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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 24

アルトリアの不安を嘲笑うかのように時間は飛ぶように過ぎて行き、遂に騎士に任命される為の最後の試練である卒業演習の日を迎えた。

『皆様、お待たせいたしました!これよりイルシャマディーナ王立騎士学院、第486期生卒業試験を開催いたします!』
「「「「ワアアァァァァー――――ッ!!!!」」」」
魔術で拡声された司会進行役の生徒の宣言に歓声が沸き起こる。騎士学校の校庭に設けられた観戦席を埋め尽くす黒山の人集りは騎士学校の生徒達だけではなく、大半がイルシャマディーナの市民達だ。立ち見も多い。正門前の通りには食べ物や飲み物を売る者から、果ては試合を賭けの対象にした配当券を売る者まで様々な売店が立ち並んでいる。

だが当の卒業試験の受験者達はここには居ない。校庭を埋め尽くす大勢の観客達の目の前にあるのは幻影魔術によって空中に映し出された巨大な映像だ。そこに映っているのはイルシャマディーナ郊外の山野の光景であった。その場所こそが卒業試験の模擬戦の舞台なのだ。

「…なんともはや、学校の方はまるでお祭り騒ぎですね…というか卒業試験なのに“開催”とか言っちゃってるし…」
同じように幻影魔術で逆に学校の様子を見ていたアルトリアは呆れ顔でつぶやく。
「仕方ないよ。この卒業試験はちょっとしたお祭りだからね」
「ですが、次代を担う騎士を選出する試験を祭りにするなんて心外です」
セイルも卒業試験のお祭り騒ぎ振りはやや否定的であったが、問題が見当たらないので受け入れていた。
しかし、乱世の時代を生き抜いてきたアルトリアはこの卒業試験のお祭り騒ぎをイルシャ王国の腐敗と堕落の象徴と厳しい視線で見つめていた。

「………(アッアルトリア…)」
浮かれているイルシャの国民を厳しい視線で見つめるアルトリアにセイルは『人々が平和に暮らせれば良いじゃないかと』言おうとしたかったが、自分の未熟さを自覚してるため何も言えなかった。
「その上、セイル様がクラスの代表ではないなんて、可笑しいです」
「僕はクラスの代表の器じゃないよ。そっそれに、サーラさんなら立派に皆を纏められる筈だよ」
その上、アルトリアはセイルがクラスの代表でなくサーラが代表である事に憤慨していた。
憧れのサーラを悪く言われセイルは少しむっとするが、今日のアルトリアは不機嫌だったのでこれ以上怒らせたら収拾が取れないのでセイルは宥めようとする。

「セイル様は本当に彼女が好きなんですね?」
「アッアルトリア、やっ藪から棒に何を言うの!サーラさんは主家の姫様だよ。僕なんて相手もしないよ!」
アルトリアにサーラの事が好きなのかと言われ、セイルは首をブンブン振って恐れ多いと叫ぶ。
セイルの父は国王に仕える側近で貴族に列されている為、サーラとの結婚は不可能でない。
しかし、サーラを神聖視するセイルは彼女を妻にするなんて恐れ多い事であった。

「お〜い!セイル〜!」
「姫様がそろそろ作戦会議始めようって言ってるぞ〜!」
二人がそんな話をしていると、そこへパサンとアリーがセイルを呼びにやって来た。
「…あ、うん!今行くよ!」
手を振って答えるセイルにアルトリアは言う。
「それではセイル様、私は姿を消していますので…」
「わかった。じゃあまた後でね」
「はい!ではご武運を…!」
そう言うとアルトリアは近くの林の中へと入って行った。姿を消す所をパサンやアリーに見られたらマズいからだ。
聖剣の精霊である彼女は自由に姿を消したり現したり出来るのだが、消える事はまず稀で基本的に出現しっぱなしである。ただし出現できる範囲には条件があって、彼女の本体である聖剣からあまり離れる事が出来ない。一体どこまで離れられるのかは試した事が無いので判らないが、学生寮に聖剣を置いたまま騎士学校の敷地内を自由に動き回っているので、少なくとも聖剣を中心とした半径1km範囲内なら存在可能なようだ。

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