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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 233

「ぐぎゃああああ〜〜〜〜」
「五月蝿い!この負け犬めが!」
断末魔をあげるジェム暗殺を目論んだ騎士を黒い剣士は五月蝿いと罵倒すると彼の首を瞬時にバサリと切り落とす。
「・・・・・・・・・・・」
「セイル様、しっかり!」
人の首が瞬時に切り落とされた光景と反逆者といえど人を害虫みたく平然と殺す黒い剣士の恐ろしさにセイルは気持ち悪くなりアルトリアに支えられる。

黒い剣士はジェム暗殺を目論んだ騎士の生首を袋にいれ彼の愚かさを嘲笑うとアルトリアに支えられているセイルに気付く。
「ふん!ヤヴズ・ジェムに逆らっても無駄なだけなのによ。おい!これ位で吐くなよ。クルアーン・セイル」
「…どうしても…僕の名前を?」
「さっき言っただろう。お前がジェムの側近なのは有名だからな」
「そ…そうでしたね…すいません」
謝るセイルの背中をさすりながらアルトリアは無理するな諭す。
「セイルさま、無茶はだめですよ」
「しかし、お前みたいなへたれ男をジェムが気に入るなんて訳が解らないな」
死んだ人間をみて気分が悪くなりアルトリアに支えられているセイルの情けない姿をみて、黒い剣士はジェムがなんでセイルみたいなへたれを寵愛するのか理解できなかった。
「…何で僕がジェムに気に入られたか…だって?…そんなの…僕自身が一番知りたいよ!」
「ふ〜ん…」
黒い剣士はセイルの顔をジッとと見ていたが、やがて踵を返して去って行った。
「待て!」
セイルはその背に声を掛ける。
「何だ?何か用か…」
「あなたはジェムに心酔してる風でも、取り入ろうって腹でも無さそうだ…なら何でジェムのために剣を振るうんです!?」
「何でかって?…人を斬るのが好きだからさ…それと金…それだけだ」
「そんな理由で罪の無い人を殺すんですか!」
「お前にとっては“そんな理由”でも、こっちにとっちゃあ充分な動機さ。だいたいお前、善人ぶっているがヤヴズ兄弟のクーデターの時には大勢の敵を斬ったそうじゃないか。その割には血を見てフラつくなんておかしなヤツだが…」
「そ…それは…」
セイルは人を斬った時の記憶が曖昧なのだ。
黒い剣士は言った。
「…とにかくお前だって偉そうな口をきく資格は無いって事だ。じゃあな…」
それだけ言うと黒い剣士は闇の中に姿を消したのだった。


ある日、アリーがセイルの父オルハンの元を訪ねた。
「これはこれはハイヤーム博士!いかがなさいましたかな?」
「クルアーン殿!食料の売却を今すぐに止めていただきたい!」
「な…何を申されますか!?食料を売って新都造営の資金とする…これはジェム閣下のご意志です!新しい都を完成させるため、まだまだ資金が必要!あなたは一体何を以てそれを止めろと言うのですか!?」
「凶作の恐れがあります!」
「凶作!!?」
そういえば以前そんな話を聞いたような気がする…とオルハンは思った。
「もう夏だというのに気温が全く上がらない…これは冷夏の前兆です!おまけに今年は例年に比べて日照時間も少ない!私が毎日の気象観測と過去の膨大な記録を元に導き出した結論です!なぜ今食料品の値が上がっているかお解りですか!?気候の変化を敏感に察知した商人達が今から食料品を買い集めているからなのですよ!」
「に…西大陸で大きな戦争が起きるからではなかったのか…!」
「とにかく今年は確実に冷夏!そして農作物は大打撃を受けます!備蓄の食料を売るなどもってのほか!むしろ今まで売った分を買い戻すべきです!でなければ大飢饉になりますよ!」
飢饉になる前に備蓄の食料を売るのを止めて更に今まで売った備蓄食料を買い戻すべきとアリーは進言にオルハンも納得する。
「ハイヤーム博士、あなたの調査ならば信憑性がありますな・・・」
「では!食料の売却を止めてくれるのをジェム閣下に進言してくれるのですか!」
「無理です。そんな事を閣下に言えば、私は殺されます。それでなくても最近の閣下荒れているんですよ!」
「しかし、クルアーン殿!このまま指をくわえてみてるのですか!飢饉になれば、多くの民は死に国が混乱して、あなたもただでは済みませんよ」
アリーも尊大さと残虐さを増しているジェムは知っていたが、それでもまもなく起きようとする災害を最小限に止めようと必死であった。

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