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剣の主
官能リレー小説 - ファンタジー系

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剣の主 230

興奮のあまり言葉遣いが学生時代に戻っているドルフ…彼もこの理不尽さには頭に来ていたのだ。
「デデンから殿下の信用を奪う案とは何です閣下?」
衛士達が耳を寄せるとドルフは囁いた。
「まずバカ殿の食事に毒を盛るのよ、そしてデデンの仕業だと偽の証言を皆でしてデデンを陥れる作戦だ!」
「「「……」」」
作戦を聞いた衛士達は黙っていたが、やがて小隊長が言った。
「頭を冷やされるのはあなた様もです太守、今の状況でそんな事をすれば疑われるのは我々です。ただでさえ殿下はデデンに絶対の信頼を寄せていますからね。あなたの気持ちは解りますがその作戦は状況が益々不利になるばかりですよ」
「じゃあどうすりゃ良いんだよ!?このままじゃあの二人マジで殺されちまうぞ!?」
ここでアブ・シルが言った。
「とりあえず地下牢へ案内してください。アブラハムとナーセルと話がしたいです」
「解った。付いて来な」
ドルフに案内され、一行は地下牢へと向かった。

‐地下牢‐
そこに二人はいた。
「アブラハム君!ナーセル君!」
「おい!大丈夫か二人とも?」
「あ!皆さん」
「すいません、こんな事になっちゃって…」
「気にするな。君達のせいじゃない」
「事情はイシュマエル閣下から聞いたよ。運が悪かったな」
「小隊長…僕達やっぱり殺されちゃうんでしょうか…?」
「諦めるな!そんな事は絶対にさせない!何とかしてみせるさ!」
意気込む小隊長にアブ・シルは深刻な顔で言う。
「…とは言うものの、実際問題どうするかだな…」
そこへ…
「ヒッヒッヒッ…諸君、揃っているな。これは話が早い」
「デ…デデン…様…!!?」
現れたのは元凶のデデンだった。
一行は彼を睨み付ける。
「…ああん?何だその目は?何か言いたい事でもあるのか?」
「…いいえ…」
「別に…」
「フンッ…まあ良い。喜べ貴様ら。寛大なるアル=アッディーン殿下は“ある条件”と引き換えに、その二人の命を助けても良いと仰せになった」
「「「…っ!!?」」」
皆は耳を疑った。
「そ…その条件とは…!?」
小隊長が尋ねる。
だが次にデデンの口から出た言葉は残酷な物だった。
「その条件とは……今回殿下に同行した衛士全員の免職だ!!」
「「「…っ!!!?」」」
皆は言葉を失った。
アブラハムとナーセルを助けるのと引き換えに全員が解雇とは…。
「う…うぅぅ〜〜…」
小隊長はうなりながらその場で頭を抱え込んでしまった。
もちろん他の者達もだ。
「「……っ!!!!」」
だが最も動揺していたのはアブラハムとナーセルかも知れない。
当然だ。
自分達のせいで上官や先輩達まで巻き込んでしまったのだから。
「み…皆さん!!僕達の事は構わないでください!!」
「そうです!!これは俺達の問題です!!小隊長や先輩方を巻き込む訳にはいきません!!」
必死に訴える二人。
小隊長はデデンに言った。
「す…少し考える時間をください…すぐには答えを出せません…」
「全く優柔不断な奴だな。直ぐに思い付くだろう〜」
小隊長の懇願をデデンは小馬鹿にしながら聞く明らかにアブラハムとナーセルを見捨てれば済むと言ってるに等しかった。
デデンの傲慢な態度にアブ・シルは怒りを抑えて無言でいた。
「くっ・・・・・・・・・・・」
本当はデデンを思いっきり殴りたかったが、奴を殴っても事態は悪化しかしないので我慢した。

「小隊長・・・・・すいません」
「アブ・シル先輩・・・」自分たちを助けようと嫌なデデンに頭を下げる小隊長とアブ・シルの姿にアブラハムとナーセルは自分たちの不甲斐なさを悔やむ。

惨めな衛士たちの姿に大満足のデデンは明日の朝まで猶予を与える事を決める。
「惨めだな〜惨めだな〜しかし、俺様は優しい男だから。返事は明日まで待ってやろう」
「デデン様、ありがとうございます」
「ふん!貴様ら士族に感謝されても何の得にもならん。これはお情けだよ。カッカッカッカッカ!」
礼を言う小隊長をデデンは小馬鹿にして高笑いしながら地下牢を出る。

バタン!
「「「・・・・・・・」」」
残された小隊長たち衛士たちは打つ手がなく黙るしかなかった。

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