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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 263

「め…滅相も無い!」
「…良いのよ。自分でも少し異常だと思うもの…」
「自覚がおありだったのですか!?…あ…」
慌てて口を塞ぐミレルにヤスミーンは「フッ…」と自嘲を込めた微笑みを浮かべて言った。
「女はね…男に依存しなければ生きていけない生き物なのよ。それは父親であり、夫であり、息子…女は男に捨てられたらお終いなの。だから男に尽くし奉仕するのよ。…でも男は女を捨てる。父親は娘を捨てる。夫も妻を捨てる……でもね、息子だけは絶対に母親を捨てない。捨てる訳がない。女にとって息子はね、最後の寄り所なのよ。ミレル、あなたも子供を産めば解るわ…」
「奥様…」
ミレルは“女は男に依存しなければ生きて行けない”などとは全く思わなかった。
少なくとも自分はウマルから自立して生きる精神は学んだつもりだ。
だがこのヤスミーンはどうだろう…。
彼女の辿って来た人生は…父…夫…息子…確かに常に頼るべき男が居て、それに依存して生きてきた。
彼女は一人では立てない。
独力では生きていけないのだ。
それに気付いたミレルは何も言えなくなってしまった。
「…奥様の仰る事はごもっともです…ですが坊ちゃまにとっても、私達にとっても、今のままの状態が良いとは思えないんです…」
今のミレルにはそれだけしか言えなかった。


セイルはベッドに横たわって黙って天井を見つめていた。
「……」
何かを考えている訳ではない。
何も考えていない。
実は少し前から気力は持ち直している。
確かに先輩の死は辛かったし、それに対して何も出来ない自分が悔しく情けなかった。
だが彼も若いのだ。
傷付きやすいが回復も早いのが若者である。
あまつさえ(ほぼ一日中部屋の中で過ごすため)体力の衰えを防ぐために密かに体を鍛えてすらいた。
今の彼に足りない物は…きっかけ。
一歩を踏み出すための“一押し”だけだった。

「…?」
セイルはふと何かの気配に気付いて顔を横に向ける。
「え…っ!!?」
そこには居るはずの無い人が立って居た。
「やあ、久し振りだね。クルアーン・セイル」
「ア…アルシャッド王太子殿下!!?」
セイルは慌ててベッドから飛び降りると臣下の礼を取った(寝間着のまま)。
「し…失礼いたしました!!!(てゆうか…えっ!?何で殿下が家なんかに!!?しかも部屋に入って来たの全然気付かなかったし!!)」
「あぁ、構わない。そう堅苦しいのは無しにしよう…」
「あ…あの!殿下は確かヤヴズ・ジェムに反旗を翻し、今まさに決戦の最中と伺っています!どうやってジャディード・マディーナへ来られたのですか…!?」
「そんな事はもうどうでも良いんだ。戦いは終わったのだからね…」
「終わった!?では殿下の軍が勝ったのですか!?」
「それはいずれ解るだろう…。今日はね、君にお礼を言いに来たんだ」
「お礼…ですか。僕はお礼を言われる筋合いはありません。けっきょく殿下を陛下の最期に立ち会わせる事は出来なかったんですから…」
「だが君はそのために努力してくれた。それに私は感謝しているんだよ。ありがとう、セイル。あのアルトリアという娘さんにも伝えてくれ」
「…え?アルトリアに会わなかったんですか?あいつ、どこかに出掛けたのかなぁ…?」
「…いや、そうじゃないんだ。私にはもう、こういう形で君に話し掛ける事しか出来ないんだよ…もう時間もあまり残されていないんだ…」
「そうなのですか…(お忍びで来てるのかな?)…でもアルシャッド殿下、あなたのようなえらいお方が僕のような者の事を気に懸けてくれた事、嬉しく思います。やっぱりあなたは心の優しい人だ…。邪な者達の手によってこの国は荒廃してしまった…でもあなたが王になってくれれば、きっとこの国は元に戻りますよ!僕も一臣下としてお支えします!」
「……セイル、ありがとう…でも、それは無理だ…私は王にはなれない…もう行かなければならないんだよ…」
「…?」
「セイル、私の最期の願いを聞いて欲しい…私の妹…サーラを支えてやってくれ…彼女は今とても厳しい立場に立たされているはずだから…」
「サーラさんが…?それは一体どういう事ですか?」
「頼んだよ…セイル……

………

……



「……んあ…?」
そこでセイルは目覚めた。
夢だったのだ。
(不思議な夢だったな…)
しかし、セイルは違和感を感じる夢にしては余りにリアルだったからである。
それにアルシャッド王太子殿下の言葉がセイルの頭の中に強く残っていた。
「・・・(勇者や騎士以前に不甲斐ない無力でダメな男にサーラさんの支えになれ・・・殿下は・・・何を期待しておられるんだ?)とにかく起きよう。このまま・・・部屋に引き籠ったままじゃ。何も解らない・・・」
アルシャッド王太子が自分に何を期待してるか解らないセイルは少し躊躇してしまう。
しかし、王太子アルシャッド殿下の必死な願いを無視できないセイルは不安ながらもベッドから降りる。
「こ・・・この部屋を出る何て久々だな・・・」

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