PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 251
 253
の最後へ

剣の主 253

夢みたいな事を言うパサンに同僚は世の中には絶対的に越えられない壁とそれをあっさりぶっ壊す天才がいるのを話す。
「チャンスって言うがよ。兵も金もないしがない一騎士の俺たちは所詮お偉いさんたちの手駒に使われるのがオチだ凡人は壁を壊すのは無理なんだよ。まあ、圧倒的な武勇とカリスマを備えてゼノン帝国に逆らい戦っている剣奴上がりの旋風のエルティアや一騎当万と言われている聖剣ダモクレスの勇者バン・バッカーズみたいな桁外れの力がある奴は壁なんて平然と破壊出来るんだろうな」

「エルティアやバン・バッカーズだって神じゃねえだろ。俺達と同じ人間だ。時代ってのは時として一人の人間に壮大な運命を託す時があるからな…ヤツラはたまたまそこに居たんだ。もちろん実力もあったろう…だが運が占める要素はデカかったと思うぜ。もしほんの少しでも時や場所がズレていたら、エルティアやバン・バッカーズの立っていた位置には全く違う人間が立っていただろう。だいたいヤツラの英雄としての像だって実際に本人に会った事も無い連中がイメージによって作った物だろうがよ。完全無欠で最強無敵の英雄なんて何だか非人間的で、どうも俺は好きになれねえな」
「つまり何が言いてえんだ?お前は…」
「だから!ヤツラに出来た事が俺達に出来ねえはずがねえって事さ!」
「話の前後が“だから”で結び付いてねえよ。しかしパサン、お前はロマンチストかと思いきや意外とリアリストでもある…と見せかけて、やっぱりロマンチストなんだな…いや、自分の事に関してはロマンチストになるのか?都合の良いヤロウだ」
「お前は俺と真逆のようだな」
「そうさ。人間は多様で矛盾した生き物なんだ。俺もお前もな」
そんな話をしていると、まだ若い中隊長のハディードが、かん高い声を張り上げながらやって来た。
「非常呼集ぅーっ!!!非常呼集ぅーっ!!!おい!!そこのお前ら!!非常呼集だ!!すぐに営庭に集まれえぇぇいっ!!!」
「えぇ〜?」
「ダリぃ…」
「バカヤローッ!!!!俺の命令が聞けんのかぁ!!!?良いから集まれって言ったら集まるんだよおぉぉ!!!!」
ハディードは顔を真っ赤にして唾を飛ばして怒鳴り散らす。
そこへ、初老の小隊長サラームが現れて言った。
「二人とも、総督閣下から“重大な発表”があるとの事だ。すぐに営庭に集合しろ」
「!!…はい!小隊長殿!」
「解りました!」
それを聞いた二人はバッと立ち上がった。
「エ〜ッ!?エ〜ッ!?エェ〜ッ!!?何この差!?俺の時は『えぇ〜?』とか『ダリぃ…』とか言ってたのに!サラームの時はキチンと言う事聞いちゃう訳ぇ!?え!?だって俺の方がサラームより階級は上だよね!?え!?何で!?完全におかしいよね!?これ!何!?この理不尽さ!」
相変わらずギャーギャーわめき散らすだけのハディードに、パサンは溜め息混じりに応える。
「だって…中隊長はただ『俺の言うこと聞けー!』って怒鳴り散らしてただけじゃないっすか。小隊長殿は“何で営庭に行かなきゃいけないのか”をちゃんと教えてくれましたよね?」
「そうそう、小隊長殿は俺らに命令する時ちゃんと納得の行く説明をしてくれるんっすよね。そしたら『あ、だから命令に従わなきゃダメなのかぁ』ってなるもんね…」
「うんうん、中隊長もそこら辺ちゃんとしなきゃダメッスよ?部下は自分の思い通りに動く土人形じゃないんだから…」
「ふっざけんなーっ!!!!なめんじゃねーぞゴラァッ!!!!お前らみんな揃って俺の事バカにしやがってコノヤローッ!!!!俺はお前らなんかに絶対負けねーかんなーっ!!!!バカ!!バカ!!バーカ!!!」
パサンも同僚も言葉が無かった。
「……(あぁ…この人はダメだ…)」
「……(もうダメだ…この人は…)」
サラームはハディードを宥めつつ二人に言う。
「中隊長殿、そこら辺にしときましょう…お前ら、中隊長殿に謝れ」
「えぇ…?」
「何でッスか…?」
「良いから謝るんだ。上官にあるまじき言動を取ったんだから当然だろう」
「は〜い…ごめんなさい中隊長」
「すいません中隊長」
「フンッ!!良いだろう!!俺は寛大だからな!!許してやる!!感謝しろ!!畏れ敬え!!そして平伏せ!!」
「…さぁ、我々も早く営庭に行きましょうねぇ、中隊長殿…」
「…あっ!!サラーム!!待てよー!!今コイツらに土下座させるんだからぁー!!」
ハディードとサラームは行ってしまった。
「ハァ…俺達も行くか、パサン」
「そうだな…」


そして営庭にイスカンダリア守備隊の兵士達が顔を揃えた。
そこへ総督のマリクシャー・ハッサースが姿を現す。
「あぁ〜…諸君!!本日集まって貰ったのは他でもない!!諸君らも知っての通り、今イルシャ王国は真っ二つに割れておる!!一方は大執政ヤヴズ・ジェムを中心とする国軍!!もう一方はアルシャッド王太子やイルシャ・サーラ王女の属する反乱軍である!!事ここに至っては我がイスカンダリア市も座して事態を静観しているという訳にはいかなくなった!!そこで我々は…」
「「「……っ!!!!」」」
皆は固唾を飲んで総督の言葉を待った。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す