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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 256

「え…えぇ〜?そ…そんな事ないよぉ〜?あくまで君達の意思による志願だよぉ〜?」
言いながら目を逸らすハディード。
兵士達は怒った。
「汚え!!」
「どうせ逆らえないんだったら普通に命令された方がマシだ!!何なんだよ!?この“選択肢はあくまで君達にあるんだよ”的なスタンスは!?」
「どうせ後でジェムが不利になった時にマリクシャーのヤロウが『あいつらが勝手にやった事だ』って言い逃れ出来るように考慮しての事なんだろうぜ!」
「ふざけるな!!馬鹿にしやがって!!」
「あわわわわわ…」
今にも殴りかかって来そうな怒り心頭の兵士達に、ハディードはすっかり萎縮して怯えている。
カシール達は(純真無垢な彼らは心の底から自分達が正しいと信じていたので)兵士達の話を聞いて戸惑っている。
そこへ…
「静まれえぇぇっ!!!!」
サラームが叫んだ。
「「「……」」」
歴戦の老兵の一喝に兵士達は黙り込む。
「ひんっ!!ぎゃんっ!!」
同じくハディードも突然現れたサラームの一喝にビビり黙るが、突然の事で腰を抜かしてこける。
部下たちの手前で情けない醜態を晒すハディードをサラームは笑わことはせず大丈夫ですかと手を差し伸べる。
「中隊長殿、大丈夫ですか」
「すまない・・・サラーム小隊長」
バツの悪い顔でハディードはサラームに礼を言う。

一方、ハディードが部下たちの前で情けない姿を晒してる頃、総督マリクシャーと側近のハーシィはハディードの単純ぶりを嘲笑っていた。
「いや〜ハディードが単純でチョロい男で助かった」
「はい、ああいう男は餌と鞭を使い分けるのが一番です。所で閣下、ハディードとの約束はどうします?」
ハディードとの約束はどうするかハーシィはマリクシャー総督に訊ねると。
マリクシャーはふんぞり返って守る気はないことをハーシィに言う。
「無論、無視だ!無視だ!どうせ今回の内乱は激戦だから。あの無能なら確実に戦死だろう」
「流石は閣下であります。あんな無能な役立たずは捨て石にするのが一番です」
帰れると信じ張り切るハディードであったが、マリクシャーたち上司は約束を守る気はなかった。

非常に酷い話であるが、強きに従い弱きを挫くのが現在のイルシャ貴族たちなのである。

そして、パサンたちはと言うと。


「お前達、ここは黙って志願しようじゃないか」
「サ…サラーム小隊長殿!?」
「アナタまで何を言い出すんですか!?」
「まあ聞け…確かにこれは命令ではない。だが事実上命令されているのと同じ事だ。ならば従うのが道理…軍隊とはそういう物だと俺は思う。他の中隊の連中もきっとそう考えたんだろう…」
「「「……」」」
皆は沈黙してしまった。
サラームは改めて尋ねる。
「では皆、義勇軍に志願という事で良いな?」
「…はい」
「仕方ありません…」
「嫌とは言えねえ悲しき宮仕えだもんな…」
皆も渋々ながら納得するしか無かった。
「サ…サラーム、ありがとう。君ってば良いヤツだなぁ。いや、さすがだよ。うんうん」
結果としてサラームに助けられた形のハディードは、サラームをヨイショする。
だがサラームはハディードの肩に手を置いて言った。
「…中隊長殿、私だって本当はこんな不条理、従いたくはありません。そこを曲げて部下達を説得した訳です。ですからアナタも上官としての義務を果たしてくれる事、期待していますよ?」
サラームはハディードの肩に置いた手にグッと力を込める。
「は…はひ…」

「…という訳でイスカンダリア守備隊は全員が義勇軍に志願いたしました。マリクシャー様」
「カ〜ッカッカッカッ!!それではさっそく人選に掛かるとしようかハーシィ?」
「はい閣下!各中隊から居なくなっても構わない不良兵士を選抜して義勇軍に入れましょう!」
マリクシャーとハーシィは書類選考に取り掛かった。
「ふ〜む…このフェラーハ・パサンという平民上がりの兵は規則違反で懲罰ばかりだな…よし、義勇軍に入れよう」
「それより閣下、サラーム・マーディンも義勇軍に入れるのですか?」
「うむ、入れる」
「しかし彼は兵達から慕われています。中間管理職として下の者達をまとめるのに適任…」
「そんな者は必要無い!兵隊達は私の命令だけを聞いて従っていれば良いのだ!」
「はあ、解りました」
そんな調子で各中隊から約一割ほどが義勇軍に“選出”された。
「さて、残るはヤツラの指揮官だな」
「はい、これだけは貴族に就いてもらう事になりますが…」
「そんなの一人しかおるまい」
「ですな」

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