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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 271

「…初等科から中等科へ進学する時…僕の実技成績は到底進学出来るレベルじゃあ無かった…。先生、毎日放課後、付きっきりで練習に付き合ってくれましたよね…。そのお陰で僕は中等科試験にパスする事が出来た…今の騎士としての僕があるのは先生のお蔭です…」
「うんうん、懐かしい思い出だねぇ〜」
「…気持ち悪いと思うかも知れないけど…僕、ずっと先生を想ってました…先生は僕にとって、騎士としても女性としても憧れの対象だった……それなのに…先生ぇ!!何でだよぉ!!?僕の記憶にあるあなたはこんな事をする人じゃなかった!!何でジェムの手先になんてなったんだ!!?何でこんなに簡単に人の命を奪う事が出来るんだぁ!!?」
セイルは叫びながら泣いていた。
「ハァ…セイル君、君が私に対して抱いた勝手なイメージについて、私は責任を負わないよ?」
「うっ…ひっく…えぐ…えぐ…」
 カラン カラァーン
セイルは剣を取り落とし、膝を付いてすすり泣き出してしまった。
「おや…戦意喪失かい?残念だな。君と本気で殺りあってみたかったんだがね…まあ良い。君を王宮へ連れて行けば私の手柄だ」
そう言いながらライラはセイルに歩み寄る…その顔の前に剣が差し出された。
「…おい、セイル様に近付くな」
アルトリアだ。
「…君は…確か以前に会った時もセイル君と一緒にいた。彼の従者か…?」
「私の名はアルトリア!セイル様の剣だ」
「剣?…ハッ…アハハハハッ!何だいそれ!?面白いなぁ!君ぃ!」
ライラは腹を抱えて笑った。
「…真面目だが?」
「ハハハ…あぁ…それで?アルトリアさん、私がここに来た時点で既に兵士が何人も斬られていたが、あれをやったのは君なのかい?…いや、今のセイル君の様子を見るに、彼がやったとは思えないからね…」
「いかにも!…そして次はあなたにあの屍の中に加わってもらう!」
「…面白い。セイル君の代わりに剣の錆びになってもらおうかぁ!」
ライラは黒い衣を脱ぎ捨てた。
中から現れたのは肩や胸など部分的にのみ防御する女性用の黒い甲冑である。
西大陸なら、さしずめ“ビキニアーマー”とでもいった所か…非常にセクシーである。
彼女の自慢である豊満な巨乳も半分以上露出している。
アルトリアは半ば呆れた。
「…そんな半裸のような姿で戦うのか…」
「確かに防御の面では心許ないけど、動きやすくて良いんだよ、これ。それに相手が男性なら効果抜群だしね…ウフ〜ン♪なんつって…」
「痴女め…覚悟ぉ!!」
アルトリアは問答無用で斬りかかる。
だがライラはそれを受け止めた。
 キイィィィンッ!!!!
「な…っ!!?」
「フフン…どうしたんだい?驚いたような顔をして…まさかこの程度の力で私を倒せるとでも…?」
「フッ…まさか…今のはほんの腕慣らし程度だ(ヤバい…この女…強い!なるほど…人を斬るのが好きだなどと小児病的な事を抜かしていただけの実力は持ち合わせていたという訳か…)」
「フッ…その余裕がいつまで持つか楽しみだよ…っ!」
ライラはアルトリアの刃を押し返すと同時に後方へ跳んだ。
だが次の瞬間にはアルトリアが体勢を立て直す隙を突いて踏み込んで来た。
嵐のような斬撃がアルトリアに襲い掛かる。
「はあぁぁーっ!!!」
「なんのぉ…っ!!」
 キィンッ!!キィンッ!!キィンッ!!キイィンッ!!!
アルトリアはそれら全てを受け、流し、弾いた。
だが、彼女は次第に追い詰められていく。
「ハッハァッ!!どうしたのかなぁ!?大きな口を叩いていた割には圧され気味じゃないかぁ!!」
「く…っ!!」
アルトリアの背後に湖が迫る。
 キイィィィンッ!!!
絶え間ない斬撃に、ついに彼女の剣は弾き飛ばされてしまった。
魔法で新たな剣を出す事は出来ない。
魔力は瞬間移動魔法で全て使い果たしてしまったからだ。
「…これで終わりだぁ!!」
ライラはアルトリアに剣を振り下ろした。
逃げ場は無い。
その時だった!
「うああぁぁぁっ!!!!」
「「…っ!!?」」
セイルがライラの後方から剣を構えて叫びながら突進して来たのだった。
次の瞬間…

 ズバアァァッ!!!!

「うぅ…っ!?」
…血の流れる右腕を押さえ、その場にうずくまったのは…セイルの方だった。
「セイル様ぁ!!」
アルトリアが叫ぶ。
「ハァ…セイル君、女の子を助けるために勇気を振り絞ったのかい?その気概だけは立派だったね。何の役にも立たなかったけど…じゃあ、死んでみようか…セイル君…」
ライラはセイルに向かって剣を振り上げた。
「…っ!!」
セイルは死を覚悟して目を閉じた。
(くっ…これが僕の最期か!!でも悔いは無い!!今の自分に出来る事を精一杯やったんだ!!)
…その時!
「無駄ではないぞ!セイルよ!」
辺りに老人の声が響いた。
「この声…お祖父様!!?」
「まさか…!!」
「……おい、嘘だろう…!?」
セイルとアルトリア、そして何故かライラも、咄嗟に声の方に目をやる。
果たして、そこにはウマルが立っていた。
「お祖父様ぁ!!」
「ウマル殿!何故ここに!?ミレル殿やヤスミーン殿はどうしたのですか!?」
「皆ならば既に島の反対側の港から船出したゆえ安心せい!…時にセイル!ケガは大丈夫か!?」
「は…はい!かすり傷です!」
「そうか!己の身を呈してアルトリアさんを護ろうとした行為…見事じゃったぞ!さすがはワシの孫じゃあ!そこの女はワシに任せて早う行くが良い!」
「い…良いんですかぁ!?」
「いけませんウマル殿!!あなたの体は…!!」
「ワシに構うでない!!お主らはお主らのすべき事をせい!!行けぇ!!」
「「は…はい!!」」
セイルとアルトリアは急いで舟に乗り込んだ。

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