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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 254

そして彼は言った。
「…我々は、ヤヴズ・ジェム大執政閣下の軍旗の下で、逆賊アルシャッドとイルシャ・サーラ討伐のために戦う!!」
「「「…っ!!!?」」」
その言葉を聞いた瞬間、兵士達の多くは耳を疑った。
ジェムこそが国を乗っ取って権勢を欲しいままにしている奸賊であり、アルシャッドやサーラは国をあるべき正しい姿に戻すために挙兵した正義の軍…というのが多くの下級兵士達の認識だったからだ。
「マジかよ…俺ら、サーラさんの敵になっちまうのか…?」
パサンも愕然とつぶやく。
「…ただし!!」
マリクシャーは言った。
「…全軍を出兵させてしまっては街の防衛が疎かになる!!万一の事があっては王家に対して申し訳が立たん!!そこで我々は義勇兵を募る事とした!!志願者は一週間以内に名乗り出よ!!」
「マジかよ…!」
希望が見えた…とパサンは思った。
志願という形を取るなら自分はサーラと戦わなくて済む。
戦いたいヤツだけ勝手に戦えば良いのだ。
兵士達はざわめき始めた。
パサンの同僚は言う。
「おい、お前の望んでた戦争だぜ?志願しないのか?」
「冗談じゃねえ!誰が好き好んでサーラさんの敵に志願するかよ!」
立身出世の野望に燃えジェムを倒そうとパサンは意気込んでいたのにヘタレ総督マリクシャーはジェムに付きサーラ姫と敵対する非常な結果になった。
例え出世のチャンスでも愛するサーラ姫に剣を向けるなんてパサンには出来ない事であった。
それにジェムを倒して新しいイルシャの王になったサーラに仕えるのがパサンの夢でもある。


パサンの大それた夢を無惨に砕き保身と出世しか考えてないマリクシャー総督は話を終えると解散と命令して営庭を去って総督府に戻った。
「以上である。各自持ち場に付きたまえ解散!」
持ち場に戻る守備隊の兵士たちの中でジェムに従う決定に不服のパサンは怒りで爆発寸前であった。
「全く、何でジェムのグズ野郎に従わないといけないんだ」
「落ち着け。あのヘタレ総督に期待したのが間違いなんだよ。義勇兵にしてもジェムが勝っても負けても良い場合の保険だろう」
同僚が宥めてくれたお陰でパサンは少しだけ落ち着く。
「元からあんなダメ総督信用してねえからな。でも、俺は諦めねえからな!」

「諦めねえってお前、何する気だ?」
「脱走する!脱走してサーラさんの元に馳せ参じて、彼女の下で戦うんだよ!」
「マジかよ!?脱走が見つかったら罪に問われて、騎士としての身分も剥奪されるぞ!?せっかく平民から騎士になれたのに馬鹿な真似するなよ!」
「騎士の身分ったって俺の場合はお前ら世襲の騎士とは違って一代限りだ!だったら俺は後悔しない生き方をしてえ!」
意気込むパサン。
そこへ…
「パサン、滅多な事を言うな」
「…サラーム小隊長殿!?」
「お前がサーラ殿下を慕う気持ちは解る。正直俺も総督の決定は理解し難い。だが上の決定は絶対だ。それが軍隊という物だからな。パサン、これを解れとは言わん。だがお前はイスカンダリア守備隊の兵士で、その親玉はマリクシャー総督閣下…そういう事だ」
「小隊長殿…」
「もしお前が脱走すると言うのなら俺は力づくでもお前を止める。解ったか、パサン?まぁ、理不尽に感じるかも知れんが今は耐えろ。必ず事態が好転する時が来る…」
「くっ…チクショオォォッ!!!!」
パサンは悔しさを噛み締めて地面を殴った。


それから一週間が過ぎたが義勇兵は全く集まらなかった。
「ハーシィ!!これは一体どういう事だ!?」
イスカンダリア総督ハッサース・マリクシャーは側近のハーシィを呼んで怒鳴り付けた。
「はあ、やはりヤヴズ・ジェムは兵士達には人気が無いようですなぁ…これがサーラ姫だったら真逆の結果だったのでしょうが…」
「そんな事言ったってジェムは味方に付けば反乱鎮圧後、中央に大臣級の椅子を用意してくれると約束してくれたが、サーラやアルシャッドからは何も言って来んではないか!だから今はポーズだけでもジェムに味方しておこうと思って義勇兵を募集したのに…」
「こうなったら仕方ありませんな…各中隊に圧力を掛けて半強制的に志願させましょう」
「それは良い!各中隊の隊長から働きかけさせよう」

かくしてパサン達の上官であるハディードも呼ばれた。
「うへへへへ…あのぉ、本日はどういった御用件でございましょうか?総督閣下…」
「うむ!ハディード、義勇軍の件だが君の中隊からは何人志願しているかね?」
「えぇと…5人くらいでしょうか?」
「2人だ!」
「そ…そうでございました!2人でした。どうも…うへへへへへ」

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