PiPi's World 投稿小説

剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 240
 242
の最後へ

剣の主 242

続いてミレルも意見を述べた。
「あのぉ…私はあの人を助ける義理は無いと思います。そもそもオルハン様はこの家を捨てた訳ですし…その時点でもう縁は切れたと考えるべきじゃないですか。ましてやその原因となった愛人の方なんて…この家に助けを求めて来るなんてお門違いも良い所だと思いますよ」
「そうよ!!あんな女、売女にでも身を落としてどこぞで野垂れ死ねば良いのよ!!」
援護射撃を受けてヤスミーンも意気軒昂だ。
セイルとウマルはタジタジである。
「お…お祖父様…なんか女性陣、みんな冷たくないですか…?」
「うぅ〜む…女は同性に対しては厳しいからのう〜…」
話し合いは完全に男女で決裂してしまった。
…かと思われた矢先、アルトリアが一つの提案をした。
「とりあえず赤ん坊が産まれるまでは慈悲の精神でここに置いてやって、それからまた考えるというのはどうです?」
「「「…!」」」
そして、その折衷案が採用されたのであった。

セイルとウマルは直ぐに折衷案をウズマに伝えるとオルハンがいなければ何も出来ない非力な自分の立場を理解している彼女はあっさりと受け入れた。
本当は文句を言ってやりたいが、今は愛しい夫の子を生むのが先決だから我慢した。
「当面はそれで良いわよ・・・あの人の赤ちゃんを無事に生むのが今の私には大切だから」
「そう言ってくれると助かるわい。ヤスミーンさんを筆頭に家の女たちが反対してのう・・・」
「今、母は頭がパニックしてるんで時間が経てば考えが変わると思います」
「家庭崩壊の原因を作った愛人が図々しく厄介になろうとするから当然よ。まあ、とりあえず休ませてもらうわね」

こうして、クルアーン家に新しい同居人が加わったのであった…。


さて、同じ新都でも少し離れた所…未だ建設中のとある現場では…
「ハァ…ハァ…ち…ちくしょう…このネコ車(一輪車)ってヤツは扱いが難しいんだよなぁ…」
ナーセルはレンガを満載した一輪車をフラフラさせながら進んでいる。
その隣ではアブラハムが同じようにフラついていた。
「ほ…ほんとだよね…何度使っても慣れないってゆうか…うわぁ〜っ!!?」
 ドガッシャアァーンッ!!!!
「バカヤローッ!!!!壊したレンガの分、給料から引くからなぁ!!!」
現場監督が真っ赤な顔で怒鳴りつけた。
「す…すいませぇ〜ん!!!!」
「ドンマイ、アブラハム…仕方ないよ、これホント難しいし…」
「うぅ…それだけじゃないよぉ…ロクに休憩時間も与えられず、ほぼ丸一日ぶっ通しで働き通し…体力も気力ももう限界だ…」
「確かに…衛士隊に居た頃も限界ギリギリだったけど…」
「今はコキ使われる上に給料も安いんだからやってらんないよぉ…」
「テメェらぁ!!!無駄口叩いてんじゃねえぞぉ!!!給料引かれてえのかぁ!!!」
「「は…はい!!!すいませぇ〜ん!!!」」

ようやくその日の労働が終わり、一日分の給金を手渡された二人は、ボロボロの体を引きずって労務者達の寝起きするタコ部屋へと帰る…帰ったからといって何か楽しみがある訳でも無い。
ただ泥のように眠るだけだ…。

工事は突貫で休み無く進められている。
ゆえに労務者達の中には希望して連続勤務に就く者も居るのだ。
人間じゃない…と二人は思う。
確かに働けば働いた分だけ給金は貰えるが、何というか、もう、狂っているとしか思えない。
そんな二人の前に、いかにもヤバそうな4〜5人の男達が立ち塞がる。
「よぉ、お二人さぁん…近ごろ賭場に顔出さねえじゃねえかぁ…あぁん?」
その中のリーダー格で顔に大きな傷のある男が凄みながら歩み寄ってきた。
「あ!…ガ…ガザフィさん…」
「い…いやぁ…僕ら、賭事はあんまり得意じゃないかなぁ…みたいな…?」
この男の名はガザフィ。
現場の近くにある賭場を仕切っているチンピラ共の兄貴分で、イカサマ賭博で労務者達の僅かな稼ぎを巻き上げるハゲタカのような男である。
二人も以前、誘いを断りきれず半強制的に賭博に行かされ、その日の給金を全て巻き上げられてしまった事があった。
アブラハムは小声でナーセルに話し掛ける。
(ど…どうしよう…?)
(嫌だよ、俺…行きたくない…行ったらまたイカサマされて全額巻き上げられるに決まってるじゃないか…)
(だよな…でも断ったら何されるか…?)
そんな二人にガザフィはニヤニヤ笑いながら言った。
「なぁ…お二人さん…俺らぁ、血ぃ見るのは好きじゃねえんだ…この意味、解るよな?」
「「ひいぃぃ〜っ!!!?」」
その時だった。
「そこまでにしとけ!!この悪党ども!!」
後ろから声がし、二人が振り向くと、そこには…
「「ア…アブ・シル先輩!!?」」
…何と、そこに居たのはアブ・シルだった。
「ア…アブラハム君!ナーセル君!君達もこの現場で働いてたのか!!?」
アブ・シルの方も驚いている。
二人と解って助けた訳ではなかったらしい。
「アブ・シル…テメェ、たった一人で俺らとタイマン張ろうってのかぁ…あぁん!?」
「一人じゃないぜ」
見ると労務者達がどんどん集まって来た。
その数はチンピラ共の二倍…三倍…と膨れ上がっていく。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す