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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 259

「ふん、全く!(アルシャッドの問題が片付いたら。この馬鹿将軍たちも粛清しないといけないな。しかし、我が国の人材は屑ばっかりなんだ。使えるのはセイルとシャリーヤだけ。全く情けない限りだ)それでシャリーヤ、どうやってアルシャッドを亡き者にするのだ?」
ジェムはシャーリーヤにアルシャッドをどうやって亡き者にするか半信半疑で聞く。
この策にはジェムも懐疑的な面があったが、シャーリーヤの事だから何か良い策があると期待もしていた。
結局ジェムが頼れるのはセイルとシャリーヤしかいなかった。
実質的にイルシャ王国を支配してるとはいえジェムは裸の王様と同じであった。


その晩、反乱軍の幕営地に一人の来訪者があった。
アルシャッドは一人、自分の天幕で母シェヘラザードの度重なる横暴さに頭を悩ませていた。
「母上は無茶苦茶過ぎる…何とかお諫めせねば、無駄な犠牲者が増えるばかり…でも私には無理だろうなぁ…」
そこに侍従武官が現れて言った。
「殿下、実は殿下にお会いしたいと敵軍の将が一人、参っておるのですが…」
「敵が?…はて、一体誰だろう?」
「ジェディーン・デデンと名乗っておりました」
「おぉ!デデンか。彼は私の母方の遠縁に当たる男だ。過去に何度か会った事がある。通してくれ」
「し…しかし、親類とはいえ今は敵同士…良いのですか?」
「何を言う?例え敵でも身内は身内ではないか。心配などいらぬよ」

そしてデデンが通された。
「ジェディーン・デデン、面を上げよ」
「ははぁーっ!」
地面に平伏していたデデンが顔を上げる。

ジェディーン・デデン…そう、先王の弟君アル=アッディーンに仕え、アブラハムとナーセル、それにアブ・シル達が免職に追いやられる元凶となった男である。
その彼が何故こんな所に居るのか…。

「久し振りだなぁ、デデンよ。元気であったか?」
「は…はい、殿下…」
「して、今日は一体何の用かな?」
「そ…それは…そのぉ…」
口ごもるデデン。
その原因はアルシャッドの両脇に立った豚と枯れ木…ではなく王妃シェヘラザードと妹ドゥンヤザードであった。
(参ったなぁ…俺はアルシャッド王太子とだけ面会を希望したんだが…)
「フフン…まさかこうして敵味方として相まみえる事になるとはねえ、デデン?」
「あなた、アル=アッディーン殿下に仕えていたのではなくって?いつの間にヤヴズ・ジェムの手先に成り下がったのかしら?」
「ハハハ…まあ、色々ありまして…」

ナハルシャットでの浮気発覚事件の時、あの時あの場ではデデンと愛人の言葉を信じて許したアル=アッディーンであったが、次第に思い直し、デデン達に対して疑惑の念を抱くようになっていた。
主君のよそよそしい態度からそれを察したデデンは、ここらが潮時とアル=アッディーンからヤヴズ・ジェムにアッサリと鞍替えしたのであった。
そして人に取り入る能力に掛けてはセイルの父オルハンの上を行くデデンは、すぐにジェムの側近の一人に取り立てられた。
ちなみにアル=アッディーンだが、デデンに続いて愛人にも逃げられてしまい、ガックリきて病に伏し、そのままアッサリ死んでしまった。
もともと繊細な男だったのだ。
派手好きな性格は弱さの裏返しである。
誠に気の毒だが彼の今までの行いを見れば余り同情は出来ない。
その知らせを聞いてもデデンは少しも哀れとは思わなかった。
彼はそういう男だった。

「ま…まあまあ、母上、叔母上…そのように突っかからずとも良いではありませんか。して、デデンよ。用向きを伺おうか?」
「はい、アルシャッド殿下。実は…我が主ヤヴズ・ジェムが、貴殿との対談を望んでおられるのでございます」
「な…何と…!?」
「ジェムが対談ですってえぇぇっ!!?」
「信じられないわ…!」
三人は驚いた。
デデンは続ける。
「ジェム様は現状に非常に心を痛めておいでです。このまま両軍の争いが続けば犠牲者は更に増え、国土は荒廃する一方…そこで和解と言ってはなんですが、一時休戦の取り決めを結ばないかと…そのためにも反乱軍の総司令官であるアルシャッド殿下のご意見をお聞きしたいと仰せなのです。二人きりで腹を割って、この国の将来について話し合いたいと…」
「そ…それは、何と言うか…今すぐには返答は出来な…」
「その手には乗らないわぁっ!!!!」
戸惑うアルシャッドの言葉をシェヘラザードの怒声が遮った。
「は…母上ぇ!?」
「あのジェムの事…どうせ罠に決まっているわ!!!アルシャッドを一人で呼び出して殺すつもりでしょう!!!」
「…その可能性は高いわね」
姉よりはやや冷静なドゥンヤザードも同意見のようだ。
「そ…そのような事は決してございません!!」
慌てて否定するデデン。
だが今は何を言っても火に油を注ぐような物…。
「お黙り!!!お前はジェディーン家の恥曝しよ!!誰かぁ!!!この男の首を叩き斬りなさい!!」
「ひいぃぃ〜っ!!!?お…王妃殿下ぁ!!お許しを…!!」
デデンは泣きながら命乞いする。
ドゥンヤザードが助言した。
「お姉様、このような男でも血の繋がった親類です。命まで奪うのは忍びない…ここは百杖の打ち据えという事でいかがでしょう?」
つまり棒打ち百回という事である。
それは結構な確率で途中で死ぬ。
「…それもそうね。そうしましょう。…そういう訳よ!デデン!身内の情けに感謝なさい!」

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