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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 238

「黙れ黙れ黙れえぇーっ!!言い訳をするな!そもそも籠城戦がここまで長引いているのはお前達が無能なせいではないか!それを棚に上げて僕の政策を非難するとは良い度胸だな!?」
「か…閣下!私は別に閣下を非難する気など毛頭…」
「シャリーヤ!この男の首をハネろ!首は酒に漬けて太守達の元へ送り返してやれ!」
「かしこまりました、閣下」
「ひいぃぃ〜!!?お…お助けえぇ…!!」
哀れ軍使は首を斬られ、その首はジェムの意向を記した書と共に攻城中の太守連合軍の陣へと送られたのであった…。

その場の怒りに任せて処断したジェムであったが、次第に落ち着きを取り戻し、こう思い直した。
「…国内の食糧不足は何とかせねばならんな…よし、クルアーン・オルハンを呼べ!」

そしてオルハンが呼ばれた。
「ヤヴズ・ジェム閣下!クルアーン・オルハン、参りました!」
「うむ、よく来た。実はな、売った食糧の一部を買い戻してもらいたいのだ」
「はあ…?」
首を傾げるオルハンにジェムは言う。
「食糧が無ければ戦争も出来ん。新しい都を完成させる事も大切だが、今は反乱の鎮圧が優先だ。頼むぞ」
「ははあ!お任せくださいませ!」
恭しく頭を下げオルハンは早速食料買い戻すためにジェムの陣幕を後にする。

「この戦は絶対に敗けられん。しかも、アルシャッド何かに負けるなんて末代までの恥だ」
何かに憑りつかれたようにジェムは敗けられないと呟く。
せっかく手にいれた覇権がヘタレなアルシャッドと像女シェヘラザードに奪われるなんてジェムにとってはあってはならない事であった。

そんな苛立ち余裕がないジェムとは異なり有利なジェディーン家側はシェヘラザード王妃と妹のドゥンヤザードは上機嫌であった。
「ほっほっほ、今頃ジェムの奴は我等を攻め落とせず。相当カリカリしてるでしょうね〜」
「我々、今まで舐めたバチがあったのよ。姉上、各地の諸侯や太守たちの元に密使を送りましたわ。ジェムが不利と解れば我々に合力する筈ですからね〜」
「流石は我が妹、卒がないわね」
「姉上程では無くてよ〜」
しかし、母と叔母のやり取りを聞きながらアルシャッド王太子は全く楽観視してなかった。
(あのジェムが指を喰えたまま、何もしないはずがない)

母たちにジェムを侮るのは良くないと諫言したかったが、自分の意見を聞き入れる筈がないのでアルシャッドは諦めるしかなかった。
「クルアーン・セイルくんは元気でやってるかな(彼が私の側にいたら母を止められたかも・・・でも、彼に頼るなんて情けないな)」
そして、窓の空を見上げアルシャッドは亡き父王アフメトと自分を会わせようと奔走してくれたセイルを思い出すと同時に自分の不甲斐なさを責める。

さて、売った食料を買い戻せと命じられたオルハンであったが、その交渉はすぐに頓挫した。
商人達に足元を見られ、何と売り値の倍以上の額をふっかけられてしまったのだった。
「そ…それは私の一存では決めかねる!」
…という訳でジェムに報告すると「馬鹿馬鹿しい!止めだ!」と言われ、それで交渉を打ち切ってしまった。
士族や貴族には変に潔い所がある。

一方、ジェディーン家の城を包囲している軍の司令官たる太守達の元に、あの使者の首とジェムの書状が届けられた。
「それで、ジェム様は何と…?」
「食料は送ってくださるのか?」
「うむ…この書状によるとジェム様はエラくお怒りだ。あと一週間の内に城を落とさねば我ら全員の首をハネると書いてある。もちろん食料は来ない」
「何と…」
「我らの領地も食料不足で苦しいのに…無理を押して出兵の要請に応じた結果がこれか…クソッ!」
「あの小僧にはいい加減に愛想が尽きた!こうなったからには我々も反乱軍に加わって逆にジェムを討とう!」
「おう!」
「そうしよう!」
こうして、一時的な怒りに任せて処断したせいで、事態はジェムにとって最悪の方向へと転がったのであった。

「な…何だとおぉぉ…っ!!?」
太守達が寝返ってジェディーン家の城の包囲を解き、反乱軍に合流したという報告を受けたジェムは激しく驚愕し、憤慨した。
「あ…あいつら赦さんぞぉ!!!皆殺しにしてやる!!!」
そして彼はこう考えた。
「こうなったのも全ては食料の不足が原因だ!!!クルアーン・オルハンを呼べえぇぇーい!!!!」
自分の対処が悪かったためだとは考えない。
だからこそ豪胆に振る舞える。
大物の正体は意外とそんなもんだ。

そして白衛兵の一隊がオルハンの屋敷に差し向けられた。
「クルアーン・オルハン殿!大執政閣下が至急のお呼びです!我らと共に王宮まで参られたい!」
「も…申し訳ございません、旦那様はご病気でございまして…」
「何だとぉ!?」
…という具合に召使いが玄関で白衛兵達を足止めしている間、オルハンは愛人ウズマと共に大急ぎで荷作りをしていた。
「この服は持って行きたいわ!これも…あ!これも!」
「バカ!服なんて数着あればいい!宝石とか貴金属とか、かさばらなくて価値のある物を持って行くんだ!」

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