨み付けながら呟く。
水上にて羽根を休める水鳥も跳ねる小魚すらも見逃してなるかという気概だ。
シャリーヤは言った。
「ジェム様、そろそろ日没です。情報によるとクルアーン・セイルは小型の帆掛け船で逃走したそうです。日が落ちれば捜索はより困難になりますが、いかがいたしましょう?」
気が付けば空は茜色から濃い紫色へと変わり、既に幾つかの星が輝き始めている。
「探照灯があるだろうが!それで湖面を照らして探せ!」
「かしこまりました」
探照灯と言っても蝋燭の僅かな火を光源とした手持ちの小さな物。
効果は殆ど無いが、まあ無いよりはマシといった代物だ。
さっそく兵士達が船縁に等間隔で並び、湖面を照らしてセイル達を探した。
「こんな事ならば、セイルからアルトリアを引き離すべきだった!女と侮ったのが不味かったな」
セイルが離脱したのはアルトリアを傍らに起きすぎたのとアルトリアを甘くみたのが原因だとジェムは後悔する。

「ジェム様、すぐに見つかりますよ。どうせ、あのセイルですから精神が折れる筈です」
「シャリーヤ、確かにお前の言う通りだ。それとセイルには少し痛い目を遇わせる必要があるな〜例えば奴の手足の腱を切って一生寝たきり生活をさせる。そうすれば自分の愚かさと僕の愛を思いしる筈だ!」

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