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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 270

 キイィンッ!!
セイルは叫ぶと同時に隊長の剣を押し返した。
隊長は一旦セイルから距離を取り、改めて剣を構え直してセイルに向かって叫ぶ。
「甘い…甘過ぎるぞ!クルアーン・セイル!実力はあれど、とことん騎士に向かん性格だな!それが貴様の命取りだ!覚悟おぉぉっ!!!」
そして彼は勢い良く剣を振り上げて踏み込んでセイルに斬りかかる。
「く…っ!自分でも解ってる!でもこれが僕だあぁぁっ!!」
セイルは隊長の間合いに飛び込み、彼の右脇腹から左肩に掛けて逆袈裟に斬り上げた。
 ズバアァァッ!!!
「ガハァ…ッ!!?」
どうせセイルは自分を斬れまいと高をくくって大技を繰り出そうとした隊長…まさかのセイル捨て身の斬撃の前に倒されたのだった。
「な…何故…?」
「人を斬るのは嫌だ…だが斬れないとは一言も言ってない!僕は…もうその一線は越えた!必要に迫られれば自分の心に逆らってでも斬るさ!」
「フ…フフ…なるほどな…だが我々を倒すのに時間を掛け過ぎたな…ヤツが来た…お前達はもう…終わり…だ…」
隊長は息絶えた。
「ヤツ?…ヤツって一体誰だ?…まあ良い。アルトリア、早く舟に乗って行こう!」
「…そうもいかないようですよ…」
アルトリアの視線の先には、あの全身黒ずくめの覆面の剣士が居た。
こちらへ向かってゆっくりと歩いて来る。
「あ…あなたでしたか…」
「よぉ、また会ったなぁ…クルアーン・セイル…」
黒剣士は目しか見えないが笑っているのは解る。
セイルは剣を鞘に収めて言った。
「僕は…あなたとは戦いたくありません!どうか黙って僕達を行かせてください!」
「…残念だがそいつぁ無理な相談だよ。お前を見逃したらオレが後でジェムにお咎めを受けるからなぁ…。それにさ、お前はオレと戦いたくないようだが…オレはお前と戦いたくて堪んねえんだよぉ!!」
黒い剣士は剣を抜いた。
「さぁ抜け!クルアーン・セイル!オレは強いヤツと戦うのが何よりも好きなんだ!騎士学校486期の麒麟児と呼ばれたお前の剣の腕前、オレに見せてくれよぉ!」
「く…っ!」
だがセイルは剣を抜かない。
「ハッ…お前にその気が無いなら嫌でも戦いたくなるようにしてやる!」
そう言うと黒剣士は傍に居た味方であるはずの白衛兵を不意に斬った。
 ズバアァッ!!
「ぎゃあぁぁっ!!?」
「な…何を…っ!?」
「ハッハァ…ッ!!オレを止めてみろぉ!クルアーン・セイル!」
 ズバァッ!!
「ぐあぁっ!!!」
 ズバァッ!!
「ひぐうぅっ!!?」
 ズバァッ!!
「いぎゃあぁっ!!!」
黒剣士は次々と兵士達を斬り捨てていく。
「なんて人だ…狂ってる!!」
「セイル様!やりましょう!あなたがやらないのなら私がやります!」
アルトリアは死んだ兵士達が落とした剣の一本を拾い上げて言った。
「…いや!その必要は無い!あの人は僕が倒してみせる!」
一方、兵士達をあらかた斬り伏せた黒剣士は、脅えながら一連のやりとりを見ていた船主や人夫達の方へ歩み寄って行った。
「ひいぃぃっ!!?」
「く…来るなぁ!!!」
「フフフ…恨むならクルアーン・セイルを恨めよぉ…」
「待てぇ!!!!」
背後から声がして黒剣士が振り向くと、セイルが抜き身の剣を構えて立っていた。
「ほぉ…ようやくやる気になったようだなぁ、クルアーン・セイル…」
黒剣士は目を細めてほくそ笑んだ。
「…はあぁぁっ!!!!」
「フッ…」
 ガキイィィィンッ!!!!
セイルと黒剣士の剣が打ち合わさり火花が飛び散る。
「弱い…っ!!」
 キィンッ!!
「く…っ!!」
セイルの刃が弾かれた。
彼は咄嗟に後ろに飛びすさり黒剣士の払いをかわした。
「オイ…冗談じゃないぜ、クルアーン・セイル…お前の実力はこんなもんじゃないはずだぞ。早くお前の本気を見せてくれよ…お前の中に棲む悪魔が見てえんだよおぉぉっ!!!」
黒剣士がセイルに斬りかかる。
 ガキィンッ!!ガキィンッ!!
 ガキィンッ!!ガキイィンッ!!!
次々と襲い来る斬撃。
セイルはその全てを受け止め、或いは受け流しながら言った。
「ふざけた事を…!!あなたは何でそんなにまで戦いを求めるんだ!?」
「何で!?ハッ!そりゃあ前にも言ったはずだ!一つは金…もう一つはオレ自身が人を斬るのが大好きだからさ!特に強いヤツとの命のやり取りほど興奮するタチでね!獲物が死ぬ瞬間に見せる苦痛に歪む表情とか…堪らなくそそられるぜぇ!」
「く…っ!!僕は…あなたの口からそんな言葉は聞きたくなかったぁ…っ!!!」
セイルは一瞬の隙を突いて黒剣士に斬り付けた。
 バサァッ!!
黒剣士が素早く身をかわしたため、セイルの剣先は黒剣士の顔を覆っていた布だけを切り裂いた。
ハラリと布が落ちる。
「フフフ…今のは惜しかったねぇ、セイル君。あとちょっとだったよ…それにしても驚いたなぁ。最初から私の正体を知っていたような口振りだったねぇ…いつから気付いていたんだい?」
「今だってまだ信じられませんよ……ライラ先生!」
なんと、黒剣士の正体はセイルの初等科時代の女教師、アルムルク・ライラであった。
「……」
アルトリアも黙って剣を構える。
ライラはポリポリと頭を掻きながら天を仰いで溜め息を吐いた。
「ハァ…ショックだなぁ〜…。まさか教え子に正体を見破られるなんてさ…体型が判らないようになるべくゆったりした服を着て、おまけに魔術布で声色まで変えてたのに…セイル君、君、鋭すぎだよぉ…」
「……実は最初に会った時から違和感は感じていました。剣捌きに見覚えがありましたからね」
「おや、覚えててくれたのかい?嬉しいなぁ〜♪」
「…忘れる訳なんて無い!!!」
セイルは叫んだ。

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