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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 257



「嘘だあぁぁっ!!!!」
義勇軍への参加者が発表された時、ハディードはこう絶叫した。
彼は急いでマリクシャーの元へと走った。
「総督閣下ぁ!!総督閣下あぁぁ〜!!!」
するとマリクシャーの側近のハーシィが出て来て言った。
「うるさい!一体何の用だ!?」
「あぁ!ハーシィ将軍…総督閣下はどちらにおられますか!?至急お伺いしたい事があるのです!」
「残念だが総督は今お忙しいのだ!君などと会って話している暇は無い!それよりも君は名誉ある義勇軍司令官に任命されたはずではないかね?さっさと戻って出陣の準備にでも取り掛かりたまえ!」
「そ…その事なのです!この私が義勇軍などに選ばれるはずが無いのです!一緒に中央に戻ろうと総督がお約束してくださって……と…とにかくこれは何かの間違いなのです!どうか総督にお取り次ぎを!そうすれば全てが解るはずです!」
「間違い?そんな事は無い。この決定は総督閣下も承知の事だ…」
そう言ってニヤリとほくそ笑むハーシィ。
「…っ!!!!」
ハディードはマリクシャーに騙されていた事を悟った。

(結局、俺…利用されてただけだったんだ…)
ハディードは茫然自失状態で兵営へと引き返した。
「あっ、中隊長!」
声を掛けられ、見るとパサンと義勇軍に選ばれた数名の兵士達だった。
「この度は義勇軍の指揮官として従軍するそうで…よろしくお願いします!」
「あ…うん…そだね…」
「いや〜、ぶっちゃけ俺、中隊長の事ちょっと見直しちゃいましたよ〜」
「あ、俺も俺も!」
「考えてみれば何だかんだで中隊長も立場があって、それで志願したんだもんな」
「まあ、戦場に出る→即死亡って訳でもないし、俺ら前線では中隊長を盛り立てて行こうと思ってるんで、お互い一つ頑張りましょう」
「…お…お前ら…!」
(コイツら…案外いいとこあるじゃん)
ハディードは思った。
(それなのにマリクシャーの口車に乗って俺は…コイツらを戦場に送り込んで自分だけ助かろうと…)
ハディードは涙が溢れて来た。
「う…うぅぅ…っ」
「ちゅ、中隊長?」
「どうしたんすか?」
「何でもない…何でもないんだ…でもお前ら、絶対みんな生きて帰って来よう!一人も欠けずに…!」
何時も、自分たちを見下していたハディードが‘一人も欠けずに生きて帰ろうと'優しい言葉をかけ涙を流すのでパサンたちは一瞬目を丸くするが、ハディードの優しさに心を打たれパサンたちは敬礼する。
「「「は・・・はい、中隊長、頑張ります!」」」
「うむ!その意気だ。さてと、俺も戦の支度をするか。お前たちも頑張れよ」
パサンたちのお陰で心が少し軽くなったハディードは彼等の気持ちに応えるために戦支度の為に部屋に戻った。


パサンたちとハディードが結束を強めていた頃、一人部屋に籠って険しい顔のサラームは今回の内乱の過酷さと内乱終結後のイルシャ王国の惨状に予測して憂鬱になっていた。
(今回の内乱は確実に過酷な物だろう。しかも、勝者はなく。内乱後の我が国は無限地獄に等しい動乱の時代を迎える・・・特に西のあの国は絶対我が国に何か仕掛ける筈だ・・・)
翌日、義勇軍はイスカンダリアを出立し、前線へと向かった…。


一方、その前線ではアルシャッド(実際は王妃)率いる反乱軍と、ジェム率いる王軍とが激しい戦いを繰り広げていた。
双方の兵力は…反乱軍は勢いに乗って膨れ上がり5万、王軍はその倍の10万であった。
数から行けば王軍有利だが、士気は断然反乱軍の方が高い。
特にサーラが反乱軍に付いてからは士気は一気に上がった。

そのサーラが率いる東方鎮台軍3万は、まだ前線には到着していない。
ジェム配下の太守達が進軍を阻んでいたのだ。
サーラとしては早くアルシャッド軍と合流して新都ジャディード・マディーナを攻め落としたい所だったが、まずは彼らと戦わねばならなかった。

アルシャッド軍はアルシャッド軍で、食糧を強制的に徴発した事で民衆の支持を失いつつあった。
戦場で現地人の協力が得られないのは地味に厳しいし、中には食糧の供出を拒否してジェム側に付く州も少なくなかった。
それでも王妃シェヘラザードは依然、強気だった。

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