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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 269

次々と木箱は船へと積み込まれていく。
だがそこに居るはずのセイル達の姿が無かった…。
「ヨイショ!」
「ギャンッ!?」
一人の人夫が木箱を持ち上げた時、中から何か悲鳴のような物が聞こえた。
「…?」
「オイ、どうした?」
仲間の人夫が尋ねる。
「いやぁ…今、箱の中から何か声みてえな物がしたような…」
「中に猫でも入ってんじゃねえか?開けて確かめてみようや」
人夫が箱に手を掛けた瞬間…
 バアァーンッ!!!!
「人間だよぉっ!!!!」
「「わあぁぁ〜っ!!!?」」
勢い良く箱が開いて中からセイルが飛び出した。
「ハァ…見つかってしまいましたか」
「うわっ!?こっちにも居やがった!」
別の箱からはアルトリアが現れる。
「居たぞぉ!!!」
「積み荷に紛れて密航する気だったな!?捕らえろぉ!!」
たちまち兵士達が二人の周りを取り囲む。
隊長が言った。
「クルアーン・セイル殿…これは一体どういう事ですかな?」
「いやぁ、ちょっと…温泉地のナハルシャット辺りに静養にでも行こうかと思いましてね…」
「…ナハルシャットへ行く前に我々と共に白衛隊本部まで来ていただきましょうか…」
「お断りします…と言ったら?」
「ならば地獄に直行してもらいましょう!」
隊長は剣を抜いた。
続いて兵士達も一斉に抜剣する。
セイルとアルトリアも腰に下げていた剣を抜いて構えた。
「アルトリア!背中は任せた!」
「セイル様も!」
周り360゜ぐるりと取り巻いた敵と対峙する二人…。
だが兵士達は間合いを保ったまま仕掛けて来ない。
以前アルトリアがヤヴズ・ゲムの屋敷で一個小隊を皆殺しにしたから牽制しているのかも知れない。
もしくはジェムのお気に入りであるセイルを傷付ける事を恐れているのか…。
セイルは思う。
(良いぞ。このままヤツラが仕掛けて来なければ刃を交える事無く逃げられるかも知れない…)
この先何が起こるか解らない旅路だ。
初っ端からの無用な戦闘は避けるに越した事は無い。
アルトリアは兵士達と対峙しながらも波止場を見渡す。
ちょうど二人ぐらいが乗れそうな小型の帆掛け船があった。
(…あれだ!)
このジャズィーラ島から湖畔の港町まで大型〜中型船で約一日。
だが足の速い小型船なら半日程で着ける。
追っ手を振り切るのにも良い。
持ち主には…後で謝れば良いだろう。
アルトリアは小声でセイルに告げた。
(…セイル様、見えますか?あの小舟です…)
(み…見えるよ…)
(この囲みを抜けたら真っ直ぐにあの舟を目指して走ってください。追っ手は私が食い止めます)
(…解った。でも、どうやって囲みをぉ…っ!?)
…とセイルが言い終わらない内にアルトリアは彼の後ろ襟を引っ付かんで思いっ切りブン投げた。
「そおぉれえぇぇっ!!!」
「うわあぁぁー――――っ!!!?」
叫びながら空中高く放り上げられるセイル。
白衛兵達の頭の上を飛び越えて囲みの外に着地した。
 ドオォンッ!!!!
「ぐ…っ!!?(あ…足がぁ…っ!!?)」
着地の衝撃で腰から下が痺れて言う事を聞かない。
とても走るどころではない。
「く…くそぉ!!」
「逃がすなぁーっ!!」
白衛兵がセイルに襲い掛かる。
「…っ!!」
襲い来る刃をセイルは咄嗟に剣を構えて防いだ。
 キィィィンッ!!!
刃と刃がぶつかる鋭い音が響き渡った。

一方、アルトリアは…
「はあぁっ!!!」
 ズバアァッ!!
「ぐぎやあぁ〜っ!!!?」
「く…くそぉ!」
「この女…やはり強い!」
既に彼女の足元には2、3人が転がっており、辺りの地面は血溜まりだ。
鮮血の滴る剣先を兵士達に向けて言った。
「…さぁ!次に斬られたい奴は誰だ!?」
「ナメるな!このアマあぁっ!!!」
「叩き斬ってやらあぁぁっ!!!」
敵も一人々々相手していては順次やられていくだけだと悟ったらしい。
左・右・後方の三方から斬り掛かる。
刃が体を切り刻む寸前、アルトリアは跳んだ。
 ズバァッ!!ズシャアッ!!ドブシャアァッ!!!
「「「あぎゃあぁぁっ!!!?」」」
勢いが付いて避けられない三人の兵士は互いの体を斬り合ってしまう。
更に宙に舞ったアルトリアは太陽を背に一人の兵の剣を弾き、その顔面に踵を落とす。
 グシャアッ!!
「ギエェッ!!?」
兵の顔は潰れた。
その左右に居た兵は呆気に取られて動けない。
その隙を突いて剣を片方の兵の胸に深々と突き立てる。
 ドスッ!!
「グ…ッ!!?」
すかさずその兵の腰の短刀を抜き取り、今度は振り返りざまに残る兵の喉笛を切り裂いた。
 ブシャアァァ…ッ!!
「があぁぁ…っ!!?」
鮮血を噴水のように撒き散らしながらその兵士は倒れた。
「ふぅ…さて、次に死にたいのは誰かな…?」
アルトリアは兵士達を見回す。
「「「ひいぃぃっ!!!?」」」
兵士達は既に引け腰…完全に戦意を喪失していた。

一方、セイルは…
「ほらほらぁ…どうしましたぁ!?クルアーン殿ぉ…っ!!」
「うぅぅ…っ!!」
彼は苦戦していた。
白衛兵の隊長とカチカチと刃を鳴らしながら鍔迫り合いをしているが押され気味だ。
「セイル様!何をなさっているのですか!?そんな雑魚さっさと斬り捨てておしまいなさい!」
「そ…そんな簡単にはいかないんだよぉ!!!」
「…?」
アルトリアは首を傾げる。
隊長だけあって一般兵よりは腕が立ちそうだが、それでも今のセイルの実力なら本気を出せば一刀の元に斬り伏せられるレベルの敵だ。
もう足も立つようだし、何が問題だというのか…?
「…まさか!まだ人を斬る事に躊躇いがあるのですか!?」
「うぅ…躊躇い無く人を殺せるようになる事なんて…僕には無い!!」

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