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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 240

「ヤヴズ・ジェム!!テメェは冷酷で頭の良いキャラを気取っているようだが、俺が見た限りテメェはそんなに頭が良いとは思えねえし冷酷でもねえ!いざという時の冷静さを欠く人間は冷酷ではなくタダのサディストだ!それにテメェが今まで巡らせてきた陰謀は、実はガキでも思い付く小細工や力押しだ!それでも上手くいってたのはヤヴズという名があったからさ!まったくテメェのように目下の人間を見下して威張り散らす事しか出来ねえ虚しい人間でも、大貴族の家に生まれさえすりゃあご機嫌な人生って訳だ!クソッタレめ!反吐(へど)が出らぁ!最後に俺が人生の先輩として一つ良い事を教えてやるから耳の穴をかっぽじってよ〜く聞きやがれ!物事が上手くいかなかった時、すぐに言い訳したり他人のせいにしたりして自分の欠点や過ちを認めようとしねえ人間は指導者として失格だ!そんなヤツには誰も付いて来ねえ!テメェがその性格を直さねえ限りテメェの天下も長くはねえぜ!」
「……」
勢いに任せて一気にまくし立てたオルハンに、さすがのジェムも返す言葉も無い。
ジェムは無表情で呆然としていたが、やがて静かに笑い始めた。
「…フ…フフフ…フフフフフフ…」
「……」
今度はオルハンが黙る番だ。
一時の興奮が去り、冷静さが戻って来たのだ。
だが彼には後悔は無かった。
ジェムは笑いながら(目は笑っていない)シャリーヤに命じた。
「フ…フフ…フフフ……シャリーヤ…ハイヤーム博士の作った真鍮の雄牛を持って来い…今日はとろ火でじっくり時間を掛けて焼いてやろうと思うんだ…」
「ジェ…ジェム様…」
シャリーヤは耳打ちした。
「…この男があのクルアーン・セイルの父親である事をお忘れですか?この男を殺せばセイルはジェム様を恨み離反する恐れもあります。それでも宜しいのですか?」
「む……」
ジェムは黙った。
彼は彼なりにセイルに対して友情じみた感情を抱いていたのだ。
「…解った。だがこの僕に向かって暴言を吐いた者を許す訳にはいかん。地下牢へ閉じ込めておけ…追って沙汰を下す」
「はっ!」
ちなみにシャリーヤがジェムにオルハン処刑を思いとどまらせたのはセイルのためでも、ましてやオルハンのためでもない。
このようなキ○ガイのために結果的にセイルがジェムの元を去ればジェムが悲しむ。
それは彼女の望む所ではなかった。


ジェムの寵愛を受けている臣下達は新都の一等地に身分に応じた屋敷を与えられていた。
セイルもその一人であり、そこそこ立派な邸宅を与えられ、そこに母ヤスミーンと祖父ウマルとミレルら使用人達と共に暮らしていた。

その日の夜、帰宅したセイルは、ヤスミーンとウマルと三人での夕食を終えた後、自室で書物に目を通していた。
「はい、王手〜」
「うぅ…ま…待った」
「アンタさっきから“待った”ばっかじゃないのよ〜」
同じ部屋ではアルトリアがナシートと将棋に似たこの国のボードゲームに興じている。
静かな夜だった…。

「ん……?」
ふとセイルは気付いた。
階下が何やら騒がしいのだ。
「何だろう…何かあったのかな…?」
首を傾げていると扉が勢い良く開いてミレルが部屋に飛び込んで来た。
「た…大変です坊ちゃまぁ!!一大事ですぅ〜!!」
「ど…どうしたんだい、ミレル?」
「オ…オルハン様の妊娠した愛人を名乗る方が坊ちゃまに会いたいと奥様が大変なお怒りで大旦那様はそれを止めようとなさって転倒してもうエライ騒ぎで収集が付きません!!」
「まず君が落ち着けよ」
セイルに諭されミレルは落ち着きを取り戻すと事の経緯を説明する。
「す・・・すいません・・・まさかオルハン様の愛人の方がお屋敷に来るなんて夢にも思いませんでした・・・それに彼女はオルハン様の子を身籠ってるようです」
「それを聞いて・・・母様、ヒステリーを起こしたんだね。お祖父様や母様には折を見て話すつもりだったけど・・・今は母さまを止めよう」

セイル達が階下へ降りて行くと、ヤスミーンが見知らぬ美女と揉めており、それをウマルが間に立って諫めていた。
「この泥棒猫!!殺してやるわぁ〜!!」
「何よ!!あんたが悪いんじゃないの!!あの人の本当の気持ちも知らないで!!あの人はねぇ、心の弱い人だったのよ!!ただ愛を求めてただけだったのよ!!」
「二人とも落ち着きなさい!!アイタタタ…腰が…」

「ハァ…何なんですか?この茶番劇は…」
アルトリアは呆れて溜め息をつくが、セイルはその中に割って入った。
「二人とも落ち着いて!お祖父様、大丈夫ですか?」
「腰を打ったぁ…セイル、後は任せたぞ」
「分かりました」
「セイルちゃん!!どいて!!そいつ殺せない!!」
「殺さないでください母様!…てゆうかあなた、えぇっと…」
「ウズマよ。あんたがあの人…オルハンの息子セイルね」
「そうです、僕がセイルです。…それにしてもウズマさん、一体どういうつもりですか?僕達にとってあなたは間接的にとはいえ家庭を崩壊させた一因です。それが今さら僕達の前に姿を現すなんて…正直母様の怒りも解りますよ」

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