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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 241

「そ…それは…ちょっと事情があるのよ…」
ウズマは少し伏し目がちになる。
セイルは何か訳ありのようだと悟った。
「事情…とは何ですか?」
「何が事情よ!!?今すぐ私達の前から消えなさい!!キイィーッ!!!!」
「…ミレル、母様をお部屋へお連れして休ませて差し上げて…アルトリアも手伝ってやってくれ」
「は…はい!」
「了解しました。さぁ、参りましょうヤスミーン殿…」
「い…嫌ぁ!!離してぇ〜!!」
ヤスミーンは連れて行かれ、その場にはセイル、ウズマ、それとウマルが残った。
「…さてウズマさん、改めてあなたがこの家を尋ねて来た理由というのをお聞かせ願いたいのですが…?」
「単刀直入に言うわ。私をここに居候させてちょうだい」
「はあ!!?」
「あ…あんた、正気かね!?」
セイルとウマルは仰天した。
「い…居候って…あなた今父と暮らしてるんじゃないんですか!?」
「あの人は、もう、いない…」
ウズマは訳を話した。
オルハンは逮捕され、全財産は没収されて無一文になってしまった事。
自分は天涯孤独で頼れる身内もおらず、オルハンが最後に残した「セイルを頼れ」という言葉だけを頼りにここへ来た事。
オルハンが逮捕され何故ウズマが自分たちを頼って来たのか知りセイルは納得すると同時に父の苦境に気付けなかった自分を責める。
「父様が苦しんでたのに全く気付けなかったなんて、僕は最低だ」
「セイル、自分を責めるでない。オルハンはお前に迷惑をかけたくなかったんだろう。わしはそんな気がする…」
「あの人も、そんな事を言ってたわ…最近はよく息子さんの活躍や出世をまるで自分の事のように喜んで私に話してたわよ。だから息子さんを巻き込みたくなかったのね」
「父様…そこまで僕の事を…」
「まあ、私も最初はあんた達を頼るのは気が引けたわよ。でも、財産は全部没収されたから。もうあんた達に縋るしか無いの…ここで断られたらお腹の子と二人で生きて行くにはもう娼婦にでもなるしか道は無いのよ…」
オルハンとの愛の結晶が宿るお腹をウズマはさすりながら不安な胸中をセイルとウマルに話す。

一方、別室ではヤスミーンが泣き喚き、それをアルトリアとミレルの二人がなだめていた。
「あ…あんな女狐の話なんて聞く事ないわ!!すぐに追い出してしまえば良いのに!!セイルちゃんは一体何を考えてるのよぉ!?」
「まあまあヤスミーン殿、セイル様にはセイル様のお考えがあるのですよ…」
「あなた達だってそうよ!!何であの女の味方をするの!?あぁ!!私は独りだわ!!この家には誰も私の味方は居ないのよぉ!!うああぁぁぁ〜〜〜ん!!!」
「…いや、敵とか味方とかそういう問題では…」
「お…奥様!私は奥様の味方です!ですからご安心ください!」
「グスン…本当?ミレル…」
「本当です!本当に決まってるじゃないですか!」
「…本当の本当?」
「本当の本当ですよ奥様。ですからもう泣かないでください。奥様が悲しいと私も悲しいです」
「…うん、ごめんねミレル。私もう泣かない」
そのやり取りを見ていたアルトリアは思う。
(すごい!泣き止んだ…さすがミレル殿、仕える主の気性を良く理解しておられる。侍女の鑑だな。私も見習うべき所があるかも知れん…)

そこへ、セイルが現れて言った。
「母様、ちょっと来てください。話があります…」
「なあに?セイルちゃん」
「良いから、ちょっと…お祖父様も交えて三人で少し話したいので…」
アルトリアは尋ねた。
「セイル様、私とミレル殿はどうすれば良いですか?」
「そうだなぁ…一緒に来てくれ。君達の意見も参考に聞きたいからね…」

そしてセイル、ウマル、ヤスミーン、アルトリア、ミレルの五人が居間に顔を揃えた。
ちなみにウズマは別室に待たせている。
話とは…もちろんウズマをクルアーン家に受け入れるか否かであった。
セイルはオルハンが白衛隊に逮捕された事、ウズマは行き場が無い事などを簡潔に伝えた上で言った。
「…という訳なんだ。それで僕の意見を言うね。僕はあのウズマさんを居候させても良いと思…」
「私は断固反対です!!!!」
「か…母様…(言い終わらない内に否定された…)」
ウマルが窘める。
「まあまあヤスミーンさん、とりあえずセイルの話も聞いてみようじゃないか」
「そう言うお義父様のご意見はどうなんですか?」
「ワ…ワシかい?ワシは…そうじゃのう…まぁ、居させてあげても良いかなぁ…と…」
「お義父様まで!!?二人とも、まさかあの女の色香に惑わされたんじゃないでしょうね!?」
「そ…そんな訳ないじゃないですか!!自分の父親の内縁の妻ですよ!?」
「ワシだって!!だいたいワシ、もう若い女に色気を感じるような歳じゃないよ…」
「ふ〜ん…どうかしら?」
「信じてください母様!別に僕ら下心とか無いですから!…ウズマさんには身寄りが無いんですよ?財産も没収されてしまいましたし…ここを追い出されたらもう彼女は体を売るしか生きて行く術が無いんです。お腹に赤ちゃんがいるのに、それはちょっと酷じゃありませんか…どうせ空き部屋もありますし…」
その話を聞いていたアルトリアがふっと口を開いた。
「なるほど…そう言えば私がこの家に居候させていただけているのも、クルアーン家の皆さんが身寄りの無い私にご同情くださったからでしたしね…」
「そうだろ!?アルトリアも彼女と近い立場だから解るよね!」
「…ちょっと待ってください。私と彼女とは立場が違いますよ。私は家庭を崩壊させてはおりませんので…同列に語られるのは心外です」

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