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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 235

その影響をモロに喰らったのは庶民達…特に王家直轄地の農民達や新都の市民達、そして新都造営のため各地から集まって来た労働者達であった…。

「はぁ…また芋と薄いスープかよ…」
「過酷な肉体労働なのに、毎日こんなんばっかじゃ体が動かないよな…まあ無いよりマシだけどな…」
ある工事現場、支給された質素すぎる昼食にウンザリした様子で溜め息を吐く二人の少年がいた。
アブラハムとナーセルである。
衛士府をクビになった後、彼らは仕事を求めて新都で建設作業員として働いていた。
本来であれば士族のやる事ではない。
だが選り好みは出来ない…つまらないプライドにこだわっていられるほど余裕が無いのだ。
食料品が馬鹿みたいに値上がりし、それだけで生活を圧迫している。
ちなみに今彼らが造っているのは離宮らしいが、末端作業員には詳しい事は良く解らない。

二人は一緒に新都に来た訳ではなく、幾つかの現場を渡り歩いている内に偶然再会し、以後同じ現場を回っていた。
「けっ食べた気がしねえ!何で俺達は惨めなんだよ!面白くねえ!面白くねえ!」
何時ものようにナーセルは名ばかりの食事を終えると文句を叫びまくる。
そして、文句をたれるナーセルをアブラハムが止めに入る。
「おい、ナーセル止めなよ。こんな事が現場監督に知れたら今夜の夕飯が食えなくなるよ」
「ああん!何が夕飯だ。あんな犬の餌なんて!もうごめんだね!」
「ナーセル、落ち着け。喚いても空腹は解決しないよ。ただでさえお前は監督に目を付けられてるんだぞ!」
ヒステリーに叫ぶナーセルをアブラハムは宥める。
もし、この現場を監督辺りにみられでもしたら自分も巻き添えをくらうからである。


アブラハムに止められナーセルはヒステリーに叫ぶのを止める。
「たくっ!しょうがねえな」
「ありがとう。今は我慢するしかないんだよ」
ナーセルが大人しくなりアブラハムはホッとするが、ナーセルの方は納得してなかった。
「何が我慢だ!そんなのは馬鹿をみるだけなんだよ。先輩から聞いたんだけどよ。今、西大陸で活躍している旋風のエルティアなんて元剣奴風情でもグラダナ事変を起こしたり、ゼノン帝国に逆らってる反逆者なのに世間では英雄扱いなんだぞ!」
「エ・・・エルティア、剣奴止めてから、そんなだいそれた事をしてたの知らなかったよ・・・」

エルティアの活躍に驚くアブラハムに呆れるナーセルはエルティアの話を続ける。
「ヘッ何が!だいそれた事だ。英雄なんて勝てば良いんだよ。俺も西大陸に生まれたら良かったよ。そしたら、エルティアみたいな英雄になって王族や貴族たちをギタギタにして、美味い物を食いまくり美女たちと犯りたい放題出来たのによ〜それにパラム島の聖剣ダモクレスの勇者バン・バッカーズも良いよな〜聖剣ダモクレスを抜いて勇者様になり、王女を嫁にして王族扱い。あんな元奴隷と辺境国の平民が英雄や勇者さまなんて、世の中不公平だぜ!」
「うっうん、そうだね。ナーセル」
エルティアとバンの活躍を羨む妬むナーセルにアブラハムは思わず同意してしまう。
もしも、上役に聞かれたら非常に不味いがデデンのせいで自分もナーセルも仕事を奪われ親に半ば勘当された今の境遇を考えるとナーセルの欝屈した気持ちがアブラハムは解るのであった。

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