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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 272

「…おっと!忘れておった。セイル、ヤスミーンさんとミレルからじゃ!受け取れい!」
そう言うとウマルは布袋に入った何かをセイル達に向けて放った。
「わわわ…!?」
揺れる舟の上でセイルは何とかそれを受け取った。
「ナイスキャッチじゃ!」
「お祖父様!これは…!?」
「見れば解る!後で確認せい!」
「はい!」
一方、ライラはというと…彼女は興奮した面持ちで瞳を輝かせながらウマルを見て言った。
「おいおい…嘘でしょう隊長!?騎士を引退してもう剣を持つ事は無いと思っていたイルシャ最強の剣士にまさかこんな所で出逢えるなんて!!神々よ!!感謝します!!」
そう、強い剣士と命のやり取りをする事は彼女の最大の悦び…その点“イルシャ最強の剣士”の称号を持つウマルは相手に不足が無いどころか正に本命中の本命であった。
しかしセイルはふと違和感を覚える。
「ど…どうしてライラ先生がお祖父様を“隊長”と呼ぶんですか!?」
「当然じゃ!このライラはかつて近衛剣士隊におった!ワシの部下だったんじゃ!こやつに剣の道を教えたのもこのワシじゃ!」
「ええぇぇぇっ!!!?」
「そういう事だよセイル君!!あぁ…今日は何て素晴らしい日なんだぁ!!私はねぇ…近衛剣士隊にいた頃から、ずっとあなたと本気で殺し合ってみたいと思っていましたよ!!隊長おぉ!!!」
ライラがウマルに襲い掛かる。
ウマルはすかさず剣を抜いて彼女の刃を受け止めた。
 ガキイィィィンッ!!!!
「…フンッ!!道を踏み外したバカ弟子を成敗するのは師匠の役目と相場が決まっとるからのう!」
「フフフ…しかしその場合たいてい師匠の方が負けるというのもパターンですがね!」
ガチガチと鍔迫り合いをしながら余裕の表情で語り合う二人。
その光景にセイルは半ば感嘆していた。
(す…凄い!!アルトリアですら適わなかったライラ先生を相手にあの余裕…やっぱりお祖父様は強い!!)
「セイル様!舟を出しますよぉ!」
いつの間にかアルトリアが広げていた舟の帆が風を受け、舟が走り始める。
「セイル!!お主達の前途に神々の加護がある事を祈っておるぞ!そしてアルトリアさん!バカ孫をよろしく頼む!」
ウマルは去り行く二人に向かって叫んだ。
「お祖父様も!!ご武運を!!」
「お任せください!!ウマル殿ぉ!!」
セイルは船縁に掴まりながら、アルトリアは帆を操りながら応えた。
二人を乗せた舟は見る見る内に小さくなっていく…。
「フッ…行ったな…ハァッ!!」
 キィンッ!!
その光景を視界の端に捉えながらウマルはライラの剣を弾いた。
「く…っ!!?」
そのまま後ろに下がるかと思いきや、ウマルは更に一歩踏み込んで剣を突き出す。
ライラは咄嗟に身をかわしたが避けきれず、彼女の胸元に一筋の赤い線が走った。
それはほんのかすり傷だった。
「…おや、これを避けたか…腕を上げたのう、ライラ…」
ライラはその血を指先ですくうとペロリと舐めて目を細め、戦闘中には似つかわしくないゾクッとするほど色っぽい声で呟く。
「…あぁ…隊長ぉ…最高ですよ、あなた……濡れちゃいます…」
「…おや?目付きが近衛に居た頃に戻っておるぞ、ライラ。お主は昔からそういうヤツじゃったのう…無闇やたらと血を好む…」
「フフ…そうでしたねぇ…そのために私は近衛剣士隊を除隊された。あなたの指示によってだ、隊長…そして騎士学校の教師という殺戮とは無縁の役職に移動させられた…」
「…たわけ!近衛剣士の地位を利用して監獄の囚人達を遊び半分に斬り殺し、自ら反体制派のアジトへ単騎で乗り込んで皆殺しにしてしまう…そんな殺人狂を王族の側に置いてはおけんじゃろう。王宮に侵入した賊は一人残らず殺してしまうしのう…ま、その後お主が学校の教師になったと聞いた時は肝を冷やしたがの…」
「ええ、子供達と触れ合いながらいつも考えていましたよ。この可愛らしい笑顔が死の間際にはどんな風に歪むのか…とかね♪」
「…お主の理性にだけは敬意を払うよ…もしセイルがそんなお主の正体を知ったら卒倒するじゃろうのう。じゃから安心せい。セイルにはお主は恋人を失った悲しみで変になった…とでもいう事にしておいてやるよ。セイルの思い出の中でだけは美しくしておいてやる…これは孫馬鹿かのう?」
「…いや、良いと思いますよ?可愛い孫の記憶を汚したくない…優しいお爺ちゃんじゃないですか、隊長。…ただ、残念ながらそれは無理です。だって、あなたはここで死ぬんですから…ね!!」
ライラは再びウマルに斬りかかる。
「なんのぉ…!!」
もちろんウマルも黙ってやられはしない。
再び激しい白刃の応酬が始まる。
だが…
「おやおやぁ!?どうしましたぁ!?隊長ぉ!息が上がっておいでのようですがぁ!?」
「ば…馬鹿を言え!貴様ごとき相手にぃ……うっ!!?」
一瞬、ウマルの動きが止まる。
その瞬間を見逃すライラではなかった。
「はあぁーっ!!!!」
 キイィィーンッ!!!!
彼女の繰り出した剣がウマルの剣を弾き飛ばし、剣は離れた地面に突き刺さった。
「ふ…ふふふ…ふはははははぁ…っ!!!!勝った!!勝ったぁ!!!老いたとは言えイルシャ最強の剣士クルアーン・ウマルに勝ったあぁっ!!!!」
興奮して叫ぶライラ。
だがウマルはそれに構う余裕も無く、胸を押さえて苦悶の表情を浮かべながらドサッとその場に倒れた。

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