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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 265

絶体絶命の危機に陥ったサーラを救う手だてをセイルは考えるが、良いアイディアは浮かばなかった。
普通なら聖剣の勇者らしく聖剣ルーナを携え身一つでサーラの元に馳せ参じるべきであった。
しかし、そこまでセイルは決意できなかった。
もし、サーラの元に馳せ参じてたら残した家族や使用人たちはジェムの報復で殺されるのは確実で実行出来なかった。
聖剣ルーナの勇者といえど大軍を有してない自分がサーラを助けに行っても返って足手まといになるとセイルは思い込んでいた。


(…いや、違うな…)
セイルは思う。
家族の命が危ないから…だって?
そんな事は言い訳に過ぎない。
(結局、僕は怖いんだ。今の、この人生を失う事が…)
家族が心配だと言うんなら、先に王都から離した上で自分も旅立てば良い。
要するに、どっちを取るかだ。
権力者(ジェム)のお気に入りという立場に甘んじて今まで通りの生活を続けるか…それとも自分の心の声に従って自分が本当にしたい事をするか…。
(僕が今、本当にしたい事…それは…)

“サーラさんを助けたい!”

…何も王太子に夢枕に立たれて頼まれたからじゃない。
セイルは心からそう思うのだった。
サーラの元へ行く。
行ったからといって役に立てるかどうかなんて解らない。
自分に何が出来るのか…なんて考えてる暇があったら、まず行こう。
セイルは決意した。

「アルトリア!お祖父様と母様に居間に来てくれと伝えてくれ!大事な話がある!僕も着替えたらすぐに行く!」
「セイル様……解りました!」
「じゃあ、私はお母様を連れてくるね」
アルトリアとナシートはウマルとヤスミーンを居間に連れていくためセイルの部屋を出た。
セイルに対してアルトリアは少しドライであったが、セイルがやっとジェムと戦う決意をしてくれたアルトリアも本当は嬉しかった。
しかし、今はそれを表情に出すわけには行かなかった。
相手はあのヤヴズ・ジェムであり油断は出来ないため心を引き締めていたのである。


数分後、食堂にセイル、アルトリア(彼女の肩にはナシート)、ウマル、ヤスミーン、そしてウズマが顔を揃えていた。
「久し振りに姿を見たと思ったら何じゃね一体?」
「すいません、お祖父様、大事な話があるんです。皆にも関係ある事なので来てもらいました」
ヤスミーンはウズマを指して尋ねる。
「このゴミクズ女にも関係ある事なの?セイルちゃん」
「これはまた随分な言われようねぇ」
「事実でしょう!?」
「母様、落ち着いて…。ウズマさんにも関係ある事です。使用人達にも…この屋敷に住む全員に関わる事です。ひょっとしたら親戚にも影響があるかも…」
「一体何なんじゃね?もったいぶっとらんで早く言いなさい」
「はい、皆さん。実は、僕は…」

セイルは今の地位を捨て、王都を出奔してサーラの元へ馳せ参じる旨を皆に伝えた。

「「「……」」」
話を聞いた皆は暫く言葉が無かった。
「…本気なの?」
最初に口を開いたのは意外にもウズマだった。
「今のあなたはヤヴズ・ジェムのお気に入り…側近中の側近…誰もが望む地位よ。それをアッサリ捨てて落ち目のお姫様の元へ行くっていうの?」
セイルは応えた。
「…皆には迷惑を掛けると思います。僕が去れば、きっとジェムの追及の手が皆に来ると思う…」
「そんな事を訊いてるんじゃないわ」
「え…?」
「あなたの覚悟を訊いてるの。本気で全てを捨てて愛しいお姫様を助けに行くつもり?」
「…はい!僕は本気です!例えこの命に代えても…!」
セイルの迷いの無い真っ直ぐな瞳にウズマはフッ…と笑って言った。
「…なる程ね。本気の目だわ。これはもう止めても無駄そうね」
続いてウマルも頬を緩ませて口を開く。
「セイル、お前は昔から一見意志が弱そうに見えて、一度決めたら意地でも曲げん時があったのう…それは決まって人を助ける時じゃった。こうなったお前を止める事はもう誰にも出来んな」
「そ…それじゃあ…許してくれますか!?」

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