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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 236

自分の話を解ってくれるアブラハムにナーセルは気を良くした話を続ける。
「しかも、エルティアやバン・バッカーズは英雄や勇者の名声を利用して沢山美女を物にして侍らしてるそうだぜ!」
「羨ましい!羨ましいよ!こっちは女の子となんて付き合った事ないんだよ」
「だろう。ムカつくよな。ムカつくと言えばセイルだな。あいつもアルトリアさんって美人の女従者がいたな」
怒りの矛先がエルティアやバンからナーセルはセイルに向けられアブラハムもアルトリアの名を聞き懐かしくなる
「アルトリアさんか〜懐かしいよね〜」
「俺はムカつくよ。あんな美女をセイルみたいなヘタレが物に出来るなんて間違いだよ!そして、今ではジェムの腰巾着腹腹が立つぜ!」

「はぁ〜…もうやめようよ、ナーセル…いくら人の悪口を言っても僕らの現状が変わる訳じゃなし…」
「フンッ!お前はいつも話題がセイルの悪口に及ぶと嫌がって話をそらすよな!そんなにアイツが好きか!?」
「セイルが好きか嫌いかの問題じゃない。こういうグチって言うだけ虚しくなるだけじゃないか…」
「ケッ!グチでもこぼさなきゃやってられるかよ!あんな理不尽な理由で騎士の職を奪われたんだぞ!?」
「それを言ったら僕らを助けるために一緒に騎士を辞める事を選んだ小隊長や先輩達はどうなるんだよ?」
「うっ…お前…それ言うなよぉ…」
その話題に触れた途端にナーセルはそれまでの怒りに満ちた態度を一変させて弱々しくなった。
自分達のせいで上官や先輩達の人生を変えてしまった事は、彼にとっては耐えられない罪悪感だった。
アブラハムはつぶやく。
「みんな、どうしてるかなぁ…新しい働き口を見付けられてれば良いんだけど…」
「な…何とかなってるに決まってるだろ!?そうでなきゃ…そうでなきゃあ…」
俺は罪悪感で押し潰されちまうよ…とナーセルは思ったが口に出せなかった。
彼は口先だけは強がっているが心は弱いのだ。

そこへ、一人の男が近寄って来て話し掛けて来た。
「あの、ちょっとお話を小耳に挟んだんですがね、詳しい事情は解りませんが、随分と理不尽な目にお遭いになったようですね」
「え…ええ、まあ…」
「あなた誰です?」
突然近付いて来た男に二人は警戒する。
男は言った。
「失礼、実は私も元騎士なのです。ヤヴズ・ジェムの行った政策の影響で職を失いました。ねえ、今の世の中はおかしいですよね。そうは思いませんか?」
「あ!あなたも元騎士でしたか…」
「仰る通りです!ほんと今の世の中はおかしいですよ!」
男が自分達と似たような境遇と知り、二人はたちまち気を許した。
男は言う。
「まったく…王家が正しく国を治めていた頃はこんな事は無かった…あのヤヴズ・ジェムが国の実権を握ってから全ておかしくなってしまったんです。ねえ、そうは思いませんか?」
「う〜ん…確かにそうかも…」
「そうです!その通りですよ!」
ナーセルは興奮して答えた。
男は続ける。
「それじゃあ、もし…もしもですよ?どこかで誰かがヤヴズ・ジェム打倒の兵を挙げたとしたら…どうなると思いますかね?この新都でも、みんな続いて立ち上がると思いますかね?」
「う〜ん…それはどうかなぁ?人によるんじゃあ…」
首を傾げるアブラハムに対してナーセルは胸を張って断言した。
「そりゃあ立ち上がるでしょう!何せジェムに不満を持つ人間はこの新都にも大勢いますからね!もし反ジェム派の軍勢が攻め寄せたら内側から城門を破壊して軍を招き入れるでしょう!」
「それが聞きたかったんだ…」
そう言うと男は去って行った。
「何だいあれ?」
「さあ?」


それから一週間後、その男は新都から離れたジェディーン家の領地にいた。
「その話は本当なのね?」
「はい王妃殿下!今や諸州はもちろんヤヴズ・ジェムのお膝元の新都でさえ…もう国中でヤヴズ一族への不満が高まっております!今こそ立ち上がる時です!」
「むむむ…!!!」
「お姉様!!やりましょう!!機は熟したのですわ!!」
その場に居た妹のドゥンヤザードも王妃を促す。
王妃は決意した。
いや、彼女の腹は元から決まっていたのだ。
「…分かりました!!今こそ我が息子アルシャッドを旗頭に、肝賊ヤヴズ・ジェム討伐の兵を挙げましょう!!イルシャ百余州の全ての太守、王家直轄地の総督、東西南北の鎮台府の司令官に挙兵を呼び掛ける書を送り付けるのです!!」
「「ははあっ!!!」」


…かくして、打倒ジェムの挙兵を呼び掛ける檄文がイルシャ王国中を飛び交った。

その一つはナハルシャット州太守イシュマエル・ドルフの元へ…
「こ、これは……アフサン!!戦支度をしろおぉーっ!!!」
「若!何事でございますか!?」

また、ハクル州太守イシュマエル・アクバル(イシュマエル本家)の元にも…
「フ…フフフ…フハハハハハハァッ!!!!ついに…ついにヤヴズの餓鬼を討つ時が来たぁ!!」

一方では王家直轄市・港町アル=イスカンダリア総督マリクシャー・ハッサースの元へ…
「ハ…ハハ…ハーシィ!!!凄い手紙が来たあぁ!!!…ふぐぅっ!!?」
 バッタァーンッ!!!!

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